mokee81/iStock
結論から言う。人前で話すのが苦手な人は、100%克服できる。
「また出た、根拠のない精神論」と思っただろうか。違う。むしろ逆だ。精神論で片付けないから、100%と言い切れる。
「今すぐ!思わず!もう一度!人前で話したくなる声と話し方」(下間都代子 著)日本実業出版社
答えは拍子抜けするほど単純で、「準備」「練習」「慣れ」。これだけ。いや、これしかない。
3000人にアンケートを取ったことがある。「話すのが苦手な理由」を聞いたら、まあ出るわ出るわ。羞恥心が強い、完璧主義、人の視線が怖い、過去にトラウマがある、自己肯定感が低い……。心理的な理由だけでこれだ。技術的な理由——声が小さい、論理的に話せない、アドリブが利かない——を加えたら、リストは延々と続いた。
でも、よく見ると全部同じところに行き着く。「自信がない」だ。
自信がないから緊張する。緊張するから頭が真っ白になる。真っ白になるから失敗する。失敗するからますます自信がなくなる。このループ、覚えがあるでしょう?
じゃあどうするか。自信をつければいい。
どうやって? 成功体験を積む。
どうやって? 準備して、練習して、場数を踏む。
……ほら、結局そこに戻る。
正直、もっとスマートな解決策があればいいと思う。「この本を読めば一発で治ります」みたいな。でも、ない。筋トレと同じだ。腹筋を割りたければ腹筋をやるしかない。
人前で話したければ、人前で話す練習をするしかない。当たり前すぎて申し訳ないが、当たり前のことを当たり前にやった人だけが上達する。
「でも私、もう40代なんですけど」という声が聞こえる。知ってる。だから何だ。今日があなたの人生で一番若い日だ。明日はもっと歳を取る。やるなら今日だろう。
長年の苦手意識なんて、要は経験不足が固まっただけのものだ。経験を積めば溶ける。溶けないと思い込んでいるのは、溶かそうとしたことがないからだ。
講座の受講生で、50代から始めて半年で見違えるように変わった人がいる。最初は自己紹介すらまともにできなかった。声は震え、目は泳ぎ、30秒が限界だった。
それが今では、100人の前でも堂々と話す。魔法じゃない。週に一度、愚直に練習しただけだ。才能でもない。ただ、逃げなかった。
とにかく始めてくれ。準備の仕方がわからないなら調べろ。練習相手がいないなら鏡に向かって話せ。場数が足りないなら、会議で一言でも発言しろ。
100%克服できる。これは事実だ。ただし、やった人だけの話だが。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
■
22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)