国際援助団体「オープン・ドアーズ」が14日、「2026年度版ワールド・ウォッチ・リスト」を発表した。それによると世界中で3億8,800万人のキリスト教徒が、信仰ゆえに深刻な迫害や差別を受けている。報告書によれば、世界中で昨年、4,849人のキリスト教徒が信仰を実践したために殺害された。前年より犠牲者は約400人減少した。ナイジェリアだけでも反キリスト教徒による暴力の犠牲者は3,490人に上り、イスラム過激派が特に北部で攻撃や虐殺を繰り返している。
北朝鮮を除くと、キリスト教徒への迫害が最も深刻な10カ国は、主にイスラム教徒が居住する国だ。特に、サハラ以南アフリカの状況は悪化している。中国(17位)でも、政府は圧力を強めている。新たな規制により、聖職者のあらゆるオンライン活動が規制されている。北朝鮮は2023年以来、4年連続「キリスト教徒弾圧国」1位だ(調査機関2024年10月1日~25年9月30日)。

1993年以来毎年作成されている「ワールド・ウォッチ・リスト」には、キリスト教徒が生活し、信仰を告白することが最も危険な50カ国が掲載されている。
以下、キリスト教徒迫害が最悪の北朝鮮について、報告書から総括する。
20世紀初頭、平壌で大きな復興が始まり、北朝鮮の首都は「東のエルサレム」として知られた。数百もの教会が設立され、宣教師たちは全国に教育機関を開設した。第2次世界大戦での日本の敗戦後、金日成が権力を握り、共産主義(無神論)政権を樹立した。朝鮮戦争(1950~1953年)の間、多くのキリスト教徒が国外に逃れた。戦後、数万人のキリスト教徒が殺害、投獄、あるいは辺境地への追放を受け、残りのキリスト教徒コミュニティは地下に潜った。
現在義務付けられている国教は、いわゆる「金日成主義」と「主体思想」だ。主体思想は基本的に人間は自給自足であり、自分自身にのみ頼るべきであると説いている。すべての国民は毎週「自己批判」のセッションに出席し、100ページ以上に及ぶ思想資料を暗記しなければならない。儒教の影響を受けた北朝鮮は、「成分」と呼ばれる社会階層分け制度を発展させ、すべての国民を3つの階層に分類している。「中核」(社会の28%)、動揺層(45%)、敵対層(27%)だ。キリスト教徒とその子孫は「敵対層」に分類される。キリスト教は、撲滅すべき危険な異宗教と見なされている。
「オープン・ドアーズ」は、数万人のキリスト教徒が強制労働収容所に収容されていると推定している。2020年の国連報告書によると、強制収容所では女性に対する人権侵害が日常茶飯事で行われ、性的暴力、強制裸体化、レイプ、強制中絶などが含まれる。
「オープン・ドアーズ」は、北朝鮮のキリスト教徒の数を約40万人(人口1.5%)と推定している。そのほか、イスラム教徒2,669人(<0.1%)、仏教徒405,306人(1.5%)、民族宗教信者3194,008人(12.1%)、無神論者4052,070人(15.4%)、不可知論者14901,417人(56.6%)、その他3364,830人(11.8%)だ(出典:世界キリスト教データベース、一部はオープン・ドアーズの推定値を基に作成)。
北朝鮮の秘密警察と中国警察の協力により、北朝鮮から逃亡した人々(主に女性)の身元確認と強制送還が増加している。これは、中国で使用されている顔認識技術によってさらに促進されている。現在、北朝鮮は農業生産の減少と食糧配給システムの不備により、深刻な食糧不足に陥っている。
北朝鮮では、平壌にある公式教会での礼拝を除き、すべての教会活動は違法。公式教会での礼拝は観光客が連れて行かれ、同国における信教の自由の「証」となることになっている。政権は、キリスト教団体の指導者を特定し、処罰し、そのネットワークの他の構成員について尋問することに主眼を置いている。観光客は入国時と出国時に手荷物検査を受け、個人使用の聖書を1冊のみ持参でき、北朝鮮国内に置き忘れないように厳重に監視される。
キリスト教関連資料の輸入と制作は禁止されている。韓国統一研究院が発行した「北朝鮮人権状況白書2021」によると、聖書を所持しているだけで公開処刑されるケースが増えている。聖書の配布は所持よりもさらに厳しく処罰される。北朝鮮の住民は政府の許可なしに出国できないため、海外で開催される他のキリスト教徒との会議や会合に参加することはできない。
なお、「オープン・ドアーズ」の「2026年度ワールド・ウォッチ・リスト」によると、キリスト教迫害トップ10は①北朝鮮、②ソマリア、③イエメン、④スーダン、⑤エリトリア、⑥シリア、⑦ナイジェリア、⑧パキスタン、⑨リビア、⑩イランとなっている。

金正恩総書記 北朝鮮HPより 2026年1月
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年1月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






