
高市さんは安倍継承路線ではない。安倍さんの支持者のうち右寄りの人だけが支持してきただけだ。安倍家の人々も支持していないし、「四奉行」でも萩生田さんだけだ。
また、公明党との連立を大事にしないとか、中国などにもきめ細かな配慮をするとかいう多角外交にも興味を示してこなかった。安倍さんの右の側面だけをつまみ食いして「安倍継承」などと偽装表示しているところから間違っていた。
私は高市さんの首相就任を阻止したいのではない。いまからでも、公明に対して、斉藤さんでなく、その支持者の琴線に触れるような言葉と行動をして逆転打を打つことが、とりあえずは一番無理がない。
決裂の時点よりハードルが高いのは当然だ。自身の行動と支持者の狼藉についてお詫びをすること、萩生田さんの人事を止めること、麻生さんが「がん発言」について釈明することなども必要だと思う。
それが嫌なら、見通しが立たないまま首班指名選挙に臨むバンザイ攻撃をするか、かなりの期間、石破政権を続けるしかない。
以下、『検証 令和の創価学会』(小学館)から、安倍さん自身の公明党や創価学会への評価についての部分を抜き書きしておく。
自民党の安倍元首相を強く支持してきた岩盤保守層といわれる人たちの一部が「派閥解消より自公連立解消」とかいうことを言っている。「『中国共産党は、影響下にある公明党を通じて自民党の議員に“高市には投票するな。もしするなら創価学会の票は回さない”と露骨に圧力をかけています』といっている記者がいる」と保守系雑誌に書いたノンフィクション作家もいる。
日本保守党を創立した作家は、「私は何年も前から“公明党は政権のがんだ”とネット番組で言っていました。創価学会が昭和30年代に無茶苦茶なやり方で信者を大量に作った『折伏大行進』も何度も批判している。マジで公明党は消えてほしいと思っている党の一つだ」と言っている。
「公明党と組んでいるので自民党に投票しない人もいる」、「小選挙区の候補者が“比例は公明”と言わされるのはつらい」、「国土交通大臣のポストを独占しているのはけしからん」、「憲法改正ができないのは公明党のせいだ」とかいう人もいる。
逆に、創価学会や公明党支持の人のなかには、「安倍首相は本当は公明党や創価学会のことは嫌いだった」とか、「維新などほかの連立相手に乗り換えたがっていた」とか、「旧統一教会と深い関係だった」と疑っている人もいる。
そういう主張は荒唐無稽なのだが、ここでまず確認したいのは、安倍元首相自身が創価学会や公明党の力を正しく評価し、感謝していたことだ。安倍氏は「風雪に耐えた連立」と言っていた。これは、安保法制での立場の違いを乗り越え、2009年から2012年の民主党政権時代も協力関係がびくともしなかったことを指す。
それは、安倍さんの死後に出版された『安倍回顧録』にも出ているし、私自身も公明党について安倍さんと何度か議論したことがある。『安倍回顧録』には安倍さんの発言として、以下のようなものがある。
「民主党政権時代の3年3か月間、公明党が野党・自民党とタッグを組むのは相当のチャレンジだった」
「よく乗り越えたと思います」
「選挙での公明党の力は大きい」
「公明党が自民党の候補に推薦を出すと、どっと支持が増える」
「推薦が出る前と比べると、2割くらい上がる。とてつもない力です」
「創価学会幹部から“うちの支持者はちゃんと投票所に足を運んでいますから”と言われると、もう平身低頭するしかない」
「残念ながら、明らかに自民党支持者より組織力が強い」
これを読めば、私は自公連立に否定的な人は「安倍路線の継承者」などと名乗るべきでないと断言すべきだと思う。







