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10月15日とされていた臨時国会召集が20日以降にずれ込むようだ。原因はこの10日、公明党斉藤鉄夫代表が唐突に発表した与党連立離脱。斉藤氏は慣れないネット番組に出まくり、中国大使との面会を問われて狼狽え、離脱理由の誤認を訂正し、次々回の自民党総裁選の結果次第では再連立もなどと示唆したりで、真の理由が高市総裁の選出にあることを世間に晒している。
こうした公明の動きや臨時国会での総理選出、即ち、今後の連立の枠組みなどについて、各党議員や評論家らがそれぞれ好き勝手な見解を披露している。突然こうした予想外の事態に陥った際の言動は、それする者の見識の深浅がもろに出てしまうことが多いので、実に興味深い。
石破政権に不信任すら出せなかった立憲野田代表のなり振り構わぬ言動には、彼の辞書には「意地」の二文字がないのかと、笑うしかないが、党内野党の石破政権誕生まで長い間党内で冷や飯を食ってきた、村上誠一郎総務大臣と元経企庁長官船田元議員の巧まざる珍説には、野田氏を凌ぐ秀逸さがある。
先ずは横綱級の方から。船田氏は12日、公明党の連立離脱の方針を受け自身のFacebookで、石破氏は総理退陣を撤回して当面政権運営に当たるとの案と、高市自民党総裁が辞任して総裁選をやり直すという、二つの独自案に言及した。
さすがは10年前の平和安全法制の参考人質疑で、衆院憲法審査会の与党筆頭幹事だった彼が推薦した某教授が同法案を「違憲」と指摘し、同教授の見解を「あまり調べていなかった」と釈明した船田氏ならではの物言いだ。今回は、斉藤氏の次々回総裁選発言を踏まえての発言だろうが、再び高市氏が選ばれるかも、と思わないところが先ずは尋常でない。
石破総理が居座る総・総分離は、総裁選やり直しを終えるまでだろうが、既に参院選以来3ヶ月も続く政治空白が更に長引くことを国民が容認する思うこともまた尋常でない。きっとトランプ氏も来日しまい。高市を「Prime minister」と呼び、面談を楽しみにしているのに、代わりが死に体の石破氏では。
次は村上発言だが、これも大関級だ。14日の『産経』が「(公明の連立離脱に関して)村上氏は『玉木さんに会ったり、お金の問題があった方を採用するのは、(公明党に対する高市氏の)平手打ちにあたるんじゃないか』と手厳しい見方を示した」と報じている件だ。
ここで、各候補が総裁選で連立について、どう語っていたかを振り返れば、高市氏だけが連立を急ぐとし、総裁就任後の会見でも「できるだけ急いで色んな方のご意見を聞きたいな」と述べていた。当時は10月15日国会召集が予定されていたのだから、少数与党の総裁が総理になるための当然の行動だ。
つまり、高市新総裁が経済政策で一致点の多い国民民主玉木代表と会うことは、過半数を持たぬ自公連立与党にとって全く当たり前の出来事なのである。それを公明党に対する「平手打ちにあたる」と考えるような人物は、目下の我が国では、きっと村上氏ただ一人ではなかろうか。
また村上氏の論に従えば、総裁選勝利を確信し維新吉村氏と協議を重ねていた小泉陣営も、公明党を「平手打ち」にしたことになるではないか。が、『リハック』の高橋氏と違い、村上氏にこうした質問をブッ込まないから、マスメディアが国民に背を向けられるのだ。
この8月まで維新共同代表だった同会顧問の前原誠司氏が、「維新は小泉陣営に偏りすぎた」と苦言を呈するほどに、吉村共同代表は小泉農林水産相を「改革派」と持ち上げて、連立協議に前向きな姿勢を示し、小泉陣営もこれに応じていた。
その前原氏は、松下政経塾の3年先輩にあたる高市氏について、「国家百年の大計に立って物事を考えられる政治家の一人だ」として、「憲法改正や、日米協力を強化するとの前提での日米安保の見直しが大事だ。その意味において非常に相性が合う」と強調した。
政党を渡り歩いて「死に神」とも称される前原氏に褒められるのもゾッとしないが、彼の後を継いで維新の共同代表になった藤田文武氏の思想信条は、間違いなく高市氏と一致している。
彼の外交姿勢は、中韓に強い姿勢で臨む一方、米国との関係は強化するというもの。安全保障でも情勢次第で、核武装の検討も、非核三原則の見直しも、憲法9条改正による自衛隊明記も、「すべき」と述べている。皇統問題でも、女系・女性系天皇に反対し、男系男子の皇位継承維持を語っている。
玉木氏と高市氏については、村上氏が非難した10月5日の会談を報じた『読売』が「主張に共通点・閣僚ポスト提示も検討」と見出しに付した通り、こと経済政策では、5候補中唯一「積極財政」を述べた高市氏と、7月の参院選公約に「積極財政と金融緩和により、賃金デフレからの脱却」を掲げた玉木氏とはほぼ同じだ。
筆者は滅多にTVを見ないので、そこに出ている政治家・評論家・コメンテーターらがどういっているか存じない。つまり、縷説したようなメディア報道などのエッセンスをネットで読みブログを書く。これを「こたつ記事」というらしいが、自分では「OSINT」(Open Source Intelligence)記事だと思っている。
そうした管見の限りだが、かつて消費増税のために政権を投げ出した代表が率いる、時には「立憲共産党」とも称される左派政党トップの名前や、連立離脱会見の前日に中国大使と話し込むような政党の代表名を、玉木国民や藤田維新が書くことなど、議論するまでもなく、ないに決まっている。
高市新総裁は「メディア関係者に支持率を下げてやる」といわせるほど国民の支持率も高い。その民意が高市氏をして総裁選を勝ち抜かせた。果たして、自称「OSINT」記者が予想する高市新総理は誕生するか。老後の楽しみがひとつ増えた。
最後に自維国が連立する場合の閣僚人事を予想するなら、外務・茂木氏、総務・林氏、防衛・小泉氏との新聞辞令が出ているので、玉木氏は前評判通りの財務相、藤田氏は文部科学大臣が適任だと思う。






