現代人は「靴よりスマホ」で相手を値踏みする

黒坂岳央です。

かつて、人の身なりを推し量る指標は「足元」にあった。

「相手の靴を見て身分を値踏みする」という行為は、単なる成金趣味ではなく、その人の社会的な立ち位置や几帳面さを測る一定の合理性を持っていた。

だが、現代においてその指標は、もはや「足元」にはない。今、我々が最も凝視すべきは、相手がデスクに置いた「スマホ」の状態である。

これは筆者の持論だが、現代人は靴ではなく、スマホをチェックする。実際、相手のスマホからその人のことが色々見えてくる。

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「靴」が指標たり得た時代

一昔前、社会を登るルートは極めて限定的だった。同じような教育を受け、似たような価値観を持つコミュニティの中では、手入れの行き届いた高級な革靴を履くことが「共通言語」として機能した。

靴を磨く余裕があるか、良質なものを見極める目があるかが、信頼の担保となっていたのである。

ところが現代は、価値観が過剰に多様化している。資産家がスニーカーを履き、若者がレンタルや中古のハイブランドを身に纏う。服装のカジュアル化が進んだ結果、靴だけではその人の真の経済力や仕事の質を判断することが困難になった。

むしろ、自身の所得水準に満足できないが、押さえきれない承認欲求を爆発させる人ほど、ブランド物でゴテゴテに着飾るという逆転現象すら起きている。

筆者は経済的に余裕がない会社員の頃の方が、見栄で高い革靴を履いていた。独立した今は動きやすさを重視して、スニーカーばかり履いている。もちろん、TPOをわきまえて子供の入学式など、どうしてもスーツと革靴が必要な時はレンタルで対応している。このように自分の肌感覚からも、靴だけでは相手のステータスはわかりにくい。

もちろん、靴に泥がついたまま放置するなどは論外で、きれいに保つ努力をする人は「几帳面」ということは伝わる。もはや靴だけ見て相手のステータスを測る不文律は「一昔前に有効だった手法」になりつつある。

「割れた画面」が語るリスク管理能力

筆者が「靴よりスマホ」と考える最大の理由は、スマホが単なる装飾品ではなく、現代における「生存と仕事の必須道具」だからだ。

例えば、画面がバキバキに割れたままスマホを使い続けているビジネスパーソンがいる。これは、単に「物を大事にしていない」という話に留まらない。

スマホが割れているということは、壊れることを想定したケースなどの保護を施していない、あるいは落とすという不注意への対策が甘いという感覚がある。また、毎日何度も目にする「破損」という不快な状態を放置できる精神性も見えてくる。

もちろん、不運にも落としてしまうことは誰にでもある。問題は「割れたこと」それ自体よりも、「割れたまま使い続ける」という判断にある。この判断に、その人の仕事に対する詰めの甘さや、危機管理能力の欠如が露呈する。

ただあまりえらそうなことは言えないのは、筆者自身、昔はこういうところにむとんちゃくだった。胸ポケットにスマホを入れると屈んだ時に滑り落て画面を割る、という経験は何度もやった。

だが今は非常に気をつけて使っている。現行ではiPhone17Proの最新機種を使っているが、保護ケースに入れて今のところは一度も床に落としていない。PCやその他、仕事用ガジェットは非常に気をつけて使っている。

自分がすごく気をつけて使っている分、他者のガジェットの状態が前より目に入るようになってしまったのだ。このように決して人に説教などできる立場にないが、自分が気を使っている部分を他人がどうしているかは気になるもの。現代人は誰もがスマホを使うので、スマホでその人の思考や価値観がわかる、という話につながるわけだ。

偽造スマホがない日本

さらに、日本国内におけるiPhoneなどのスマートフォンは、靴や時計に比べて「誤魔化し」が効きにくい。

ハイブランドの靴には精巧な偽物が存在するし、見栄を張るためのレンタルサービスも充実している。しかし、スマートフォンの最新機種やその挙動、OSのバージョンに偽物はほぼ存在しない。新興国では新型iPhoneを見せると偽物を疑われることもあるが、少なくとも日本のビジネス圏において、偽のiPhoneは一般的でない。

つまり、スマホは靴よりも遥かに「その人の現在地」を正確に、かつリアルタイムに指し示すデバイスなのである。

かつての紳士が、出かける前に鏡の前で靴を磨いたように、現代のビジネスパーソンは、自分のスマホの状態に自覚的であるべきだ。画面がバキバキに割れた最新機種を使うくらいなら、小綺麗な旧機種を使う方が少なくとも相手への印象はいい。

「足元を見る」という言葉は、かつての旅人が履き古したわらじを見て、その疲れ具合や足元の弱みに付け込んだことに由来するという説がある。現代は「手元を見る」に変わっているだろう。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。