インバウンド需要の拡大によって成長してきた民泊ビジネスですが、最近は東京のような都市圏だけではなく、リゾートエリアや地方都市にまで広がってきました。

ところがここにきて民泊事業に逆風となることが立て続けに増えています(写真は私が新宿で運営する宿泊施設)。
まず日中関係の冷え込みによる中国人観光客の減少です。高市首相の台湾有事に関する国会答弁をきっかけに中国政府が態度を硬化させ、中国人の訪日の自粛を呼び掛けており、団体客を中心に影響が出ているようです。
また、中華系の航空会社は日本便の本数を減らす動きも見せており、しばらくは中国人需要に頼っていた宿泊施設は厳しい状況になりそうです。
そして、地方で問題になっているのが熊の被害です。山間部の温泉地だけではなく最近は地方の繁華街などにも出没するようになり、地元の人たちの生活にも大きな影響を与えています。
観光客も敢えて熊の被害のリスクのある場所には出かけたくないですから、騒動が収まるまでは宿泊需要にマイナスとなります。これは外国人も日本人もすべての観光客に影響します。
さらに特に東京や大阪などの都市部では、以前のブログに書いたように民泊に対して規制強化の動きが出てきています。
近隣住民と主に外国人と思われる宿泊者の間で騒音問題やゴミ問題などで軋轢が発生し、自治体が民泊の規制強化を始めました。この流れはこれからさらに広がりそうです。
そもそも宿泊ビジネスは居住用不動産の賃貸に比べ高収益である分、リスクも高くなります。
数年前のコロナ禍でも居住用不動産の影響は軽微だったのに対し、宿泊ビジネスは壊滅的な打撃を受け撤退する投資家が続出しました。
リスクだけではなくコスト面でも宿泊施設は居住用物件より不利になります。家具や食器などの備品を備える必要がありますし、宿泊施設の規制に合わせて防災設備などを整えなければなりません。
今後金利が更に上昇すれば、借入を使って事業を進めている人たちにとっては金利負担が重くなるというデメリットも出てきます。こちらはすべての不動産投資に関して同様です。
投資にはリスクが付きものですが、民泊ビジネスはその中でも想定外のリスクが大きいという点で特殊な投資対象と言えます。
今回の環境の激変でまた大きな打撃を受ける民泊投資家が出てこないか、今から心配です。

alashi/iStock
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年11月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。






