不動産事業者ドナルド トランプ氏はグリーンランドが欲しいと心底思っています。私は不動産が生業であり、その点はトランプ氏と似た価値観があります。そこに欲しい不動産があったら絶対に手に入れる、それが不動産事業者の魂とも言えます。「トランプ氏のグリーンランド取得意欲、本気かもよ」とこのブログで申し上げた時、多くの読者の方は「そんなアホな」と思ったでしょう。アホではありません。欲しいと思えばその取得方法を考えるだけの話です。なので氏が住民に金を配ると発言した時、私は内心「お主、やるな」と感心しておりました。不動産取引は真っ向勝負ではうまく行かないことも多く、トリッキーな手段は不動産業界でも時折みられ、不思議でも何でもありません。
このグリーンランド問題、トランプ氏の思いが成就するかどうかは未知数ですが、その奥に隠れている意味を考えてみたいと思います。
世論、特に欧州はアメリカのこの強引なまでのグリーンランド取得工作に「反対!」を述べていますが、この場合、欧州はほとんど関係ありません。この取引で必要な相手はデンマークとグリーンランドだけです。他国がどう言おうが関係ありません。むしろ周りが騒げばアメリカを刺激することになり、欧州の様々な枠組み、特にNATOに強く影響します。アメリカが「脱退する」といえばNATOは実質崩壊するわけでロシアの高笑いは見えています。というより、EUの構造上の弱点を突かれることにもなり、強くは出られないだろうと思うのです。
個人的にはデンマークがグリーンランドを放置しすぎたと思っています。1953年まで200年以上に渡り植民地にしてきたうえで1979年に自治領としました。ですが基本的にはデンマークからすれば「持っているけどグリーンランド運営は自治権に基づき、グリーンランドが自主的にやる」というわけです。デンマークがどれだけそこに力を注いできたか、と問われると苦しいのではないでしょうか?
ところでグリーンランドの西側にある小さな島を巡ってカナダと領有権争いがありました。カナダとグリーンランドの間にネアズ海峡というところがあり、国境間は18㌔しか離れていません。その間にあるハンス島という島の所有権をめぐりグリーンランドとカナダの間で長年争われてきました。1984年にカナダ軍がこの島に上陸しカナダの旗を立て、カナダのライウィスキーを置いたことからウィスキー戦争とも呼ばれています。長年揉めましたが、最終的に2022年にデンマークとカナダが分割領有することになったのです。ちっぽけな島を巡る話で誰も知らないようなディールですが、このストーリーは意味がある話になるかもしれません。
アメリカによるグリーンランドの取得アプローチは何通りかあると思います。完全所有、租借権、地上権、地役権がまずは思い浮かびます。また今回表向きは安全保障とされています。私がデンマーク側なら「安全保障に関する一定の地役権をアメリカに〇ドルで売る。一方、グリーンランドにあるであろう地下資源をアメリカが将来、開発したければ開発する第一優先権を提供するが、デンマークとグリーンランド双方がその権益の〇%を得る。またアメリカはグリーンランド活性化のために年間〇ドルを投資しなくてはいけない」という条件闘争をします。つまりトランプディールに対してディールでお返しするのです。トランプ氏は欲しくてしょうがないのですから、それぐらいのディールは飲むでしょう。反対とか、賛成というバトルではもはや、らちが明かないのです。時代は動くのです。ならばそれに即した対応をとるだけです。
ところでブログのタイトルに「他人事ではない」とつけたのは理由があります。つい去年までは国土を売買することが今の時代に起こりえるとは思っていなかったと思います。ですが、トランプ氏はその常識を打ち破ろうとしているのです。多分、ウクライナディールをみてその機運が出てきたような気がします。これは日本にとって戦慄すべき事態なのです。理由は日本は島国でおもちゃ箱をひっくり返したように島だらけなのにその防備は希薄である言わざるを得ないからです。
産経に「あと9年で『日本なくなる』? 外国人土地取得規制強化で済む話でない、過疎現状直視しろ」という客員編集委員記事があります。内容は外国人よる重要な国内土地取得が相次ぎ、国防を含め、非常に危機的な状況にあるという話です。特に山口県周防大島町の笠佐島の一部、3651㎡が中国人に取得されたケースが紹介されています。同島は「近くに米軍岩国基地や海上自衛隊呉基地、伊方原発があり、島の真上を戦闘機が飛行する」位置関係であり、「護衛艦の入出港が分かる音紋を捉えることも可能」な土地とあります。更に「中国には、有事の際に国内外を問わず、同胞(=中国人)が所有する土地や施設を政府が徴収できる国防動員法や情報工作活動に協力義務を課す国家情報法がある」と続きます。
トランプ大統領と高市早苗首相
まずいですよね。同様に対馬は韓国資本が島全域にわたり買取を進めているほか、五島列島、佐渡、礼文、利尻などを含む各地で外国資本が島を買収し続けているそうです。
もしもトランプ氏が新しい土地取得とその自治のルールを生み出した頃、日本は既に蝕まれた土地の多さにはたと気が付くのでしょう。その場合、どうするのでしょうか?笠左島など、中国政府が接収したら米軍や自衛隊の前に中国政府の所有する土地があり、突如対峙する事態が起きたということになるのです。笑い話にもなりません。
とにかく日本は今まであまりにも無防備だったと思います。言論の世界では両極論がぶつかり合うも結局議論だけで政府はほとんど何も実行しない流れでした。これはもう許されないのです。即座に厳しいルールに基づき、外国人による土地取得に厳しい制限をかけるべきでしょう。
不動産はわきが甘いと必ず付け込まれるようになっています。グリーンランドもデンマークのわきが甘かったからこうなったわけで自業自得とも言えるのです。一般世論とは見方が違うかもしれませんが、不動産と国家安全保障を論じるには良い機会を与えてくれたと思います。高市氏に頑張ってもらわねばなりません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年1月19日の記事より転載させていただきました。