造船ニッポンの幻影信仰は経済メディアのせい

最近政府が造船業にテコ入れしようというので、造船関連の記事が日経でも増えている。ですが、以前はほとんど報道がなかった。それは首位の今治と常石が非上場企業で、株式相場に関係ないからです。そして多くの日本人は苦境に立ってきた造船業界の実態を知らずに、80年代までの世界で大きなシェアを取ってきた「造船大国ニッポン」のイメージしかない。

だからそれを基準に議論をするから実態が見えてこない。

造船は言うまでもなく労働集約産業であり、国内ではその労働力が少子高齢化で減り続けている。夢をもう一度と言っても大きな制約がある。

であれば時代に合ったアプローチをしないといけないが、政治家たちは「造船大国ニッポン」の幻影を追い求めている。

その意味で日経は経済新聞ではなく、株式新聞に過ぎない。

造船ニッポン それぞれの針路(上)常石アジア進出、中韓に対抗 東ティモールに初のドック 設計人材1000人、海越え連携

国内大手の常石造船は独自の戦略で生き残りを目指している。昨年にフィリピンなどに次ぎ東ティモールでの造船所建設を発表、海外シフトを急ぐ。人材不足や鋼材価格高騰などで国内で採算をあげるのは難しい。

常石造船は1994年にフィリピンに進出し、その後、2003年に中国にも進出した。安価な労働力に注目して、東ティモールへの進出も決めた。27年に操業を目指しており、将来的に年10隻規模を目指すという。

東ティモールは造船業がなく一からドックを立ち上げる初の試みだ。フィリピンや中国でも拠点を立ち上げたノウハウを生かし、ドックを設ける。「東ティモールは平均年齢が低くアジアでも最貧国。穏やかで真面目な人の気質も造船に合うと見て進出を決めた」と奥村社長は説明する。

常石造船は常石工場(広島県福山市)を拠点に国内外で造船業を営む。海外拠点も合わせた建造量は209万総トン(24年)で世界10位の規模だ。国内勢では今治造船などに次ぐ大手だ。

常石造船が海外に進出したのはバブル経済の崩壊による需要減退や為替が大きく円高に振れたのがきっかけだ。フィリピンでは8000人、中国では4000人超の人材を抱える拠点に発展した。

その一方で国内拠点は縮小している。多度津造船(香川県多度津町)を14年に今治造船に売却した。慢性的な人手不足や中国や韓国に比べて高い資材価格、為替変動などで採算をとるのが厳しくなっている。奥村社長は「国内はじり貧。海外に出ていなかったら国内の造船所も続けられなかった」と振り返る。

人件費の高騰で常石工場はピークから4割減の稼働にとどめている。設備があってもフル稼働できない造船会社もあり、常石造船も例外ではない。そこで常石工場をマザー工場としてフィリピンなどから来た外国人の人材育成拠点としても活用している。

日本は中国などと比べると鋼材価格が2~3割高で、船価が中韓勢より割高になってしまう。海外に拠点を設ければ、日本より安い鋼材を調達しやすくなり、価格競争力をつけやすくなる。

常石工場では鋼材の曲げ具合を3Dで判定する技術や、RFIDタグで部品を管理する仕組みを取り入れる。常石工場で海外人材の研修をし、海外拠点にノウハウを広げていくやり方で生産性や品質を向上させている。

国内最大手の今治造船と三菱重工業が共同出資する次世代船舶の設計会社、MILES(マイルズ、東京・港)には「参加は考えていない」(同)という。

一方で25年3月には尾道造船とばら積み船の共同開発を発表した。次世代船への対応が必要になるなか、汎用船では他社との連携で設計開発費や鋼材などの調達コストを引き下げる。販路を拡大するためにもオリックスの船舶仲介会社に出資するなど、独自のグループを形成し始めた。

政府は35年までに建造量を現在のほぼ倍の1800万総トンにする目標を掲げ、基金設立など支援策をまとめている。

ジャパンマリンユナイテッド(JMU)を取りこんだ今治造船は発注者となる日本郵船など大手商船と次世代船開発を始める態勢を整えた。他の造船会社にも参画を呼びかけるなど、国内では規模や陣容で頭一つ抜け出している。常石造船も独自の生態系構築を急ぐが、中韓勢や今治造船連合との差は開きつつある。

