中国への警戒心:危険な領域に入ってきている習近平政権

今年の漢字に「熊」が選ばれたそうです。1年前にも当地で「日本で熊問題が起きている」と話題になったのですが、今年のヒートアップぶりは凄かったと思います。もちろん、その被害もあるのですが、報道各社がこれでもか、これでもかと熊出現を報じたインパクトにより印象が残りました。日本人はなぜ熊の報道に興味を持つのか、ふと考えると天気や地震の報道と同じなのではないかと思うのです。つまり自然とどう向かい合うのかということが国民レベルで共有されるのですね。海外ではそれらを災害というひと括りにしますが、日本は自然との共生が前提に立っているように見えます。とはいっても熊との共生はちょっと勘弁ですが。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

株式市場の光と影

これだけ上場銘柄があれば上がる株、下がる株は当然あります。そしてリーディングセクターと称するけん引役が先頭交代制で引っ張り上げることで長い上昇トレンドを作ることが重要です。北米を見ている限りAI関連は踊り場なのか、終わりの始まりなのか判断に苦しむところにあります。今週決算発表になったテック大手が一様に冴えない結果となり、手じまいが出てくる可能性を見ています。データセンターについてもネガティブなニュースが散見できます。

日本は利上げ期待から金融セクターがリード、また泊原発の再稼働も見えてきたことで原発関連が引き続き賑わうかもしれません。東証はもう1つ上場廃止が一つのブームで25年は120社程度と大きく増え、26年度は東証の上場基準抵触絡みでもっと増えるとみています。これは数年前、このブログで東証は30%近い上場企業削減をすべし、と述べたその流れが実現しつつあると考えています。また新規上場の審査は厳しく、ひと昔前の「IPOで一儲け」という安直若手経営者は締め出される時代となりました。

気になるのは金(ゴールド)が極めて強い値動きを続けていることです。金を買う理由はドル不信が前提にあるので金の不気味なほどの高騰は世界の不和の予兆とも言えなくはありません。ここでいう不和とは必ずしも戦争を意味するのではなく、経済的な混とん、例えばサプライチェーンの寸断であるとか、国家が保守的になり反グローバルな政策を展開することで世界規模の経済がシュリンクすることを意味します。個人的には「大戦間経済」と称される1920年代から30年代の暗黒の木曜日を含む大不況とその後のブロック経済についてもう一度紐解く価値はあるのかなと考えています。今が1929年の秋と似た状況になければよいのですが。

中国への警戒心

私はなるべく感情移入しないで物事を見るようにし、薄口な評論をするように心がけています。中国のことを書いても「お前は左か?」と思う方も多いと思いますが、今の時代、右とか左とかは重要ではなく、ケースバイケースで冷静な判断をするかが重視されます。そんな中で以前から中国についてブレないで思い続けていたことがあります。それはずばり「習近平氏は経済オンチである」という点です。いくら国家指導者と言えどもマルチタスクをこなせるスーパーマンはほとんどいないわけでその代わりブレーンを置くわけです。ところが権力者が圧倒的なパワーを持つとブレーンがブレーンの役割を果たせなくなります。習氏の場合はこれがもうずっと続いているのです。

習近平国家主席 中国共産党新聞より

最近感じる中国の対外政策の姿勢とは「驕り」「傲慢」「過信」であり国内で山積する問題を対外政策において強弁を振るうことでストレス発散させ、国内向けに誤ったイメージを植え付ける傾向が再度高まっているように見えるのです。ただその発信エネルギーが習近平氏の権力にあやかるように見えるところが以前との相違で、危険な領域に入ってきているように感じるのです。

欧州が憤慨しています。中国が発表した対EUの貿易黒字は47兆円規模にもなり、この驚愕の数字にマクロン大統領が「耐え難い」とし、フォン デアライアン欧州委員長が「転換点」と発言しています。またメキシコが最大50%の輸入関税を課すことを決め、中国に大きな影響を及ぼすとされます。アメリカに流れる安い中国製品の「バックドア(裏口)」と称されていただけにシェインバウム大統領は思い切ったアメリカ寄りの判断を下したと言えそうです。様々な形で中国包囲網が出来上がればいくら中国が不平不満を述べても「遠吠え」となり窮地に追い込まれ中国苦境の悪循環が加速度的に進みかねません。

トップの評価

バークシャーハサウェイのCEOであるウォレン バフェット氏が95歳になり退任するにあたり後任にグレッグ アベル氏を指名しています。その交代時期が迫る中、アベル氏が率いることになるバークシャーに対する評価は「売り推奨」。厳しい門出となりそうです。もっともバフェット氏を「投資の神様」とみる人も多い中、カナダ人のアベル氏と比べること自体無理強いな話ですが、企業のリーダーシップとはナラティブな過去の栄光より将来に向けた期待であるべきです。

同様に取りざたされているのがアップルの人事で、スティーブ ジョブズを引き継いだ実務派のティム クック氏は地味ながらも会社規模をはるかなレベルに引き上げてきました。ただ、在任期間が長い上にアップルがテック企業として華があったかといえば目立たない存在であったことは確かです。そのクック氏も来年あたりに退任の話が出てくる可能性が高まっています。バークシャーもアップルも既に大幹部と称される人材が流出し始めており、防戦を強いられそうな勢いです。

顔役となれるほどの企業経営者は圧倒的な安定感と期待感を提供します。アマゾンのジェフ ベゾス氏が抜けた時、個人的にアマゾンの破竹の勢いは止まるだろうと予想しましたが、実際に株価もその後大きく跳ねることはありませんでした。最後の大物とされるJPモルガンのジェームス ダイモン氏もそろそろではないかとされます。私が見る大物企業経営者とは「物語(ナラティブ)が作り出す偶像」だと思います。これだけの苦境を乗り越えてここまで大きくしたというストーリーこそが投資家を心地よくさせるのでしょう。創業者や名物経営者のもつグッドウィル(無形資産)とも言えるのかもしれません。

後記
新会社を設立した関係で銀行に法人口座を一つ作ることにしたのですが、そのプロセスに正直驚きを隠せません。私も最後に法人銀行口座を作ったのはひと昔以上前なので、今ではこれほどの詳細な資料を要求されるのか、と思っています。取締役全員の人物チェックもあり、担当窓口が全部で10種類は下らない申請書関連書類を一旦受領したのち独立した銀行のコンプラ部署がそれを再チェック、問題点や修正事項が指摘され、私に補足説明や追加資料を要求します。口座ができるまで実質一か月。ここまでガチガチにプロセスするとなれば銀行管理コストも高いだろうな、と思います。その担当者から「ホリディシーズンなのでビールと飯でも」とのお誘い。銀行持ちのこの飯代も月々の口座使用料に跳ね返るのだろうな、と思うと複雑な気持ちであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月13日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。