自民党新総裁に就任した高市さんの「これからはワークライフバランスを捨てて頑張る」発言が話題となっています。
発言の是非はともかく、「ワークライフバランス」という言葉そのものは意外と不思議なもので、人によって違う意味だったりすることが多いですね。
たとえば(今回の高市発言に対して騒いでる人達が典型ですけど)普段から「ワークライフバランスが何より大事だ!」って叫んでる人達って、それだけライフに軸足置いてるならさぞや優雅な暮らしを送っているのだろうなと思うんですけど、実際には全然余裕の無さげな人たちばっかりなんですよ。
逆に「ワークライフバランス?興味ないっす」的な冷めたスタンスの人ほど、逆に優雅で余裕のある暮らしを送っていたりします。
熱心に求める人のもとからは去っていき、そんなの興味ないよと言う人のところにひっそりと寄り添う……いったいワークライフバランス とは何なのか。そして、人はいかにしてそれに到達できるのか。
人事制度の観点からまとめておきましょう。

ワークを突き詰めた先に充実したライフがある
最初に言っておくと、時給いくらで働いている人は、それで稼げる範囲で人生を楽しんで生きてください。これは自営業も同じです。
もっと楽しみたかったらもっと働く、現時点で十分だったらあとは楽しむ。それで十分でしょう。
今回テーマとするのは、そのあたりの調整が自分一人ではなかなかできない人、組織に属して働く人達のワークライフバランス問題です。自分一人ではなかなか調整できないからこそ、切実な問題として存在するわけです。
では本題に入ります。そもそもワークライフバランスとは何か。
結論から言えば、それはワークをある程度本気で突き詰めた結果として実現可能なもので、その中身も人によるというのが筆者の考えです。
年功序列制度(及びそれの根幹であるメンバーシップ制)においては、各人の業務範囲は曖昧で裁量も極めて限定的なのが一般的です。
有給休暇がなかなか取れないとかテキパキ働いても早く帰れない等という日本企業あるあるも、すべて原因はこれです。
当然、それらの結果として、プライベートのライフを充実させる余地もかなり限定的となってしまいます。
「よし、今度から定時で帰って趣味の〇〇をしよう」と思って日中テキパキ働いても、夕方になって手が空いたら「お、手空いてんじゃん、じゃあAくんの仕事手伝ってよ」とかいきなり振られるわけです。
で、そんなことが続けば「はやく仕事終わらせたってどうせ仕事振られるだけだから、自分もチンタラ仕事しよう。その方が残業代も貰えるし」と割り切り、ライフが犠牲となるわけです。
個人的には、このメンバーシップ制特有の裁量の無さこそが、普通の日本人が「なんかワークライフバランスが悪いよなあ」と感じる強い要因になっていると思いますね。
同じくらいの年収でも、JTCとそうでない外資等で働いているビジネスパーソンを見ると、仕事と人生を合わせた人生全体の効率性がまるで違いますから。
ただし、年功序列制度といっても、成果を挙げて偉くなればそれなりの裁量も得られるし、業務範囲もある程度は固まってくるものです。
部下が出来れば自分で割り振ることが可能だし、主導権を握って調整することも出来ます。結果として、ワークライフバランスの充実を図ることも可能でしょう。
そういう観点から見ると、筆者の冒頭の発言も何となく理解できると思います。
「ワークライフバランスが大事!」と主張している人間の多くは、まだワークで成果を積んでおらず、結果としてライフの充実度が低い人たちなんですね。
一方、ワークライフバランスを実現できている(ように見える)人達について。
少なくとも、組織である程度の地位に就いたり、高い専門性を持って会社と対等以上の関係で交渉出来たりしている人間で、“夜討ち朝駆け”みたいなノリで働いている人は筆者は知りませんね。
むしろテキパキ働きつつ、趣味や家族サービスを充実させ、残業なんて大してしてないような人たちばかりですね。
なぜ彼らはそれが実現できたのかというと、それは20~30代のうちにしっかり働き成果を挙げ自身のキャリアデザインも実現したからです。
言い換えるなら、“ワークライフバランス”とは真逆の道を歩き続けた先に、それがあったということですね。
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以降、
・普通の人が日本企業でワークライフバランスを実現する方法
・ジョブ型と年功型ではモノサシががらりと変わる点には要注意
・究極的にはワークとライフは融合する
Q:「裁量労働制(専門型)の人間にシフト勤務を命じることは可能か?」
→A:「一般論ですがアウトでしょう」
Q:「金融資産1億円でFIREするのは時期尚早?」
→A:「これからどういう人生を送りたいか次第でしょう」
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