今治にしろ常石にしろ、今後中国のカントリーリスクを考えざるを得ないでしょう。

既にご案内のように川重は中国に拠点を持っていますが、同じ部署で国内に潜水艦も作っています。

情報はきちんと遮断されているのか。かつて中国に新幹線技術を漏らしたり、エンジンの偽装や裏金問題などを見る限り怪しいとしか言いようがない。

例えば中国の拠点は売り払うことも必要かもしれない。特に海自の艦艇建造をするならなおさらです。その場合、若年人口が多い他の進出先が必要となるでしょう。例えばベトナムやトルコなどは有望ではないでしょうか。ベトナムはまだ人件費が安いし、トルコは既に造船業の発展が著しいし、工業の裾野も広い。UAEなども候補かもしれません。広く地域から人材を集められるし政府に金がある。

ともかく国内企業の再編を行う必要があります。政府が金を出してもいいですが、きちんとした認識がなければ捨て金になるでしょう。事業統廃合や省力化、無人化に関する投資など、本当に造船業界の体力向上につながる政策が必要だと思います。

過去の造船に関するブログの記事です。

2006年11月12日
【護衛艦建造もリストラ】活況の陰、再編の芽 日立造船の造船撤退
https://kiyotani.seesaa.net/article/200611article_11.html

2008年06月08日
非上場企業を軽視するメディアの産業情報は当てになるか?
https://kiyotani.seesaa.net/article/200806article_4.html

2010年02月14日
造船業の生き残りと経済メディアのあり方
https://kiyotani.seesaa.net/article/201002article_5.html

2013年04月22日
仏製揚陸艦、ミストラルの採用ってどうでしょうかね。
https://kiyotani.seesaa.net/article/201304article_10.html

2014年08月05日
日本はロシアの代わりに仏揚陸艦を購入せよ、は空理空論・我田引水
https://kiyotani.seesaa.net/article/201408article_1.html
2025年06月21日
国営造船所の前に潜水艦の事業統合だろ
https://kiyotani.seesaa.net/article/516483937.html

2025年06月22日
国立造船所は惨めな失敗をする バカは政策を提案するな
https://kiyotani.seesaa.net/article/516524173.html

日本の造船工場 Wikipediaより

■本日の市ヶ谷の噂■
既に本「本日の市ヶ谷の噂」で報じた通り、本邦でもITLS High Thret コースが今年の1月と11月に防衛医科大学校附属病院 清住哲郎教授主催で開催され星条旗新聞の取材を受けたが、マスカジュアルティ事態を前提としたDomestic Violence、すなわち、秋葉原事件やフランス ニースでのトラックテロなどの国内の暴力事態を清住哲郎教授が家庭内暴力のDVと誤訳してしまったために傷病者が3人までの「家庭内暴力対応教育」になってしまった。繰りかえすが本来は、傷病者が5名以上同時発生する、国内で発生した暴力事件や暴動等の人為災害のこと。
清住哲郎教授が2回行ったHIgh Threat コースはアメリカ本部のITLS Providerコースに含まれるもので、アメリカの救急隊の恒常業務の範疇。本来のHIgh Threatコースから大きく乖離している。そして本来大量傷病者発生を前提とする講習で本当に夫婦喧嘩のシナリオがあり、関係失笑を買っている、との噂。

大人の事情で商業媒体に掲載されなかった記事を、Noteで有料公開します。

馬鹿が戦艦でやってくる!

Kindleで有料記事の公開を始めました。

いずも級、22DDHは駆逐艦に非ず。 (清谷防衛経済研究所) – 清谷信一
暴力装置 (清谷防衛経済研究所) – 清谷信一

東洋経済オンラインに寄稿しました。

拡大する防衛費を防衛省・自衛隊が適切に使えていない可能性。陸上自衛隊による、銃の調達や取り扱いから垣間見える「知識不足」の疑い
https://toyokeizai.net/articles/-/911653
ソニーグループが「隠れた防衛関連企業」といわれる理由、実は同社製のある汎用品がミサイルやドローンなどに欠かせないパーツになっていた
https://toyokeizai.net/articles/-/907817

過去の著作の電子版が発売になりました。
『ル・オタク フランスおたく物語』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DY1PJ1YL/
『弱者のための喧嘩術』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DY1L9SPW/


防衛破綻 – 清谷 信一


専守防衛 – 清谷 信一


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2026年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。