「頑張れば報われる」という呪い

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正直に言う。「頑張れば報われる」という言葉が、昔から嫌いだった。いや、嫌いというか、信じられなかった。だって周りを見ればわかるだろう。頑張っている人ほど疲弊して、要領のいい奴がうまくやっている。これ、みんな気づいているのに言わないだけじゃないのか。

1分で幸福に満たされる 巡りの法則」(渡邉有優美 著)徳間書店

先日、ある本の原稿を読んだ。ヨガ講師として20年以上活動し、ギネス世界記録にまで挑戦した女性が書いたものだ。彼女はこう言っていた。

「頑張れば幸せになるのではない。巡れば、すべてがととのう」

最初は「また自己啓発か」と思った。正直に言えば。でも読み進めるうちに、ちょっと待てよ、と。

「耐えるモード」の人間が多すぎる

彼女いわく、現代人の多くは人生が「耐えるモード」になっているらしい。休んだらおいていかれる。弱音を吐いたら迷惑をかける。人に頼るくらいなら自分でやる。休むより頑張るほうが安全——。

これ、身に覚えがありすぎて困る。

というか、日本人の8割くらいこれじゃないか。電車の中で死んだ目をしているサラリーマン。コンビニで疲れ切った顔でコーヒーを買うOL。みんな頑張っている。頑張りすぎている。

で、結果どうなるか。体は重い。心はざわつく。眠りは浅い。人間関係はしんどい。金も時間も気持ちも涸れていく。

優しさのつもりが自己犠牲に変わっている。本人は気づいていない。いや、薄々気づいているけど認めたくない。認めたら今までの頑張りが無駄になる気がするから。

「努力不足」じゃなくて「巡り不足」

彼女の主張で面白かったのは、「苦しい人生=努力不足」ではなく「巡り不足」だという視点だ。

人の人生には本来「巡り」が備わっている。吸って、吐く。緊張して、緩む。受け取って、与える。動いて、休む。入って、出る。

この循環が止まった瞬間から、苦しさが始まる。

言われてみれば当たり前の話だ。でも私たちは「吸う」ばかりで「吐く」ことを忘れている。「動く」ばかりで「休む」ことを悪だと思っている。

巡りが止まるとどうなるか。背中が丸くなる。呼吸が浅くなる。血流が滞る。冷える。むくむ。生きているだけで疲れる体になる。

そこへ「もっと頑張らなきゃ」と追い打ちをかける。

で、どうすれば巡りを取り戻せるのか。

答えは拍子抜けするほどシンプルだった。1分でいい。たった1分、呼吸をととのえるだけ。

でも彼女自身、床にうつ伏せで動けなくなった日に、ほんの1分呼吸をととのえただけで体が軽くなったという。その1分が人生を変えたと。

胡散臭い? まあ、そう思うのも無理はない。

ただ、考えてみてほしい。私たちは1分すら自分のために使っていない。朝起きた瞬間からスマホを見て、通勤中もSNSをスクロールして、仕事中は息つく暇もなく、帰宅後は疲れてNetflixを垂れ流す。

1分、呼吸に集中する。それすらできないほど、私たちは追い詰められている。

結局、何が言いたいのか

正直、この話をどう受け止めるかは人それぞれだと思う。「また意識高い系か」と切り捨てるのも自由だ。

試す価値くらいは、あると思う。知らんけど。

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

<書籍評価レポート>

■ 採点結果
【基礎点】 40点/50点(テーマ12点、論理構造10点、完成度9点、訴求力9点)
【技術点】 20点/25点(文章技術10点、構成技術10点)
【内容点】 20点/25点(独創性10点、説得性10点)

■ 最終スコア 【80点/100点】

■ 評価ランク ★★★☆(水準以上の良書)

■ 評価の根拠

【高評価ポイント】

✓ 著者体験の説得力:ギネス世界記録挑戦、シングルマザーとしての苦闘、床で動けなくなった実体験など、著者自身の生々しいエピソードが論の土台となっており、机上の空論に終わっていない。

✓ テーマの普遍性:「耐えるモード」の現代人、「頑張っても報われない」感覚など、多くの読者が共感できる問題設定がなされている。

【課題・改善点】

✓ 既視感:「自己啓発本にありがちな展開」「よくある話」という印象を与える部分があり、類書との差別化において課題が残る。

✓ 科学的根拠の希薄さ:「1分で体が軽くなった」という主張に対し、「胡散臭い」という初見の印象が示す通り、医学的・科学的なエビデンスの補強があればより説得力が増したと考えられる。

■ 総評

本書は「頑張れば報われる」という社会通念に疑問を投げかけ、「巡り」という循環の概念から人生を捉え直す一冊である。著者自身のギネス挑戦やシングルマザーとしての経験が説得力を担保しており、「1分」という実践可能な具体策を提示している点は評価できる。一方で、スピリチュアル的な表現や自己啓発書としての既視感は、読者によって好みが分かれるところだろう。

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