AI普及でホワイトカラーには余剰が生まれる一方、生活を支えるエッセンシャルワーカーは深刻な人手不足に陥っている。待遇の低さや労働環境の過酷さから職種間移動は進まず、都市の公共交通や介護現場まで維持が難しくなってきた。2040年には不足が数百万人規模に達する見通しで、日本の生活基盤が揺らぎ始めている。
労働移動は1割台にとどまるが待遇の低さが最大の原因
- 21〜24年の転職者約840万人のうち、エッセンシャル職に移ったのは13%。
- 事務職・生産職の内部移動は進むが、エッセンシャル職との壁は高い。
- AI普及で事務職は余るが、現場職には流れていない。
- 求人データではエッセンシャル職の月給は非エッセンシャルより1割低い。
- 生産性も平均の5〜7割と低く、賃上げ余力が乏しい。
- 低賃金・長時間・精神的負荷の三重苦で若年層の敬遠が強い。
アドバンスト・エッセンシャルワーカー育成へ
- 政府は処遇改善と現場のデジタル化を推進。
- ロボット導入などで生産性を3割改善した施設もある。
- 今後は「AIを使いこなす現場技術者」が重要になる。
日本労働市場の深い構造問題
- 大企業のホワイトカラーは余る一方、現場は人手不足のまま。
- 中高年の雇用が温存され、労働の新陳代謝が起きない。
- 処遇改善に必要な値上げに社会が反発し、必要な対価が払われないまま。
本質的な問題は「需要に見合う待遇不在」
- 給与を十分に上げれば人材は集まるが、社会がそれを拒んでいる。
- 労働負荷やハラスメントの改善が伴わなければ根本解決にならない。
- このまま放置すれば、サービス低下と治安悪化の負のループが進む。
エッセンシャルワーカー不足は、労働市場の分断と低待遇が生んだ構造的危機だ。AI時代でホワイトカラーが余るほど、現場職の重要性は増す。必要なのは、美辞麗句ではなく、生活を維持する仕事にふさわしい処遇と環境を社会全体で認める姿勢である。日本はその転換を迫られている。