AI時代に個人起業家が失敗する本当の理由

深夜、パソコンの前で溜息をつく。フォロワーは800人ほどになった。投稿には毎回30前後の「いいね」がつく。

ChatGPTで文章を推敲し、Canvaで画像を整え、ハッシュタグも戦略的に選んだ。読みやすく、きれいで、プロのような仕上がりだ。週に5回の投稿、ブログの更新、メルマガの配信。やるべきことは全てやっている。数字も少しずつ伸びている。なのに、問い合わせは来ない。売上は、ゼロのままだ。

起業して半年。コンサルタント、講師、コーチ、デザイナー・・・肩書きは違えど、多くの個人起業家が同じ景色を見ています。生成AIという強力な武器を手にし、フォロワーも増やせたはずなのに、なぜか仕事につながらない。

「この努力のどこが間違っているんだろう?」

その答えは、AI時代だからこそ生まれた、新しい落とし穴にあります。

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文章力は差別化になりにくい時代になった

AIの普及により、文章を書くハードルは大幅に下がりました。かつては「わかりやすい文章」が差別化のひとつでしたが、今は誰もが一定レベルの文章を書けます。

しかし、失敗の理由は「文章の均一化」ではありません。本質は、文章がどれだけ整っていても、それが選ばれる理由にはならないということです。

個人がスキルを活かして簡単に起業できるようになり、オンライン上には「専門家」が急増しています。同じような肩書きを持つ人が、毎日大量の投稿をしています。発信量は増え続けているのに、選ばれる数は増えていません。

きれいな文章を書くことと、選ばれることは、まったく別の問題なのです。

AIによって文章のレベルが底上げされた今、表面的な違いがなくなってきました。だからこそ、選ばれる人と埋もれる人の差がより明確になってきたのです。

なぜAIで発信しても選ばれないのか?

AIできれいな文章を発信しているにも関わらず、選ばれない理由は大きく2つあります。

1. あなたの立ち位置が曖昧

「誰に、何を提供するのか」が明確でなければ、文章がいくらきれいでも選ばれません。

肩書きだけでは何も伝わりません。顧客が抱える具体的な悩みに対して、自分がどんな解決を提供できるのか。それが示されていなければ、記憶に残らないのです。

同じような発信をする人が溢れる中で、競合との違いが見えなければ埋もれてしまいます。ニーズを捉え、差別化できるポジションを取れていない。これが最初の理由です。

2. 個人ブランドが弱い

コンサル、講師、士業など、無形サービスは見えない商品です。形がなく、試すこともできず、比較も困難です。

個人起業家の急増により、競合との差別化がますます困難になっています。同じ分野に無数の「専門家」が参入する中で、選ばれるためには明確な個人ブランドが必要です。

「この人でなければならない理由」が伝わっていなければ、どれだけ専門性があっても選ばれません。問題は能力ではなく、その価値が届く形で提示されていないことなのです。

AI時代でも選ばれる人の原則

1. あなたが選ばれる理由をつくる

まず必要なのは、「誰に、何を、どう提供するのか」を明確にすることです。

顧客はどんな悩みを抱えているのか(ニーズ)、同じ分野に誰がいるのか(競合)。この二つを把握し、自分が最も価値を発揮できる対象を絞り込む。これがターゲットの明確化です。

「誰でも歓迎」では、誰にも刺さりません。絞り込むほど、選ばれやすくなります。そのうえで、経験・専門性・価値観から導かれる自分だけの理由を言語化する。これがポジショニングの基軸となり、すべての発信の軸になります。

2. 専門家としてのブランドを構築する

次に、「この分野ならこの人」というブランドを作ることです。

そのための有効な手段の一つがPRです。PRとは、メディアに取り上げられることで信頼性と認知度を高める活動を指します。法人向けビジネス誌や専門ウェブメディアなどで掲載されることで、「専門家」としての信用が高まります。

ただし、PRの本質は単なる露出ではありません。「自分の価値を伝わる形で整理し、届ける技術」です。独自性を企画として提示できれば、専門性が確実に届きます。

選ばれる理由をつくるのは、AIではなく「あなた自身」

生成AIは、文章を書くハードルを劇的に下げました。しかし同時に、「きれいな文章」だけでは選ばれない時代も作り出したのです。

必要なのは、AIで文章を書くスキルではなく、ポジショニングを明確にし、専門家としてのブランドを構築し、自分の価値を戦略的に届ける力です。

発信を続けても仕事にならないなら、一度立ち止まって考えてみてください。「自分は何者として、誰に選ばれたいのか」と。その答えが明確になったとき、努力が成果につながり始めます。

AIが整えるのは文章ですが、選ばれる理由をつくるのはあなた自身です。

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