ノーベル生理学・医学賞を坂口志文さんが授賞した。滋賀県長浜市出身で、滋賀県立長浜北高校、京都大学医学部を卒業している。
西日本の公立高校と国立大学卒以外からはほとんどノーベル賞受賞者が出ていないという私の主張が、またも裏付けられた。
29人のすべてが国立大学出身であり、灘高校・同志社高校・大阪教育大附属の各1人を除けば、全員が公立高校出身である。箱根の山より東の公立高校は、日比谷、苫小牧東、川越、横須賀だけだ。
偏差値重視の伝統教育からは世界に通用する独創的な人材は出ないなどという虚言に惑わされてはいけない。世界のベンチャー経営者も、たいていはきちんとした基礎学力の持ち主である。
高市早苗氏と坂口 志文氏 Wikipediaより
日本人のノーベル賞受賞者は、昨年ノーベル賞をとった「被団協」を除くと29人(米国籍取得者を含む)であるが、そのうち26人が公立高校出身で、7人が旧制一中の卒業生である。
旧京都一中だった京都府立洛北高校は、日本人ノーベル賞受賞者第一号の湯川秀樹(京都大学)、第二号の朝永振一郎(京都大学)を輩出した。そのほか、東京都立日比谷高校が利根川進(京都大学)、福井県立藤島高校が南部陽一郎(東京大学)、大阪府立北野高校が吉野彰(京都大学)、山口県立山口高校が佐藤栄作(東京大学)、愛媛県立松山東高校が大江健三郎(東京大学)である。
旧一中以外では東日本の例は少ないが、鈴木章が北海道道立苫小牧東高校(北海道大学)、梶田隆章が埼玉県立川越高校(埼玉大学)出身である。
小柴昌俊は神奈川県立横須賀高校(東京大学)出身で、この高校はノーベル賞受賞者・五輪金メダリスト(猪熊功)・内閣総理大臣(小泉純一郎)を輩出しており、日比谷高校と並ぶ存在である。根岸英一は神奈川県立湘南高校(東京大学)出身だ。
愛知では小林誠が愛知県立明和高校(名古屋大学)、益川敏英が名古屋市立向陽高校(名古屋大学)出身である。この地域は総合選抜制のため、優秀な少年が分散した結果だといえる。白川英樹は岐阜県立高山高校(東京科学大学)出身だが、これは旧女学校である。
坂口志文の出身校である長浜北高校も、もともとは女学校で戦後に現在の形になった。この地域の旧制中学としては虎姫高校が老舗だが、地理的に長浜市から離れているため、坂口氏の世代では虎姫高校と長浜北高校が競っていた。
田中耕一は富山県立富山中部高校(東北大学)、大村智は山梨県立韮崎高校(山梨大学)、天野浩は静岡県立浜松西高校出身である。
大阪では川端康成が大阪府立茨木高校、福井謙一が大阪府立今宮高校(京都大学)出身である。本庶佑は山口県立宇部高校(京都大学)、中村修二は愛媛県立大洲高校(徳島大学)、眞鍋淑郎は愛媛県立三島高校(東京大学)、大隅良典は福岡県立福岡高校(東京大学)、下村脩は長崎県立諫早高校(長崎大学)、赤﨑勇は鹿児島県立甲南高校(京都大学)出身である。
これに対して、公立高校以外では国立の大阪教育大学附属高校から山中伸弥(神戸大学)、私立では同志社高校の江崎玲於奈(東京大学)と灘高校の野依良治(京都大学)だけであり、受験に役立つことばかりに特化した教育の弊害だと思う。
総じて見ると、私立が少なく、公立高校が圧倒的多数であり、地域的には西日本が優位である。大学は東京大学と京都大学を中心に、すべて国立大学だ。
しばしば日本の教育システムは序列主義で画一的といわれるが、ノーベル賞受賞者が公立高校と国立大学ばかりであることは、この批判が必ずしも当たっていない、あるいは私立学校よりはまだましだということを示している。
ついでに、高市早苗は奈良県立畝傍高校、神戸大学出身である。奈良県立の三中で、私の親戚が校長をしていたこともある。皇紀2600年を記念して建てられた立派な校舎が自慢である。