氷の器で供されるキャビア
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魅惑の高級食材、キャビア。その製法は、チョウザメの卵を塩で味付けし熟成させただけの、ごくシンプルなもの。それだけに、原材料となるチョウザメの卵の質が、最上の味を生み出す決め手になる。
世界中で重宝された結果、天然のチョウザメは乱獲されるようになり、その数は劇的に減ってしまい、2010年には捕獲が禁止された。その前後からチョウザメの養殖が本格的にスタートし、2000年には15トンだった養殖チョウザメのキャビア生産量が、2022年には350トンになったそう。中国が群を抜いて多く、ロシア、イタリアに続きフランスは4位で年間約40トンを生産している。
フランスには7つのチョウザメ養殖場があり、うち6つはフランス南西部、大西洋に面したヌーヴェル=アキテーヌ地方にある。同地方の気候風土や水質がチョウザメ養殖に適しているのだろう。この地方のヌーヴィックにある「キャビア・ド・ヌーヴィック」は、2011年創業。2021年にはフランス初の有機キャビアの称号を得ている、上質なキャビアを生み出すメゾンだ。
2つの川に挟まれた自然豊かなエリアにある「キャビア・ド・ヌーヴィック」
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美しい森と川に囲まれた広大な敷地で、チョウザメの孵化から生育、キャビア作りまでを一貫で行っているマニュファクチュール。トータル16000m2の水槽にはすぐそばの川から常に新鮮な水が注がれ、チョウザメたちは十分に泳ぎまわれる広い水槽の中で育つ。
養殖するチョウザメを持つ、オーナーのローラン・ドゥヴェルランジュ氏
与える餌は、持続可能な漁法で獲られた魚の粉末や有機シリアル。健康で上質な餌が、香り高く上等な卵を育てるのだ。健やかで快適な環境下で最低7年間育てられたチョウザメの雌から卵を取り出し、洗浄や選別をへて海塩で味付けし、数ヶ月間熟成。こうしてキャビアが誕生する。
「キャビア・ド・ヌーヴィック」のキャビアは、常に少量ずつ生産し出荷するため、フレッシュで柔らかな食感と磯の香りが特徴。バエリ種はバターやヘーゼルナッツを彷彿させる香りや味わい、オシエトル種はバターやクルミ、乾燥フルーツなどの香りがあり、後味の長さが魅力的だ。
シックで美しいパッケージ。クリスマスのプレゼントにも重宝される
自社養殖場で育てるチョウザメは、この土地の機構風土に適したバエリ種とオシエトル種の2種だが、ブルガリアにある養殖場と専属契約をし、セヴルーガ種とベルーガ種のキャビアも販売している。
自然豊かな養殖場は一般見学も可。養殖現場を見られるだけでなく、見学用に育てられたチョウザメを触る体験も。川からの水の引き方、エコシステムが整った環境の素晴らしさなども体感でき、人間が自然に寄り添って生み出す極上キャビアについて深く知ることができる。
レストランも併設されており、キャビアやチョウザメの身を使った料理を提供。キャビアとなる卵以外の肉や骨は、燻製にしたりそのまま調理したり魚のスープにしたり。残った骨やクズは堆肥にして再利用している。
ボルドーから車で2時間ほどかかるため訪れるのは簡単ではないが、パリ中心地にもブティックがあり、豊かな自然の中で大切に育てられたチョウザメが育んだ卵から生まれた「キャビア・ド・ヌーヴィック」の上質な各種キャビアをシャンパーニュやウォトカとともに味わえる。
パリ6区にあるブティック
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フランスのクリスマスや年末の祝宴に欠かせない美味なるキャビア。その魅力を満喫できる場所だ。
パリのブティックで、キャビア&シャンパーニュを楽しむひととき
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