鈴木農水相の目玉政策「おこめ券」が自治体に拒否されJAへの利益誘導は失敗か

政府が物価高対策として推奨する「おこめ券」を巡り、自治体の反発が広がっている。配布事務の負担や費用対効果の低さに加え、政策全体の妥当性にも疑問が強まり、高市政権の経済政策への不信感を深める事態になっている。

  • 政府は物価高への対応として「重点支援地方交付金」の活用を自治体に促し、その使途として「おこめ券」を推奨している。しかし、交野市や静岡市、をはじめ複数の自治体が配布を拒否している。
  • 福岡市は、政府推奨の「おこめ券」配布を見送り、下水道使用料2カ月無料化など独自の支援策に切り替えると発表した。北九州、熊本の両市も配布を見送る方針だ。
  • おこめ券は1枚500円とされているが、実際に購入できるのは440円分にとどまり、12%が印刷・流通などの事務経費として失われる。新たに使用期限付き券を発行する方針も示され、自治体側には郵送や管理に追加のコストと手間が発生する。
  • 自治体側には「配るならまだ現金の方が効率的」という声が強い。おこめ券は利用を特定商品に縛るため、家計の自由度を奪い、消費者にとって実質減価する「非効率な配給制度」だとの批判が多い。
  • 米価は過去最高水準に達しつつある一方で、先安観も強まっており市場は不安定化している。背景には、高市政権の鈴木憲和農水相が「需要に応じた生産」と称し、事実上の減反政策へ再転換した政策の揺り戻しもある。
  • さらに、この「需要に応じた生産」を法制化する動きが進むなど、農政は短期間で大きく方向転換しており、現場には混乱が広がっている。米政策の不整合が米価をゆがめ、物価高をむしろ促進しているという指摘も根強い。
  • おこめ券の配布は、政府がコメを買い上げて配給するのとほぼ同じ構造であり、国家管理的な市場介入だとの批判もある。結果としてコメ消費を無理に押し上げ、米価を引き上げる「物価高促進策」になるとの見方が強い。
  • 期限切れ後には市民が割高な米を購入せざるを得なくなる可能性もあり、生活への負担増につながる懸念が自治体から示されている。
  • また、既存のおこめ券を発行しているのはJA全農や全米販であり、鈴木農水相の選挙区事情やJA関係者との関係を踏まえ「利益誘導ではないか」という疑念も指摘されている。

総じて、おこめ券は自治体に事務負担とコストを強いるだけでなく、市場を歪め物価高を助長する逆効果の政策であるとの批判が広がっている。自治体が配布を拒む動きは、非効率なバラマキに対する現場からの健全な抵抗とも言え、政策全体の見直しを迫る局面となっている。

予算委員会での鈴木憲和農相 同大臣Xより