(前回:佐倉市観光事業になぜマーケティングは組み込まれなかったのか③)
計画段階で何が検討されていたのか
前稿では、ふるさと広場拡張整備事業をめぐって、一般質問の中に三つの水準の問い——計画策定のプロセス、事業の効果、事業が成立するための条件——が存在していたことを整理した。
本稿では、それらの問いに対して、佐倉市の計画段階で実際にどの水準まで検討が及んでいたのかを、計画文書の記述を中心に確認していく。
プロセスはどこまで設計されていたか
まず、計画策定のプロセスについて確認する。ふるさと広場拡張整備事業は、「佐倉ふるさと広場拡張整備基本計画」という形で文書化され、策定作業は一定の手続きを経て進められてきた。
検討組織の設置、関係部署による協議、計画案の公表と意見募集といった一連の工程は、制度上の枠組みに沿って整えられている。
少なくとも、形式的には「誰が、どのような手順で決めたのか」が分からない状態ではなかった。計画は存在し、公開されてきたという意味で、プロセスの水準における検討は、計画の初期段階から一定程度確保されていたと見ることができる。しかし、この計画書をもとにした議会での体系的な説明は行われておらず、その意味では、検討が十分だったとは言い難い側面も残る。
事業効果はどの水準で語られていたか
次に、事業の効果についてである。計画文書では、観光拠点としての魅力向上、来訪者の増加、地域活性化といった趣旨が示唆されている「整備コンセプト」が掲げられている。
これらは、多くの自治体観光事業に共通する目標であり、方向性としては明確である。
一方で、これらの効果をどのような指標で測定するのか、どの程度を目標とするのか、どのように市民へ還元するのかといった点について、計画段階の具体的な記述は見当たらない。
成立条件はどこまで計画に組み込まれていたか
三つ目は、事業が現実に成立するための条件、すなわちマーケティングや生活環境への影響に関する検討である。
計画にはフラワーツーリズムやサイクルツーリズムといった概念が掲げられているが、主要な来訪者を誰と想定しているのか、どの地域から、どの交通手段で来訪するのかといった来訪者像の設計は、計画書の中に明示されていない。また、来訪集中時に周辺地域の交通や生活環境にどのような影響が及ぶのかについても、計画段階での検討や評価は確認できない。
成立条件の検討は、本来、事業の骨格を形成する要素であるにもかかわらず、計画の中では事実上扱われていないのである。
三つの問いの「重さ」の違い
以上を整理すると、佐倉市の計画段階においては、三つの問いが同じ重さで扱われていたわけではないことが分かる。
プロセスは制度として整えられ、効果は方向性として語られてきた一方で、成立条件は計画設計の射程そのものに含まれていなかった。この「重さの違い」こそが、一般質問の中で三つの問いが異なる位置から投げかけられる構造を生み出していたと言える。
次に進むべき問い
では、なぜ行政の計画設計において、このような重さの偏りが生じるのか。なぜマーケティングや生活環境といった成立条件が、初期設計から外れやすいのか。
次稿では、この構造を佐倉市固有の事情としてではなく、日本の地方自治体に広く共通する意思決定のメカニズムとして整理し、ふるさと広場拡張整備事業の事例を通じて、自治体観光政策の課題を一般化していく。