高市早苗総裁、党役員人事は麻生色が濃い目の「現実路線」?

自民党の高市早苗総裁は5日、党執行部の人事に着手した。副総裁に麻生太郎最高顧問、幹事長に麻生派の鈴木俊一総務会長をそれぞれ起用する方向で調整に入り、7日にも人事を決める方針だ。総裁選で勝利したばかりの高市氏だが、その背後には麻生派の支援があり、今回の人事が「麻生院政」への転換を印象づけている。高市氏が掲げた積極財政や保守路線がどこまで維持されるかが早くも焦点となっている。

  • 高市氏は総裁選で麻生太郎氏の支援を受けて勝利した。決選投票直前に麻生派が高市支持を打ち出し、これが小泉進次郎氏を破る決定打となった。
  • 新体制では、麻生氏の義弟で財務規律派の鈴木俊一氏を幹事長に起用する方針を固めた。鈴木氏は前財務相として財政健全化を重視しており、減税や大規模な財政出動には否定的である。
  • 麻生氏自身も副総裁として政権中枢に復帰する見通しで、党執行部は実質的に麻生派主導の体制になるとみられる。茂木敏充前幹事長の外相起用案も浮上し、旧主流派の再登場が進む。
  • この布陣により、高市氏が掲げた「積極財政」や「減税政策」は後退するとの見方が強い。市場では「変われない自民党」を象徴する人事と受け止められ、為替市場では円高に振れるとの予想も出ている。
  • 保守層の支持を集めた靖国参拝や外国人政策でも、公明党への配慮を優先する現実路線が見え始めている。高市氏の掲げた「保守回帰」は早くも影を潜め、政権は穏健化の方向に傾いている。
  • 少数与党の状況を踏まえ、高市氏は国民民主党との連立を模索している。積極財政や憲法改正などで政策の一致点があり、選挙区調整もしやすいことから、現実的な連携相手として注目されている。
  • ただし、国民民主側には「自民との連立は党の独自性を失う」との慎重論もあり、協議は容易ではない。野党との連携が進まなければ、臨時国会での補正予算審議も難航する可能性がある。

今回の人事は、高市政権の主導権を麻生派が握る構図を鮮明にした。積極財政や保守路線の看板はすでに色あせ、「麻生院政」の下での現実的調整政治が始まろうとしている。自民党が本当に刷新できるのか、それとも旧体制に逆戻りするのか――その答えは、すでにこの人事が物語っている。

高市早苗新総裁と麻生太郎氏 自民党HPより