高市早苗首相は7日、衆院予算委員会で立憲民主党の岡田克也元幹事長の執拗な質問に答え、台湾有事について「(中国が台湾を)北京政府の支配下に置くためにどういう手段を使うか、いろんなケースが考えられる」と指摘した上で「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と答弁した。
高市首相の答弁が報じられると、中国の薛剣駐大阪総領事(57)は「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と自身のXに投稿したことから、日本と中国間に緊張が走った。

ここでは日中両国関係を論じるつもりはない。ただ、奇妙なことに気が付くのだ。中国の大阪総領事は昔も下品な発言で物議を醸したことで知られる典型的な戦狼外交官だが、どうして高市首相の暗殺を示唆するような脅迫発言をSNS上で投稿したのかだ。「もともと下品な外交官だから」と説明もできるが、それでは済まされないものを感じるのだ。「首相の暗殺」を想起する不気味な事例が総領事の頭の中で久しく浮遊していたのではないか。
言葉や事例は伝搬する。地理的に離れていても、時間的に異なっていても、同じような事例や出来事がある日、再現することがある。中国総領事の発言から「(中国が最も嫌っていた)安倍晋三元首相の暗殺事件を思い出した」という日本人が多くいたのではないか。

中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事Xより
安倍元首相暗殺は大昔の話ではなく、数年前の出来事だ。大阪総領事も良く知っているはずだ。だから、第2の首相暗殺をほのめかすような「高市首相の暗殺」を示唆する投函が何を意味するかを知っていたはずだ。2021年から大使級の大阪総領事を務める外交官の頭の中で「首相暗殺」という言葉が他の事例とリンクしながら動き出していたのではないか。換言すれば、大阪総領事の暴言は決して唐突に出てきた失言ではなく、何者かに押し出されるように、吐き出されたセリフだった、と言ったほうが当たっているのではないか。
イギリスの元ケンブリッジ大学フェロー、生物学者、超心理学者のルパート・シェルドレイクは、「離れた場所に起こった一方の出来事が、他方の出来事に影響し、形態のみならず、行動パターンも共鳴する。これらは「形の場」による「形の共鳴」と呼ばれるプロセスによって起こる」という説で知られている。簡単に言えば、「直接的な接触が無くても、ある人や物に起きたことが他の人や物に伝播する」とする仮説だ。
高市首相は暗殺された安倍元首相の後継者と呼ばれてきた。ここで「安倍元首相」と「高市首相」が強く繋がる。それだけではない。安倍晋三元首相を手製銃で殺害したとして、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判の初公判が先月28日から奈良地裁で開かれている。高市首相は奈良出身者だ。古都「奈良」が奇怪な出来事の書割として頻繁に登場してくる。
安倍元首相は2022年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で街頭演説中、「首」と胸付近を手製の銃で撃たれ、病院に搬送されたが失血死した。そして、安部元首相の暗殺事件の裁判が奈良の地裁で開かれている中、大阪総領事は「(高市首相の)汚い『首』を斬ってやるぞ」と脅迫したのだ。はっきりと頭ではなく、「首」を斬ってやる、といっているのだ。
これらの一連の出来事、発言が薄気味悪い繋がりを見せてくる。心理学者ユングが提唱した「意味のある偶然の一致」(シンクロニシティ)といった現象を感じさせるほどだ。
参考までに、安倍元首相の暗殺事件は「山上容疑者単独犯行」ではない、という憶測が依然流れている。安倍氏を恐れた外交勢力の組織的関与説が囁かれている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年11月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






