フィンランドの「ミス・フィンランド」優勝者が、目尻を指でつり上げる写真をめぐり人種差別批判を受け、称号を剝奪された。この判断に反発した議員の行動や、政府が任命した人権大使のSNS対応が新たな問題となり、「人権先進国」とされてきた同国の姿勢そのものが問われている。
事案の経緯
- 9月にミス・フィンランドに選ばれ、11月にはミス・ユニバースに同国代表として出場した女性が、11月下旬、「中国人と食事中」という説明付きで両目尻を指でつり上げる写真がSNS上で拡散され、欧米社会ではアジア人を嘲笑する差別的ジェスチャーと受け止められた。
- 女性は写真が本人投稿ではないとしたうえで、「夕食中に頭痛と目の圧迫感があり、無意識にした仕草だった」と釈明し、SNS上で謝罪した。
主催者の対応と政治問題化
- ミスコン主催者は今月、謝罪があったにもかかわらず優勝取り消しを決定し、「人種差別や差別的行為、ヘイトスピーチはいかなる形でも容認しない」とする声明を発表した。
- これに対し、極右的政党「フィン人党」などの国会議員が、「過剰反応への抗議」や「女性擁護」を理由に、自らつり目ポーズを取った写真や動画をSNSに投稿し、問題は政治的対立へと発展した。
人権大使のX応への批判
- さらに波紋を広げたのが、フィンランド政府が任命した人権担当大使の対応で、日本人から寄せられた抗議や質問に対し、X上で複数のアカウントをブロックしていたことが判明した。
- 人権大使は後にブロック自体は謝罪したものの、国会議員によるつり目ポーズの是非や差別性については回答せず、質問投稿も非表示のままとなり、「対話を通じて人権を守る」という政府方針と矛盾するとの批判が強まっている。
国際的な反応
- 駐日フィンランド大使館には抗議が相次ぎ、大使館側は「個々の政治家の発言は政府の公式見解ではない」と説明したが、人権大使自身の行動については十分な説明を行っていない。
- 国内では「幼稚な振る舞いではあるが人種差別ではない」とする擁護論も見られる一方、国会議員と人権担当者の一連の対応は、人権意識や説明責任の不足を露呈したとの見方が国際的に広がっている。
今回の騒動は、ミスコンをめぐる一件にとどまらず、政治家の挑発的行動と人権大使の不適切なSNS対応が重なったことで拡大した。差別的表現を軽視し、批判や問いかけを遮断する姿勢は、「人権先進国」としての信頼を大きく損なう。フィンランドが今後も人権問題で国際的発言力を保てるかどうかは、この問題への向き合い方にかかっている。