サブスクビジネスを検討する会社が増えてます。しかしサブスクビジネスは大掛かりなシステムが必要になるので、始めるのはなかなかたいへんです。
あるマネージャー研修で、こんなご質問をいただきました。
「サブスクビジネスを始めるのは結構大変なんですが、解決策はありますか?」
そこでクルマのサブスクを事例に取り上げて、サブスクビジネスを始める方法を紹介したいと思います。今回ご紹介するのは、トヨタとホンダの取り組みの違いです。
【トヨタのKINTO】
トヨタが展開するKINTOは、まさに堂々たる横綱相撲です。
まず2019年2月、株式会社KINTOを資本金18億円で設立。
そして2019年3月1日から、KINTO ONEを東京都内のトヨタ販売店とレクサス販売店でトライアル実施を始めて、2019年7月には、全国展開を開始しました。
ユーザー数は、2019年年末に累計申込み1,900人。
2022年年末には累計55,000人。そのうち4割が20-30代若者層でした。若者のクルマ離れに一矢報いる結果といえます。
一方で業績はどうでしょうか?
2022年の売上は198億円を達成するも、仕組みが大がかりなので39億円の純損失を計上。
2024年、売上587億円に対して、利益8億円と黒字化を達成しました。
じっくり5年間もかけて500億円超の事業に育て上げ、黒字化。さすがトヨタです。
しかし多くの方は、こう感じるのではないでしょうか?
「最初から18億円で新会社を作って、しかも5年間も粘るなんて、さすがトヨタだね。でもウチにはとてもムリ」
そこで参考になるのが、ホンダの取り組みです。
【ホンダのマンスリーオーナー】
ホンダは対称的に、身の丈で始めました。
KINTO立上げの1年後、2020年1月に埼玉県和光市の「U‑Select城北」1店舗で、中古車に絞ってサブスクを開始。
契約は最短1ヶ月、最長11ヶ月で、スマホやパソコンで気軽に予約できるようにして、全てコミコミで29,800円から、という内容でした。
これがお客様に好評で、9ヶ月後の2020年9月、城北1店舗で利用者は1000人に達しました。そこで展開エリアを4店舗に拡大。
さらに1年半後の2022年4月、47都道府県、378拠点に拡大。
ホンダは、大きな仕掛けで始めずに、まずは営業所にある中古車を使い、専用Webサイト+書類郵送というミニマムのシステムで小さく始めて、学びながら徐々に大きくしていったのです。
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トヨタの方法はまさに「横綱相撲」です。しかしこうした横綱相撲でなくても、ホンダのような身の丈相撲なら、私たちもできるはずです。
ちなみにホンダの方法は、「リーンスタートアップ」と呼ばれる方法です。
リーンスタートアップでは、最初から本格的なフルスクラッチの仕組みは作らずに、スマホやパソコンをいじれる人ならすぐ作れるようなウェブやスマホで受け付ける仕組みを用意して、徐々に学びながら仕組みを整え、作り上げていきます。
ホンダの方法は、社内起業プロジェクトなどをサブスクでまずは小さく始めたい際に、多くの企業にとって参考になる取り組みです。
まずは小さく始めること。そしてリアルな顧客から学んで、顧客ニーズがあることが検証できたら、その学びを反映して、仕組みを段階的に拡張していくのです。
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[KINTOの情報は下記を参照]
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/26466090.html
https://autoc-one.jp/news/5004620/
https://jidounten-lab.com/u_45084
https://jidounten-lab.com/u_55838
[HONDAの情報は下記を参照]
https://global.honda/jp/news/2020/c200128.html
https://global.honda/jp/news/2020/c200910.html
https://global.honda/content/dam/site/global-jp/news-new/cq_img/2022-new/04/c220407_link.pdf
編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2025年12月2日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。