米ローマ・カトリック教会司教協議会(USCCB)の総会は12日、ボルチモアで開催され、トランプ大統領が実施する移民政策に反対する特別声明を賛成216人、反対5人、棄権3人の圧倒的多数で採択した。

米カトリック教会司教協議会(USCCB)総会 2025年11月13日 バチカンニュースから
同総会に参加した司教たちは「神から与えられた人間の尊厳を守るために声を上げる義務がある」と声明し、米国の移民問題で教会の基本的立場を鮮明にした。
バチカンニュースによると、「司教協議会総会で政治問題についてこれほど明確に教会の立場を発言したのは12年ぶりだ」という。具体的には、オバマ政権下の2013年、職場の健康保険制度における無料避妊薬の義務的給付に関する議論の時以来という。いずれにしても、米教会が特別コミュニケという形式で政治問題で発言することは非常に稀だ。
司教協議会は、移民の社会への貢献を認めるべきだと強調、「国家には移民を規制する権利があるが、私たちは無差別な大量送還を拒否する」と述べている。また、移民収容施設の状況、一部の移民の法的地位の恣意的な剥奪、そして教会、病院、学校の特別な保護の場としての地位への脅威についても懸念を表明し、「私たちは、子供を連れて学校へ通う途中で逮捕されることを恐れる親たちに出会うことを悲しく思う」と述べている。
司教たちはカトリック社会教義の原則を再確認し、政府に対し「すべての人間の根源的尊厳を認める」よう強く求めた。いずれにしても、米カトリック教会がトランプ大統領の最重要政策の一つ、移民問題でトランプ氏の政策を正面から批判したことは注目に値する。
特別声明が採択される前日の11日、司教協議会総会は、オクラホマ州のポール・コークリー大司教を米国カトリック司教協議会の新議長に選出した。コークリー大司教は決選投票で、128票対109票で当選した。70歳のコークリー氏は、2004年から2011年までサリナ司教を務め、その後オクラホマシティ大司教に任命された。コークリー大司教は死刑に反対し、移民支援を繰り返し訴えてきた聖職者だ。
ところで、コークリー大司教は、議長選の投票前に移民問題に関する特別声明を採択するように強く主張していた。その背後には、テキサス州境に位置するエルパソ教区のマーク・サイツ司教が10月に教皇レオ14世と会談した際、教皇から「司教協議会で移民問題に関する声明を期待したい」と言われた、と報告していたことがある。すなわち、米国出身のレオ14世はトランプ大統領の移民政策に対し、明確な批判の立場を米教会の司教協議会の特別声明という形式でアピールすることを願っていたことになる。換言すれば、米司教協議会の特別声明の内容はレオ14世の意向をまとめたもの、といえるわけだ。
移民問題に関する米教会の今回の特別声明は、トランプ大統領への批判が目的ではなく、トランプ政権内でのカトリック教会の発言力の強化を狙ったものと受け取られている。
なお、トランプ政権下の、バンス副大統領やルビオ国務長官といったカトリック系政治家が来年の中間選挙後のポスト・トランプを視野に、カトリック教会の影響力を背景に新たな改革派保守(リフォーモコン)の結集を図っているともいわれる。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年11月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






