佐倉市観光事業になぜマーケティングは組み込まれなかったのか③

工事が開始された2025年12月23日現在のふるさと広場の様子

(前回:佐倉市観光事業になぜマーケティングは組み込まれなかったのか②

一般質問に現れた三つの問い

前稿では、ふるさと広場拡張整備事業の前提と計画内容、そしてそれが一般質問を通じてどのように議会と接点を持ってきたのかを整理した。本稿では、その一般質問の中身を、個々の発言の羅列ではなく、「どのような種類の問いが、どの位置に置かれていたのか」という観点から捉え直してみたい。

ふるさと広場拡張整備事業をめぐる一般質問を通して浮かび上がるのは、大きく分けて三つの水準の問いである。

第一は、計画の策定過程や意思決定の透明性に関する問いである。誰が、どのようなプロセスで計画を決め、どこまで情報が公開され、誰がチェックしているのか。事業の中身以前に、その前提となる手続きの妥当性や説明責任が問われた。

第二は、事業の効果に関する問いである。拡張整備によってどのような成果を想定しているのか。それはどのような指標や数字で示されるのか。そして、その成果は市民にどのような形で還元されるのか。公共投資としての妥当性を、結果の側から確認しようとする問いである。

第三は、事業が現実に成立するための条件に関する問いである。誰を主要な来訪者として想定しているのか、どのように現地へ来てもらうのか、交通や生活環境への影響をどのように考えているのかといった、運用と実装の水準に関わる問いである。

三つの問いが示す水準の違い

これら三つの問いは、互いに対立するものではない。むしろ、同じ事業を異なる水準から確認しようとするものであり、本来であれば計画の初期段階から相互に接続されているべき論点である。

しかし、一般質問のやり取りを通じて見えてくるのは、これらの問いが必ずしも同じ重さで扱われてきたわけではないという事実である。プロセスに関する問いは計画の前提条件として重く扱われ、効果に関する問いは方向性レベルで整理される一方、成立条件に関する問いは、後段の調整事項として扱われがちであった。

この重さの違いは、どれかの問いが誤っているということではなく、計画の設計過程において、どの水準の論点が優先されてきたのかを示している。

問いの配置が映し出す設計の輪郭

重要なのは、これらの問いが一般質問という場で初めて現れたのではなく、計画段階での検討の配置が、結果として議会での問いの配置として可視化されているという点である。

一般質問は、行政内部で暗黙のうちに前提とされてきた設計の輪郭を、後から浮かび上がらせる役割を持つ。どの問いが前面に出て、どの問いが後景に退いているかをたどることで、計画のどこに重心が置かれていたのかが見えてくる。

次に問われるべき視点

ここまで整理してきた三つの問いは、ふるさと広場拡張整備事業の是非を単純に問うものではなく、事業を成立させるために不可欠な前提を、それぞれの水準から確認する試みであった。

次回は、これらの問いに対して、佐倉市の事前計画の段階で、実際にどの水準まで検討されていたのかを、計画文書や答弁の記述を手がかりに具体的に確認していく。そのうえで、なぜマーケティングや生活環境といった成立条件が、計画の中核に置かれにくいのかという点について、構造的に考えてみたい。