不正問題と現代社会の関係:原子力規制委員会が必要以上に厳罰に処する意味

年初からまた嫌な報道です。中部電力浜岡原発の地震の評価方法が前提と違い、都合の良いデータを使っていたことが発覚しました。中部電力は原発の再稼働で後れを取っており、焦っていた中でのこの報道で再稼働は当面無理という烙印を押されてしまいました。

中部電力 浜岡原子力発電所 Wikipediaより

早速始まった謝罪文化は2026年も変わらないということでしょうか?

何故都合の良いデータを使ったのか、そのあたりは更なる調査の報告を待つしかないと思いますが、ごく一部の人がやったことであり、大々的な組織犯として不正なデータを利用したという性格の問題ではないと考えています。一人か、あるいは数名程度の規模だと思います。その点では過去に数えきれないほどの不正問題が生じていますが、その流れとほぼ変わらないと思います。

しかし、ほんの出来心に近い使用データの誤りで中電の原発再稼働は何年も先送りされることによる経済的損失は誰が負うのでしょうか?私は中電というより中電から電力を供給されているエリアの方々ではないかと思うのです。原発再稼働が当面ないことで若干高い電気代を何年も払い続けることになります。原発再稼働による電気代節約効果が仮に住宅一戸当たり月100円に満たないとしても積もり積もれば相当の額になるのです。

その点では昨年のニデックの不正問題は同社がBtoBの企業だけに一般消費者や企業取引での影響は少なかったと思います。かつてトヨタやダイハツで起きた不正についても同社製自動車を買う人には影響があったかもしれませんが、主たる損失は企業側にあったと思います。そのような比較をしても中電の今回の不正問題は地域全体に有無を言わさず影響を与える点で大きな問題だと言えましょう。

では原子力規制員会はどういう態度を示すのでしょうか?東電の柏崎刈羽原発の再稼働に向けたプロセスも難航に次ぐ難航でようやく再稼働にこぎつけるわけですが、規制委員会は権限を持って厳しいペナルティを電力会社に付保することを当たり前としている点が私には今一つよくわからないのです。

電力会社側は会社として意図して不正をしたわけではなく、ごく一部の担当者のミスないしズルであり、それが見抜けなかった組織の仕組みに問題があるにはあるのですが、権力者である規制委員会が必要以上に厳罰に処する意味が分からないのです。本質的には規制委員会は原発再稼働を審査することが使命ですが、不正ないし不具合が見つかった場合、鬼の首を取ったような行動に出るより、電力会社側になぜそういうことが生じたか、本質的な原因を究明し、修正していくべきだと思います。つまり電力会社と規制委員会あるある意味、共にあるべきで、厳格さと共に寄り添うことも必要だと思うのです。ですが、監督、監視という名の上から目線がより高いプレッシャーを電力会社に出し、会社側は末端の社員に至るまで「何が何でも完璧」とストレスを与え続けるのです。これぞまさに真のストレステストで日本的な着想だと思うのです。

日本は恐ろしいほどのマニュアル文化が進んでしまった国です。もともとは移民が多く、国土も大きく文化習慣がバラバラなアメリカで生まれたのがマニュアルです。アメリカのどの店でも同じ味のマクドナルドやスタバが飲めるようにしたのがマニュアル文化の根本思想とも言えます。ところがほぼ単一民族の日本もそれを導入し、それが本国アメリカ以上に普及してしまいました。

従業員という言葉は字の通り「業に従う社員、雇員」という意味ですが、これが今では「マニュアルに従う社員、雇員」になってしまったのです。「業」という意味は広く、普通は会社の組成や目的、社会とどう共生するかといった歴史や枠組みをもって社員の仕事が成り立っているのです。ところが今の「業」はマニュアル通りならば今日からでも作業できるので愛社精神もいらないし、自分がなぜその業務をしているのか意識することなしに「言われたことだけをする」という人が主流だと思うのです。

つまり後を絶たない不正の本質は「業」の基本的部分が一部の従業員に足りないのではないでしょうか?特にコロナの際に在宅オンライン勤務が普及したことは組織に所属し、目的意識やチームワークという本来あるべき結束力とコミュニケーション力が欠落した可能性はあります。

ところで不正は日本ではなじみの言葉ですが、何をもって不正とするのでしょうか?一般には製造工程、作業工程において会社の設定したプロセスに準拠していないことを意図的、意識的に行うことだと思います。それがバレるかバレないかは検査工程がある場合に限るわけで、さもなければ製品そのものに明白な不具合が生じなければわからないとも言えるのです。

私は建設会社に勤めていたのでその昔いわゆる手抜き工事というのは時折耳にしておりました。あの手抜きはどうやって発覚するかと言えば何か、問題が生じた時に調べてみたら本来使うべきものが使われていなかったことがわかってしまうわけです。つまり事故や問題が起きず発覚を免れている不正はたぶん世の中ものすごく多いのだと想像します。昔の手抜きは業者が儲けるために指定の部材を使わないことが理由でした。香港の火事の調査はまだ出ていませんが、あのグリーンのネットは怪しいのにも関わらず何十年も使い続けて初めて発覚したとも言えます。

現在の不正は一部の従業員による手抜きやズルであり、不正の性格は変わってきていると思います。

経営者がプレッシャーを出すのも原子力規制委員会がプレッシャーを出すのも同類で、現代社会ではその厳しさに耐えられない従業員が増えている点は経営側が着目すべきことではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年1月7日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。