いきなり政治の話で申し訳ないのですが、立憲が送る野党共闘のラブコールに国民民主は冷たい素振りを見せています。その理由の一つにエネルギー政策の食い違いがあります。立憲は「原子力発電所の新増設は認めません」と直球ど真ん中。それに対して国民民主は原発再稼働、新増設、新技術を受け入れる姿勢です。

国民民主・玉木代表と立憲民主党・野田代表 両党HPより
日本のエネルギー政策では現状2040年ごろに原発比率を20%、再生可能エネルギーが40-50%となっています。ただ、正直、洋上風力発電がこれほど苦戦するとは経済産業省も予想していなかったはずで、根本的見直しが求められています。また太陽光発電(メガソーラー)も釧路湿原での問題提起があるなど各地で増えすぎて見た目にも美しくない太陽光パネルだらけの日本で再生可能エネルギーなら景観や土地利用、環境を無視してでもよいのかという議論の段階にあります。
個人的には2040年の再生可能エネルギー40-50%というのはかなりハードルが高く、新技術による電力源の確保が望ましいところです。ところが新技術となれば日本はアセスメントやら住民の同意やらで10年という月日はあっという間にかかります。
さて日本の電力事情ですが、人口が減っている一方、社会全体が電気をベースにした電源構成に変わってきていることから電力需要は増える一方であります。例えば家庭の中ひとつとっても昔は灯油のストーブや石油/ガスのファンヒーターを使っていましたが、今ではエアコンが多くなってきていると思います。いろいろな意見はありますが、自動車もEVやPHVは確実に増えてきています。新幹線は16両で走ると消費電力は17000kWですが、現在建設中のリニアモーターカーは大阪まで開業した時には一編成で35000kWで、リニア全体では740,000kWと莫大な電力を食うと見込まれています。
つまり世の中はどんどん電力消費型にシフトしているとも言えます。
そこに加えて昨今のAIブームです。特に高性能の半導体になると従来の汎用型の10倍の電力を消費するのです。この電力需要をどう埋めるのか、立憲の主義主張だと日本が立ち行かなくなるのですが、立憲の支持母体や支持者からこの直球ど真ん中の方針が多少ブレるだけでもやんや言われ、ストライクゾーンを外すものなら投手交代ならぬ党首交代となりかねないのです。
ところで東電の柏崎苅羽原発の再稼働の議論はいよいよ新潟県が判断を下さなくてはいけない時期に入っていますが、10月15日に発表された県民意識調査の中間報告では判断できない県民が半数以上いると報じられています。正直、原子力規制委員会とか東電の対策をどれだけ説明しても基本的には一般庶民に理解しろというのが無理難題な話だと思います。一般の県民に高度なレベルの話を理解し、賛否を示せというプロセス自体が酷であり、県政が責任逃れ的に判断を避け、県民に押し付けているとも言えないでしょうか?
私が考えたのは柏崎苅羽原発は専門家が世界最高水準の安全性を検討したうえで再稼働に問題ないと判断したことは国家として許可を判断したと考え、県民を説得するするのが役所の仕事だと考えています。その上で「そうはいっても…」という人のためにパッケージディールとしたらどうかと思うのです。それはデータセンターを作り、新潟県の産業基盤を強化します、というオファーです。

柏崎刈羽原子力発電所 東京電量HPより
データセンター。現代社会の頭脳であるとも言えるデータの格納庫は極めて高いレベルで建設されています。高度な耐震で最高レベルのセキュリティはもちろん、火災時には水ではなく、ケミカルで消火し、洪水対策もあります。電源は停電時にも無停止でバックアップ電源に接続できるようになっています。
日本には現在200強のデータセンターがあり、その8割が東京圏と大阪圏に集中しています。これをまず分散させることが必要です。一方、保守メンテのためにはアクセスの良さが求めらえるのですが、新潟には新幹線があるため、その点は満たしているのです。
現在、世界ではデータセンター建設ラッシュとなっており、中国が450か所ぐらいで世界のトップを走っています。日本も世界では上位で、特に日本の耐震技術など建設技術への信頼度が極めて高いとされ、日本でのデータセンター増設は日本のハイテク産業の一角を担うとも言えます。
またデータセンターは当然外部とつながっているのですが、その需要が爆増しており、例えば世界最大手の一角、日立は送配電部門だけで1.5万人を追加採用し、この部門だけで27年までに9000億円を投資するとしています。NTTと総務省も第6通信技術のIOWNを使って世界のデータセンターを光電融合技術でタイムラグがなく、省エネのシステムで結ぶ計画を推し進めています。
これら先端技術の開発と投資が目白押しの中で電力供給は喫緊の課題であり、新型の小型原発(SMR)を含めた準備を政治主導で大車輪で推し進める必要があります。一方、どう考えても10年で新技術による発電が実用できるとは思えず、その間のつなぎとしても既存原発の再稼働は安全が確認されたものについて進めるべく機運づくりが必要だと思います。
もう一つのやり方としてデータセンターという構築物は「冷たい箱」ですので建築された地元に「暖かいコミュニティ」を提供できるような建築条件を付保すべきでしょう。建設に伴い一定額の義務工事や開発賦課金条件をデータセンター建設者に付保することで事業者と地元がウィンウィンの関係になるような仕組み作りが必要だと思います。
住民にしてみれば「原発再稼働しても何の役にも立たん!」と思っているから「ハンターイ!」になるわけでそのアプローチはもう少し工夫をすべきだと思います。そういう意味では柏崎苅羽原発の再稼働交渉も直球ど真ん中を狙うも全て外れてボールになり続けているというのが震災以降の原発行政を見続けてきた私の感想であります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年10月16日の記事より転載させていただきました。






