「今やるべきこと」は20歳年上の後悔を見ればわかる

黒坂岳央です。

生き急ぎ、コスパタイパ主義が大衆思考となった令和の今、多くのビジネスパーソンは、常に「今すぐ役立つ情報」を探している。

YouTubeでも記事や書籍でも、20代なら20代の仕事術、30代ならキャリアアップの方法、といったように、実年齢に合わせたコンテンツを消化するのが一般的だ。だが、実際は一生懸命本を読み、セミナーに参加しても、なかなか行動を変えられず、結局「知っても変われない」という停滞感に悩まされる人が後を絶たない。

筆者からおすすめしたいのは、「実年齢+20歳の人生の先輩たちが後悔していること」を理解することだ。これを正確に理解することで、今すぐやるべきことが明確になる。

筆者は昔から、実年齢+20歳向けのビジネス書や人生論を好んで読んできた。20代の時は40代向けの本を、30代の時は50代向けの人生論などを学んでいた。結果として自己満足だが、後悔はない。持論を展開したい。

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「おすすめ」されても行動できない理由

「今、これがおすすめ」では人は行動できない。なぜだろうか? 理由は2つある。

1つ目は情報が多すぎることだ。情報過多の時代において、誰もが提案する「おすすめ」は、あまりにも多用で時に真逆の意見もあったりする。「若い頃から投資をしろ」と「若い頃は投資などせず、仕事と人生経験を積み上げろ」はまったく相容れない意見だが、それぞれに合理性がある。結局、「その人次第」という頼りない結論しか出せない。

2つ目に言われてもピンと来ないことだ。「10代は青春を謳歌しろ」と言われても、その真意がわかるのは10代をとっくに過ぎ去ってからというのが常なるものだ。「一日でいいから10代に戻れる」というなら人によっては大金をかけてもそうしたいだろうが、当の本人が10代の頃は「つまらないからさっさと20代になって自由を得たい」などと考えがちだ。

こうした理由から、その年代に向けられる「これぞおすすめ」と言われてもいまいちしっくりこないし、情報は人によって言うことが違うので実践が難しいのである。

しかし後悔は大体同じ

その一方で、「人生の後悔」は個人差はおすすめほどないという印象だ。

たとえば筆者が20代前半の頃に熱心に読んでいたのは、40代からの勉強法やキャリアに関する書籍だ。当時の自分は、専門性やスキルアップについて漠然とした不安を抱えていた。

これらの本には、40代になってから初めて、自分の可能性と限界が見えてきたという筆者の意見が多く書かれていた。特に印象的だったのは、多くの40代以降の中高年が「若い頃に真剣に勉強しておけばよかった」と激しく後悔しているという事実だ。一方で、「勉強をやり過ぎて後悔している」という意見は見たことがない。

この予習を通じて、筆者は「今、勉強しないと20年後、確実に後悔する」という強烈な警告として解釈した。その結果、目先の流行よりも、専門性の深化と普遍的な知識の習得に集中的に注力する行動変容が起きた。

これは、不安を単なる焦りではなく、具体的な行動を促す燃料に変えることができた成功例だと言える。

40代は60代の人生の後悔を予習しろ

そして40代になった今の自分は、60代以降の人生論や定年後のライフスタイルに関する本を読み続けている。

この年代の読書から得られる後悔の警告は、さらに具体的で切実だ。たとえば、定年退職後のお金の問題、健康問題、とりわけ「歯を大事にするべきだった」という歯に関する後悔の多さ、「子供との時間を大事にしなかったために疎遠になった」という人間関係の後悔など、普遍的な後悔を知ることができた。

また、いざお金と時間を手に入れても、体力や気力の衰えから海外旅行などの遠出が気持ち的に億劫になってしまうというリアルな声も数多く学んだ。この警告から逆算し、筆者は行動を変えた。

1つ目は健康だ。「歯」の重要性を特に意識し、定期的な検診と徹底的なケアを実践している。また、パーソナルトレーニングで筋トレをして毎日1時間運動をしている。

2つ目に人間関係だ。お客さんや取引先との信頼関係を大事に意識している。そして特に子供との時間を何よりも大事にし、将来の疎遠を避けるためにどんなに忙しくても家族旅行や学校のイベント、毎日朝食と夕食は一緒の時間を過ごすようにしている。

3つ目は経験だ。「旅行は老後に」といった先送り思考を捨て、海外など行きたい場所には可能な限り「今すぐ」行きまくることを実行している。

これは「今を犠牲にする」のではなく、「未来に選択肢を残す」ための行動である。老後の後悔を避け、生きる喜びを先取りしているのだ。

今20代の人は40代の人が何に後悔しているかを予習するといい。30代なら50代を、40代は60代から学ぶのだ。そうすることで将来、「こんなはずではなかった」という取り返しのつかないミスを回避できるのではないだろうか。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。