維新が自民と連立政権の樹立に合意した。玉木国民民主代表も18日に、自民総裁選で高市氏が訴えた経済政策が党の主張と重なるとして、「政策を進めるため、高市氏にも協力していきたい」と述べたことが報じられたので、筆者の老後の楽しみがこの21日、とうとう実現するようだ。
そんな日の朝、起き抜けにTVを点けたら玉川徹氏と石原良純氏が何やら言い合っている。連立入りの条件の一つとして維新が自民高市総裁に申し入れた、議員定数1割削減の件だった。
真剣に見ていないので錯誤があるかも知れぬが、玉川氏は人口100万人当たりの日本の議員数3.7人が英独仏伊と比べて半分以下であることや、人口が数百万人規模でしかない北欧・中欧の国々が上位を占める棒グラフで、日本の議員数は極めて少ないことを強調した。
その上で玉川氏は、そもそも多くない日本の議員数を減らす必要はなく、コストをいうのならむしろ歳費を1割減らせば同じ効果が出るとの趣旨を述べた。遅い夏休みとかでしばらく休養していたそうだが、筆者は、この方の論には相変わらず深慮が欠けているなあと感じた。6年前の拙稿「米国の対中追加関税、玉川徹氏『米国民が払う』は正しいか?」でも同じ趣旨を書いたからだ。
先に申し上げておけば、筆者は「年末までに議員定数の1割削減の法案を出す」などと言う維新案は拙速に過ぎるし、定数をいじるなら、今やその弊害が顕著になっている小選挙区制を見直して中選挙区制に戻すことなども併せて、よくよく検討した上で進めるのが「保守の手法」との考えである。
よって、玉川氏が定数1割減に反対すべく持ち出した、人口100万人当たりの議員数を人口の多寡を抜きにして諸外国と比べるなどは、雑駁過ぎて話にならない。なぜなら、彼の論なら人口100万人の国なら4人の議員で済むことになるが、それこそ非現実的だ。この種のことには絶対数の考慮も必要なのである。
歳費を1割減らせば議員数を減らさずとも同じ、というのも雑だ。政党交付金(助成金)のことが抜けているからだ。赤ちゃんからお年寄りまで国民1人当たり250円/年を負担するとして、95年に始まったこの制度で毎年300億円余りが政党に公布されている。1割減ならこちらも30億円減らせる。
良純氏の言い分が何だったか良く憶えていないが、玉川氏がそれを鼻で笑っていた様子だけは確認できた。それが彼のキャラクターであり、それが見たいと思うこの番組のファンや、あるいは彼を難じたい筆者の様な輩も多いのだろうから、視聴率維持のためにも雑な論を精々吐き続ければ良い。
最後に小選挙区制のことを少々。これもうろ覚えで恐縮だが、小泉進次郎氏は小選挙区制に批判的かも、という件である。というのも以前、友人と選挙のことを議論していて、進次郎氏が「小選挙区制だと地盤・看板・鞄のない人は国会に行けない」との趣旨を述べたと、その友人が言ったのだ。
それに対して筆者が、「小選挙区制だと私みたいな議員ばかりになってしまう、と言ったんじゃなかった?」と、友人を茶化したことだけ記憶に残っている。が、強ち冗談ともいい切れないのが、今の国会の状況、即ち、「三バン」持ち世襲や全国比例上位で必ず当選する組織団体出身者の跳梁である。
そういった観点から、いっそ中選挙区の衆院一院制にして、参院と比例の両方を止めてしまうのはどうだろうか。組織団体も旨味がなくなって「政治とカネ」の問題も萎む。因みに、政党助成金は94年、小選挙区制は96年、自公連立は99年初からだから、日本経済の低迷期(失われた30年)とほぼ重なる。