鈴木農水相が推進する「おこめ券」で「高米価維持」政策は誰のためか

政府が物価高対策として自治体に活用を促す「おこめ券」について、JA全農と全米販は新たに発行する券に使用期限を設け、2026年9月末までの利用を求める方針を示した。だが、その背景には米価維持と在庫処理を目的とした政策意図が色濃く、物価高対策としての妥当性に疑問が広がっている。

  • 新たに発行されるおこめ券には「使用期限」や「転売禁止」が明記され、早ければ年末にも自治体へ配布される見通しとなった。期限設定には、特需を作り在庫を早期に吐き出す狙いがあるとされる。
  • 現行の500円券では実際に購入できるのは440円分で、差額60円が印刷費や流通経費として発行元のマージンになる。自治体がコメ券配布に補助金を使えば、さらに事務コストが積み増される構造となるという。
  • 鈴木憲和農水相が打ち出したこの政策は、同相と関係の深いJA全農が恩恵を受ける仕組みとの指摘がある。補正予算の特別枠4000億円が大量のコメ券に使われれば、約480億円がJA側に流れる計算になる。(参照:「おこめ券」でJAを救済したいだけ…税金4000億円で”史上最高値のコメ”を買わせる農水大臣とJAの癒着ぶり 山下 一仁 プレジデントオンライン
「おこめ券」でJAを救済したいだけ…税金4000億円で"史上最高値のコメ"を買わせる農水大臣とJAの癒着ぶり
高市政権が物価高対策として進める「おこめ券」に、拒否を表明する自治体が相次いでいる。何が起こっているのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「おこめ券は、発行するJAや全米販にマージンが払われる。コメを高値のまま売り払えるので露骨な利益誘導に使われている。本来なら減反を廃止してコメ価格を下げるべきで、反発...
  • 生産量が増えたにもかかわらず米価が下がらないのは、需給の歪みを人為的に固定しているためとみられる。農水省も備蓄米の買い入れや放出で実質的にJAを支えており、米価維持が続く大きな原因となっている。

使用期限付きコメ券の導入は、名目上は物価高対策として説明されているものの、実態は米価維持と在庫処理のための施策に近い。農水省とJAの構造的な関係が政策を歪め、消費者と自治体に負担を強いる状況が続いている。真に物価負担を下げるには、輸入拡大や生産調整の見直しなど構造改革こそが求められている。

鈴木憲和農水相Xより