(前回:佐倉ふるさと広場拡張整備計画を問う②:来場者数47万人はどのように作られたのか)
47万人という数字の正体
前章では、ふるさと広場の「現在の来場者数」28万人が、実測値ではなく、売店「佐蘭花」の購買率を20%と仮定して逆算した推計値にすぎないことを示した。
現地の利用状況から見ても、購買者が来場者の20%に達しているとは考えにくく、実測すれば現在の来場者数は28万人を大きく上回る可能性が高い。
一方、「拡張整備後の来場者予測」47万人の算出式は、
交通量 × 10%(立ち寄り率) × 1.7(乗車人数)+ イベント来場者
という単純な構造である。しかし、この式を支える前提条件は、いずれも根拠が示されていない。
- 交通量は7月のイベント時休日1日の12時間調査に依存
- そのデータを平日・休日の「日常利用」にどう補正したか不明
- 立ち寄り率10%の根拠が不明
- 乗車人数1.7人の根拠も不明
- イベント来場者との重複整理も不明
つまり、47万人という数字は「実測」ではなく、「仮定の積み重ね」によって作られた数字にすぎない。
それにもかかわらず、市は
47万人 − 28万人 = 19万人増
という「増加分」を、20億円超の市財源を投入する根拠として扱っている。
この「19万人増」は、実測値でもなければ、検証可能な予測値でもない。単なる仮定の差分である。
「精密な数字」の錯覚
さらに問題なのは、この不確かな前提の上に、あたかも実測したかのような「精密な数字」が積み上げられている点だ。
計画書には次のような表が掲載されている。
- 平日日常利用:143,204人
- 休日日常利用:122,980人
- 日常利用計:266,184人
- イベント計:202,592人
- 合計:468,776人(≒47万人)
一見すると緻密な観測データに基づく予測に見える。しかし実態は、根拠不明の前提値を日数で積算しただけの算数である。
入力条件の妥当性、補正の論理、再現性、市民による検証可能性――そのすべてが欠けている。それでも結果の数字だけが「確定値」のように扱われ、施設規模、動線設計、交通対策、財政投入額を拘束している。
これは需要予測ではない。仮定に基づく「数字の装飾」だ。
マーケティングが存在しない計画
本来、来場者予測とは、単なる交通量の積算では成立しない。
誰を主要な顧客と想定するのか。
その顧客が、なぜ、どのような手段で訪れるのか。
その行動特性に対して、どの施策で何%を獲得するのか。
こうしたマーケティング上の仮説の積み重ねによって、初めて需要予測は成立する。
この仮説が存在しなければ、来場者数とは「将来の需要予測」ではなく、単なる願望の数字にすぎない。需要の構造が定義されていない数字は、検証も修正も不可能であり、政策判断の指標として機能しない。
ターゲティングと計画の断絶
佐倉市の観光事業の最上位計画である観光グランドデザインでは、「明確なターゲット戦略」の章で、佐倉市の観光ターゲットとして
「町の隣」:近隣市町村 約160万人
「都心の隣」:都内在住・在勤・在学者
「成田空港の隣」:訪日外国人
の三層が示されている。
これらは単なるキャッチコピーではない。どの層を重点ターゲットに設定するかによって、拡張整備の設計思想そのものが決まる。
例えば、訪日外国人を重点対象とするなら、多言語対応、国際的な情報環境への接続、成田空港や都心部からの動線設計、ツアー行程への組み込みやすさなどが、施設配置やサービス設計の前提条件となる。
また「都心の隣」を主軸に据えるのであれば、実際には自家用車利用が多くなると想定されるが、だからこそ、鉄道で来ること自体が選択したくなるような魅力的な動線設計、駅からの回遊性、都市型観光としての体験設計を組み込むことで、交通渋滞の緩和、環境負荷の低減、周辺市街地の活性化につなげるという政策判断が成立しうる。
しかし、そのような思想が、今回の拡張整備計画のどこにも読み取れない。
私の質問に対し都市部長は、「ターゲットごとの来場者数の算定は行っていない」と答弁した。
つまり市は、需要構造を定義しないまま、施設規模、配置、動線、交通対策を決め、47万人という数字だけを先に固定して公共投資を正当化しているのである。
数字が政策を支配している
問題の本質は、こうした検証不能な数字が、20億円超の公共投資判断の根拠として機能してしまっている点にある。
本来、需要予測は、
現況の把握
変化の仮説
その検証
という三段階を踏む必要がある。しかし佐倉市の「47万人」は、そのいずれも満たしていない。
これは将来を示す指標ではなく、計画を正当化するために後付けされた数字である。
結論:政策評価の出発点を欠いている
以上を整理すると、47万人という数値は、
実測に基づかず
仮定に依存し
ターゲット戦略とも結びつかず
検証可能なモデルにもなっていない
にもかかわらず、20億円超の公共投資の根拠として扱われている。
この時点で、佐倉ふるさと広場拡張整備事業は、政策評価の出発点そのものを欠いている。これは計画の成否以前に、公共政策としての成立条件を満たしていない。
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