ラテンアメリカで進む政権の右旋回:左派の時代はなぜ終わったのか

ラテンアメリカで進む右派への大転換

ラテンアメリカで米国の政治的影響力が復活している。すなわち、主要国で右派政党が政権に就いているということである。

わずか5年前までは左派政党が主要国で政権に就いていた。2018年にメキシコで80年ぶりに左派のロペス・オブラドール氏が大統領に就任。2019年にアルゼンチンでアルベルト・フェルナンデス氏、2020年にボリビアでルイス・アルセ氏、2021年にペルーでペドロ・カスティーリョ氏、2022年にはホンジュラスでシオマラ・カストロ氏、チリでガブリエル・ボリッチ氏、コロンビアでグスタボ・ペトロ氏、ブラジルではルラ氏という具合に、どこも左派政権が誕生した。

それからわずか5年が経過した現在、主要国は右派政権に転換している。エルサルバドルでナジブ・ブケレ氏、アルゼンチンでハビエル・ミレイ氏、ボリビアでロドリゴ・パス氏、エクアドルでダニエル・ノボア氏、そして今年11月にチリでホセ・アントニオ・カスト氏が大統領選に勝利した。カスト氏は極右だとされているが、同国の政治評論家の間ではイタリアのメローニ首相と政治スタイルがよく似ていると言われている。メローニ氏も政権に就くまでは極右だと評価されていたが、実際に政権に就いてみると、近年のイタリアで最も安定した政権を維持している。

来年のコロンビアの大統領選では右派が政権に復活することは確実である。現在のペトロ政権になってから、南米で米国から最も信頼されていた国が一挙に転落した。また、20年余り続いたベネズエラの社会主義革命も、その終焉が間近に迫っている。

左派政権が直面したポピュリズムの限界

5年前までの社会主義政権はどこも、貧困、社会の不平等、環境破壊などを改善していくとして国民から支持を得たが、結局はポピュリズムから脱却できず、逆に経済は低迷し、社会秩序の混乱などが顕著になっただけであった。それに反発した国民が右派に政権を戻すことになったことが主因である。

メキシコについても、左派ロペス・オブラドール氏の後継者であるクラウディア・シェインバウム氏という初の女性大統領が誕生した。が、彼女は米国トランプ政権による圧力も影響して、前任者とは異なった右派的な政権に転換しつつある。ブラジルについても、ルラ大統領への国民からの支持は急降下しており、右派政権に復活する可能性が高い。同様に、コロンビアでも来年の大統領選挙では右派が復活する可能性は非常に高い。

パラグアイを除いて、これらの国では商取引においては依然として中国との貿易が重要な位置にあるが、政治的には米国の影響力が復活してくるのは明白である。