アサヒグループホールディングス(以下、アサヒ)は、9月末に社内システムに対するサイバー攻撃を受け、国内での受注・出荷が全面的に止まる事態に陥った。以降、段階的復旧を図っているものの、なかでもビール(アルコール飲料)の出荷回復が遅れており、業界や消費者に混乱が広がっている。
- 9月29日にシステムが攻撃を受け、国内の受注・出荷・コールセンター・顧客対応などが一斉に停止した。
- 工場稼働自体も停止または制限され、全体の生産・物流体系が混乱した。
- ランサムウェア集団「Qilin」が攻撃責任を主張。内部資料の一部公開も示唆された(約9,300ファイル、約27ギガバイト相当との主張)。
- 真偽や流出範囲については、アサヒ側は現時点で確定を否定または慎重な姿勢。
- 10月2日には国内6か所のビール工場が稼働再開。
- ただし、出荷・受注系のシステムは未復旧のまま、暫定的な手作業・限定品目対応での再開にとどまる。
- アサヒは、7〜9月期決算発表の延期を発表。復旧工程の遅れが会計システムなどにも波及。
- 飲食店や小売でアサヒ製品が品薄の報告が相次ぐ。特に「スーパードライ」など主力ビールの商品棚が空になるケースも。
- 一部卸業者・流通業者では、調整や優先出荷をめぐる競合も発生。
- 在庫補填需要(店頭や業務店での欠品を埋めたい需要)が強く、通常出荷枠では追いつかない状況。
- アサヒは、まず優先品目や主要ブランドを対象に順次出荷を再開する方針を示している。
- 出荷業務を支えるシステム基盤が完全に復旧しておらず、自動処理能力が制限されたまま。
- 外部セキュリティ対策、攻撃痕跡の調査、再発防止策の整備が優先されており、リスクをとって全面再稼働する判断が難しい。
- 決算発表も延期を通知、IR開示の遅れが発生。
- 株価は下落傾向、信用やブランドへのダメージが懸念されている。
- 顧客・取引先との信頼維持や混乱収束に向け、追加情報や進捗開示を求める声。
ビールの出荷が特に戻りにくい要因
- 出荷・受注系システムが未完全復旧で、自動処理が制限されたまま。
- 手作業や限定処理によるボトルネックが発生。
- 品目の絞り込み再開による遅延/優先順序付けの混乱。
- 流通在庫の枯渇と補充ニーズの食い違い。
- 安全性・信頼性確保のため、段階的かつ慎重な復旧プロセスを選択。
- 調整・物流インフラの再構築、配送スケジュールの混れ。
アサヒの国内出荷停止はサイバー攻撃によって引き起こされた重大案件であり、復旧は順調とは言えない。特にビール出荷は、受注・出荷システムの障害、手作業運用への切り替え、在庫補填圧力、安全性重視の段階復旧方針などが重なって、通常水準への回復スピードを抑えている。今後はシステム全面復旧と並行して、流通網再構築と需要調整が鍵となる。

アサヒグループホールディングスHPより






