日経平均を日本株のインデックスにするのはやめた方が良い

今週の日本株式マーケットも激しい動きとなりました。木曜日は水曜日に比べ日経平均株価は1000円以上の上昇となりましたが、金曜日は一転して500円以上の値下がりとなりました。

日経平均は日本株式の代表的なインデックスですが、必ずしも日本株全体の動きと連動しているわけではありません。その理由は採用している銘柄が225銘柄しかなく、しかもそれらの株価を単純平均して算出しているからです。

株価の高い「値がさ株」が高い組み入れ比率となることにより、ソフトバンクグループやファーストリテイリングのような「値がさ株」による変動が過剰に反映される問題があります。

日本経済新聞電子版によれば、昨年末から2025年10月末までに日経平均は1万2516円の上昇となりました。しかし、アドバンテスト、ソフトバンクグループ(SBG)、東京エレクトロンの3銘柄だけで上昇寄与額は8000円を超え、上昇額の多くを占める結果となっています(図表も同紙から)。

このように、特定の銘柄が乱高下することによりインデックスとしての機能を失ってしまいます。

日経平均とTOPIXの比率(いわゆるNT倍率)が大きくなっているということは、日経平均が値がさ株に引っ張られて上昇している一方、TOPIXはそこまで上昇していないことを示しています。

TOPIXは時価総額で計算され、銘柄のカバレッジも広くなっています。日本株全体の値動きをより正しく反映しておりインデックスとしてはより適切なデータとなっています。

日経平均は長期にわたって日本株式の代表的なインデックスとして利用されており、その知名度は圧倒的です。日経平均がいくらなのかは街中で聞いても多くの人が知っていますが、TOPIXの数字を知る人はあまり多くはありません。

問題は日経平均は日本経済新聞社が権利を持つインデックスであることです。日経平均が使われなくなると日本経済新聞社のライセンス収入も減ってしまいます。だから日本経済新聞社は日経平均がTOPIXなどの他のインデックスに取って代わられることは避けたいと思っているはずです。

インデックスとしての機能に問題があることを知って、自社の記事で上記のような分析まで行っているにも関わらず、自社の既得権益を守らざるを得ない矛盾した立場になっているのです。

しかしインデックスとしての問題点が多いことを鑑みれば、日経平均の銘柄の構成や計算方法について何らかの改善を行っていくべきではないでしょうか?

個人投資家にできることは日経平均をなるべく使わないことです。例えばインデックスファンドは日経平均に連動するものではなくTOPIXに連動するものを購入する。微力ではありますが、そのようにして少しずつ日経平均の影響力を下げていくしかありません。

chachamal/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年12月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。