三菱UFJ銀行の元行員・山崎由香理被告(47)が、勤務先の貸金庫から顧客の金塊や現金など計約4億円を盗んだ事件で、東京地裁は懲役9年(求刑12年)の判決を言い渡した。被告はFX取引と競馬による損失の穴埋めを動機としていたが、裁判所は「まれに見る悪質な犯行」と厳しく断罪した。
- 事件の概要
山崎由香理被告(逮捕当時は今村)は、2023年3月〜2024年10月にかけて三菱UFJ銀行練馬・玉川支店で貸金庫の「予備鍵」を悪用し、顧客6人から金塊約3億3千万円、現金約6千万円などを盗んだ。 - 動機と経緯
被告は夫の影響でFXを始め、損失を埋めるために犯行を重ねた。2013年には個人再生手続きも経験したが、2018年以降に再びギャンブル依存状態となり、約11億円の損失を抱えていた。 - 犯行の手口と隠蔽
封印された予備鍵を自宅に持ち帰り、別の鍵で封印を偽装。営業時間外に貸金庫室へ侵入し、開閉履歴を消去。金品の移し替えや「貸金庫故障」などの虚偽説明で発覚を逃れていた。 - 裁判の判断
裁判所は「被害者に落ち度はなく、安全を信じた貸金庫の信頼を裏切った」として厳しく非難。「限られた者しか実行できない手口で、短絡的に犯行を繰り返した」として実刑判決を言い渡した。 - 被告の反省と影響
山崎被告は「三菱UFJ銀行を悪く思わないで」と涙ながらに謝罪。被害総額は約14億円、同行は約11億円を補償したが、本人からの返済は約860万円にとどまった。事件を受けて金融庁は貸金庫に現金を保管できないよう監督指針を改定した。
25年以上勤めた銀行での信頼を裏切り、顧客財産を奪ったこの事件は、個人のギャンブル依存と金融機関の性善説管理の脆弱さを浮き彫りにした。山崎被告の「絶対に返す」という自己正当化は破綻し、金融業界全体に貸金庫管理の見直しを迫る結果となった。
winhorse/iStock(イメージ 事件のあった店舗とは関係ありません)