他人の裏金は叩くTBS、「コンプラ担当役員が不正経費で辞任」にはだんまり

テレビ局の信頼の根幹であるはずのコンプライアンスを担う役員自身が、不正な経費精算で辞任に追い込まれた。TBSで起きた今回の事案は、単なる個人不祥事にとどまらず、テレビ局のガバナンスそのものを問い直す問題である。

  • TBSホールディングスは25日、井田重利常務取締役が辞任したと発表した。
  • 今年12月、井田氏による交際費の不正精算に関する内部通報があり、外部専門家の協力を得て調査を実施した。
  • 調査の結果、実際にはTBSグループの役職員同士の懇親や慰労目的の会食であったにもかかわらず、社外関係者との会食と偽って交際費を申請し、井田氏がその金額を受領していたことが判明した。
  • 不正が行われていた期間は、井田氏が執行役員に就任した2022年6月から2025年12月まで。
  • 不正な交際費精算は約180件にのぼり、総額はおよそ660万円に達していた。
  • 井田氏はTBSにおいて、コンプライアンスを担当する取締役という立場にあった。
  • ルール遵守を監督すべき役員自らが不正を行っていた点で、社内外の信頼を著しく損なう行為と位置づけられる。
  • 井田氏は事実関係を認め、不正に精算した交際費を過去にさかのぼって全額返金する意向を示し、辞任を申し出た。
  • TBSは「ステークホルダーの皆さまを裏切る、決してあってはならない行為」として謝罪した。
  • 今後は再発防止策を講じ、コーポレートガバナンスの強化に取り組むと説明している。
  • コンプライアンス担当役員がコンプライアンス違反で辞任するという事態は、制度が形骸化していた可能性を強く示す。
  • 不正が発覚しても「解任」ではなく「辞任」という処理にとどまった点についても、ガバナンスの甘さを指摘する声が出ている。
  • 政治や企業の不祥事を厳しく批判してきたテレビ局自身の足元が問われる事案であり、自己検証と構造的な改革なしに信頼回復は難しいが、その対応は組織体質的に不可能だと思われる。

今回のTBSの不正経費精算問題は、単なる一役員の問題ではなく、テレビ局のコンプライアンス体制と経営姿勢そのものを映し出す出来事である。ルールを監督する立場の人間がルールを破る組織で、社会的批判に耐えうる報道や検証ができるのか。「オールドメディア」が自らを変革できるのかどうかが、いま厳しく問われている。