S&P 500は弱めのレンジ週間となった。週前半は政府再開を好感する形で堅調となったが、木曜11/13は一転して12月利下げの剥落を材料視する形で急落した。本ブログが以前の記事で「株が上がりすぎてパウエルが怒った」と表現した10月FOMCをピークに金融相場期待の剥落が続いていたわけである。
この急落は前の週に一度は指数を支えた50SMAを完全にブチ抜いており、このアクションでチャートが一気に醜悪に見えてきたため、金曜11/14も下窓を開けて寄り付いた。とはいえ完全にチャートの感想としての下値叩き売りの結果としての下窓は、恐らく個人投資家によってイントラデーのコールの買い場にされ、指数はプラス域まで買い戻された。
それでも50SMAの下方に回ってしまった意味は大きく、イントラデーの指数反発は50SMAによって食い止められ、結局やや垂れて引けている。金曜11/14の引け後、よく分からないテック企業への後ろ向きなスタンスで知られるバークシャーハサウェイがGOOGLに投資したことが判明した。アップルと入れ替えとはいえ、またウォーレン・バフェットが引退寸前とはいえ、メガテックのAIバブルを巡るバリュエーション懸念だけは全く完全に悉く消滅した象徴となるだろう。
先週の記事ではS&P 500を6630 -6920レンジと表現したが、先週の実働域は6647 -6870であり、上をやってから下をやってと、ほぼ完璧なレンジ感だったと言えるのではないか?
週間ではマグニフィセント7が出遅れ、史上最高値を更新していたダウがアウトパフォームした。
(zerohedgeの二番煎じではあるが)本ブログも80bpの頃から注目していたオラクルCDSがBloomberg記事になっている。先週100bpを超えたのは象徴的であるが100bpは別に高い絶対値というわけでもなく、更に日経新聞あたりに出る頃になればCDSスプレッドから読み取る「過剰投資・過剰調達懸念」の話題は終息に向かうだろう。
GS CTAは12月に向けて売り越しがベースシナリオである。
DBのポジショニングは裁量勢、システマティック勢共にやや振り落とされている。1日2%はともかく、短い下落トレンドを機械勢が察知したのだろう。
BofAのディーラーガンマは、絶対値低めながらも現水準を包み込むようにしてポジティブガンマの二つの山が成長している。6600近辺の山は6630サポートの死守を助けたと思われる。
右側では6900近辺に二つめの山があり、反発してもそのあたりまでという印象が強い。もし左側の山を越えて6500を割り込むとネガティブガンマに転落するのも変わっていない。金曜11/21はOp Exであり、万が一ネガティブガンマ域で迎えた場合はそのあたりで反転しやすいだろう。
BofAの顧客別フローではDBポジショニングの裁量勢とは逆に11/3の週に機関投資家が買い越している。HFが11月1週目にテクノロジーを中心に売りに回ったのはどうも間違いなく、記事にもなっている。
決算期は通過しつつあるが、他の理由で指数が売られたので個別企業の決算への反応も少しよくなった。水曜19日引け後に大トリのNVDAがやってくるが、今まで通り内容で滑る可能性は高くない。事前に織り込まれた決算日の値動きは約7%である。例のごとく、決算翌日をその範囲内の乖離で寄り付いた場合は中心回帰しやすく、値幅が7%を超えたら慣性が付きそうである。
個人投資家のコール買いはすっかり死語になった10月FOMC前後の金融相場期待をピークに落ち着いている。もっともシタデルによると個人投資家のアクティビティ自体は増え続けている。少し損益を悪化させながらも空中戦を続けているということか。
上値では個人投資家の0DTEのコール売りも流行ってきたようで、引け前にかけてディーラーのポジティブガンマが増大しやすく、引け直前にディーラーのコール利食いが出やすくなったとの観測もある。
その例として上抜けた10/24金曜が挙げられており、引けピンを狙うよりも引け直前の売りに警戒すべきであり、その分0DTEが消滅した引け直後の方が上昇しやすいという知見に繋がるが、これは最近の体感と一致するだろう。
最近は機械勢のポジショニングが引け近辺で売るか売らないかしかないので尚更であるが、例えばクラッシュの後にやってくるリアライズドVol低下期間では、引け近辺は機械勢の再充填の方が優勢になるだろう。
NAAIMは調整が進む中である程度過熱感が払拭されている。マクロイベントとしては9月の雇用統計は木曜11/20寄付き前に発表される。そこに向けてアンチ・ゴルディロックスが盛り上がる可能性はあるが、2度の利下げを経て長期金利の天井も低くなっていると思われるため、雇用統計をバッドニュースで通過しても極端には盛り上がらないだろう。
テクニカル。テックセクターの調整はそれなりに大きく、モメンタムを追い掛けるオプションの動きも沈静化してしまっているので、NAAIMとシンクロする形で、何もなければ買って寝れる程度には過熱感が解消されている。
留意すべきは先週末の長期金利の上昇を見てテクノロジー売り・バリュー買いが一層進むリスクであり、そのローテーションは中長期的な意義としては所詮テクノロジーの押し目を提供するだけと思われるものの、振り落とされる方にはなかなかのストレスになる可能性がある。
S&P 500の日足は斜めったヘッドアンドショルダーとなり、ナスダックのそれは更にくっきり見える。従ってナスダックの右肩23670は強いレジスタンスとなる。基本的に6630 -6920レンジはまだ続いているように見えるが、どちらかに抜けるとすればさすがに下っぽいだろう。もっともレンジ上半分で過剰なポジションさえ取っていなければ、レンジを下抜けるような振り落としがあったとしても穏やかな目で見れるだろう。
残尿ゾーンが依然6550近辺に控えているが、もし11月中にそのレベルまでの調整が実現するなら、政府再開とQT停止がもたらす流動性回復を前にした、夜明け前の暗い時間帯とも言える貴重な買い場になるだろう。
- NY市場サマリー(10日)米株上昇、円下落・豪ドル上昇、利回り上昇 | ロイター
- NY市場サマリー(11日)ダウ最高値更新、ドル下落 | ロイター
- NY市場サマリー(12日)ダウ最高値更新、円が対ドルで一時155円台、利回り低下 | ロイター
- NY市場サマリー(13日)米国株急落、ドル下落、利回り上昇 | ロイター
- NY市場サマリー(14日)ドルが対ユーロで上昇、米株まちまち 利回り上昇 | ロイター
- 米国株式市場=上昇、エヌビディアやパランティアが高い 政府再開に期待 | ロイター
- 米国株式市場=ダウ最高値更新、559ドル高 政府再開に期待 | ロイター
- 米国株式市場=まちまち、ダウ最高値更新 ハイテク株売られナスダック下落 | ロイター
- 米国株式市場=急落、エヌビディアなど安い 利下げ観測後退で | ロイター
- 米国株式市場=まちまち、来週のエヌビディア決算に注目 | ロイター
編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年11月17日の記事を転載させていただきました。