SNS上では、保守系の人たちが「ベネズエラでは民衆が歓喜の声を上げ街頭に出ている」などと触れ回っているが、そんなことはまったく起きておらず、ヨーロッパのテレビ各局でも、米国による今回の政変を歓迎する動きはほとんど見られないと伝えている。歓迎しているのは、欧米に逃げ出した富裕層の人たちだ。
逆にウォール・ストリート・ジャーナルによると、CIAは暫定統治を担う指導者に誰が最も望ましいかについて分析し、ノーベル平和賞を受賞したマチャド氏ら野党の指導者では、国内のさまざまな勢力から抵抗を受け、暫定政権を主導するのは困難だと結論づけ、副大統領のロドリゲス氏らマドゥロ政権の高官3人の名前を挙げたという。
トランプはこれを受け、マドゥロ氏を拘束した後、マチャド氏を支持せず、交渉相手としてロドリゲス氏を選んだ。
トランプ大統領 ホワイトハウスXより
それどころか、トランプは記者団に対し「中国は引き続きベネズエラの石油にアクセスできる」「我々は石油をもっと大量に売ることになるだろう」と述べている。
うっかりすると、トランプはベネズエラで中国をビジネスパートナーにするかもしれない。ベネズエラの石油産業の再建には、莫大な資金やエンジニア、労働者がいる。米中連合は意外に正解かもしれない。戦前の日本に対してもそうだが、米国は「俺にも儲けをよこせ」という外交をよくやる。
ベネズエラは貧富の差が大きく、産油国としての恩恵が貧困層に行き渡らなかったため、チャベス革命が1999年に起き、2014年にチャベスが死ぬまでは、一応成功した革命だった。とくにキューバの協力で医療を充実させ、歓迎された。また、チャベスはアンチ植民地主義のヒーローでもあった。スペインのフアン・カルロス国王と国際会議で喧嘩をしたこともある。
ところが、革命の賞味期限が切れたところでマドゥロが大統領になり、米国とベネズエラが歩み寄ればよいものを、そうならなかったため、米国も失うものが多かったが、ベネズエラは経済不振に陥った。そこで中国に接近したり、不正選挙を行ったりといった状況だった。その意味では、ベネズエラ人にとっては、マドゥロ抜きのチャベス派体制は悪くないともいえる。
ところで、トランプのベネズエラへの攻撃は中国が標的だという見方は、日本のネットやマスメディアでは多いが、外信ではそれほど見られない。もちろん、ベネズエラと中国が接近していたため、皆無ではないが、主たる要因ではない。欧米やアジアの英語圏などでも同様で、日本の「ネットに主たる活躍の場を見いだす極右ポピュリスト系の人々」や、それと類似の思考法の人たち特有の陰謀論的解釈ではないかと思う。世界中が中国を嫌っており、また中国はもうだめだなどと思っているのは、日本人だけだ。
■
【関連記事】