1. 金融機関の付加価値
この記事では、経済主体としての金融機関がどれくらいの付加価値を生み出しているのか、国際比較を通じて確認していきます。
経済統計においては、家計、企業(非金融法人企業)、政府(一般政府)、金融機関、対家計民間非営利団体(病院など)、海外の6つの経済主体(制度部門)に分けて、部門別の集計値として扱われます。
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家計は、私たち国民を総称したもので、主に労働者として労働力を提供し付加価値を生み出し、その対価を受取り、消費者として消費活動を行います。
個人事業主としての生産活動も含まれる他、持ち家を自分自身に貸す不動産業を営むという扱われ方もします。
企業は、労働者や資本(固定資産など)を活用して、モノやサービスなどの付加価値を生み出し、家計や政府に分配します。
更に生産能力を上げるために、投資も行います。
一般には、金融機関以外の企業全体を指し、公的企業も含まれます。
政府は、税金や社会負担などを受取り、社会給付などの再分配を行うことで、格差・貧困を解消するなど調整役を担う主体です。
中央政府、地方政府、社会保障基金で構成されます。
金融機関は、資金の融通をするのが主な役割で、民間金融機関と公的金融機関が含まれます。
金融機関は本来融資などを通じて借り手に資金を貸し出す事で、新しくお金を生み出す(信用創造)担い手でもあります。
金融機関の稼ぐ付加価値とは、このような金融取引における手数料などが該当します。
金融資本主義などとも言われますが、金融機関自体の稼ぎとはどの程度なのでしょうか。
まずは、日本の状況から確認していきましょう。
図1 付加価値 固定資本減耗 金融機関 日本
(OECD Data Explorerより)
金融機関の稼ぐ付加価値は、2023年で28.7兆円です。
GDPの5%程度を金融機関が稼いでいる事になります。
2000年代初頭には30兆円を超えていましたが、リーマンショックで急激に減少した後は停滞傾向が続き、ここ数年で上昇傾向となっています。
リーマンショックの影響が、特に金融機関において大きかった事が良くわかりますね。
固定資産の損耗分となる固定資本減耗は、2.8兆円で付加価値に占める割合は10%程度でかなり低い水準となります。
また、経済主体としての金融機関の付加価値は、製造業や建設業など経済活動別に見た時の金融・保険業の国内総生産と完全に一致しています。
2. 1人あたりの推移
ここからは日本の金融機関が稼ぐ付加価値がどれだけ多いのか、国際比較をしていきましょう。
まずは、人口1人あたりのドル換算値で、金額としてどれだけ金融機関が稼いでいるのかを可視化してみます。
図2 付加価値(総) 1人あたり 金融機関
(OECD Data Explorerより)
図2は金融機関の付加価値を人口で割った1人あたりの水準(為替レート換算値)です。
日本は1990年代に相対的に高い水準に達した後は横ばい傾向が続き、近年ではドイツやフランスと同程度です。
アメリカが高い水準ですが、近年停滞気味ながらもイギリスの水準が高い事も特徴的ですね。
3. 1人あたりの国際比較
人口1人あたりの水準について、OECD全体での国際比較をしてみましょう。
図3 付加価値(総) 1人あたり 金融機関 2023年
(OECD Data Explorerより)
図3が人口1人あたりの金融機関の付加価値について、OECD33か国で国際比較したグラフです。
日本は1,641ドルで、OECD33か国中19位です。
日本は多くの指標でOECD中20位台と低い水準が多いのですが、金融機関の稼ぎは中程度と相対的に多い方になりそうです。
イタリア、ドイツともそれほど差がありません。
ルクセンブルク、スイス、アイルランドと共に、アメリカ、イギリスがかなり高い水準となっていますね。
4. 対GDP比の推移
もう一つの国際比較として、対GDP比も確認していきましょう。
GDPの中で金融機関の稼ぎの割合という意味になります。
図4 付加価値(総) 対GDP比 金融機関
(OECD Data Explorerより)
図4は金融機関の付加価値について、対GDP比を計算した結果です。
イギリス、アメリカは7%前後と金融機関の占める割合が相対的に高い事がわかります。
日本は2000年代にイギリスと同じくらいになるタイミングも有りましたが、その後はやや低下していて、当時よりも金融機関の存在感が低下しているようです。
ただし、ドイツやフランスよりもやや高い水準が維持されています。
多くの指標で、アメリカ、イギリスとドイツ、フランスで異なる傾向となりますが、この指標でも傾向が分かれているのが興味深いですね。
5. 対GDP比の国際比較
最後に対GDP比の国際比較です。
図5 付加価値(総) 対GDP比 金融機関 2023年
(OECD Data Explorerより)
図5がOECD33か国中での国際比較です。
ルクセンブルクが21.3%と凄まじい水準に達しているのが印象的ですね。
GDPの2割以上を金融機関が稼ぎ出している事になります。
続いてスイス、イギリス、アメリカが高い水準となります。
ドイツ、フランスは先進国ではかなり低い水準で、日本は4.8%と33か国中16番目と中間的です。
金融機関の存在感としては、先進国の中では標準的と言えそうですね。
6. 金融機関の付加価値の特徴
この記事では、経済主体のうち金融機関の稼ぐ付加価値について、国際比較をしてみました。
イギリス、アメリカなど金融が強い国というイメージの国はやはり、金融機関の存在感が相対的に強い事がデータでも確認できたと思います。
ドイツ、フランスは先進国の中でも比較的金融機関の存在感が小さく、日本は標準的と言えそうです。
日本の金融機関の付加価値は一時期よりも低下していますが、近年は上昇傾向に転じていますので、今後は更に増加していく可能性も高そうです。
金融機関の付加価値は、融資などの金融取引が活発になるほど増えやすいはずですので、今後は経済活動の活発化に伴って増えていくかもしれませんね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2026年1月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。