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先日、久しぶりに会った知人の顔を見て驚いた。半年前より、明らかに若い。肌にツヤがある。目が違う。「何かあった?」と聞いたら、照れくさそうに笑って「まあ、ちょっとね」と。ああ、恋だな。すぐわかった。
今回の著者は、きずな出版社長の櫻井秀勲さん。82歳で起業し、90歳を超えたいまも社長業、執筆業を精力的に行っている。その櫻井さんが書いた恋愛論——これが、ただの恋愛論であるはずがない。
「60歳からの愛と運命 人生で一番優しい、最後の恋愛論」(櫻井秀勲 著)きずな出版
年齢とともに体が衰えるのは仕方ない——そう思って生きてきた。やせてくる。太ってくる。階段がきつい。人の名前が出てこない。「まあ、歳だから」が口癖になる。
でも待ってほしい。
同じ60代でも、妙に若々しい人がいる。70代でも背筋がピンとしている人がいる。
あれは何なのか。遺伝か? サプリか? 高い化粧品か?
違う。ときめきだ。
恋をしている人の体は、勝手に動き出す。「少し歩こう」「姿勢に気をつけよう」「今日は顔色がいいかも」——こういう意識が、無意識のうちに湧いてくる。筋肉や神経が、知らないうちに活性化していく。
知人の母親(78歳)が最近やたらと元気だという話を聞いた。週3回、公民館の囲碁サークルに通っているらしい。「お父さんより楽しそう」と知人は苦笑していたが、そりゃそうだろう。誰かに会う予定があるというのは、そういうことなのだ。
科学的な話をすれば、恋をしている人の脳内ではドーパミンやセロトニンが分泌される。前頭葉や海馬が刺激される。記憶力や判断力が向上する。まあ、そういうデータはある。
でも正直、そんな話はどうでもいい。
大事なのは、「何をしようとしたか忘れてしまう」「人の名前が出てこない」——そういう日常的な悩みが、ときめきによって軽くなることがある、という事実だ。これは実感として、ある。
恋は、特別な人に出会ったときだけに起きるものじゃない。
ふとした会話でドキッとする。誰かの言葉に胸を打たれる。朝、鏡を見て「今日は会いたい人がいる」と思う。そういう小さな心の動きが、ときめきの正体だ。
年を取ると、恋の仕方も変わる。
静かで、穏やかで、でも確かに熱がある。そういう恋。
「恋なんて、もう遠い話だ」と思っている人ほど、実は近くにあるのかもしれない。
運動しろ、食事に気をつけろ——そんなことは百も承知だ。
でも「心が動いているかどうか」も、健康に関係している。これは、もっと言われていい。
ときめきは、若さの特権じゃない。
むしろ、年を重ねた人にこそ必要な”回復薬”だと思う。
いや、思うというか、確信している。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
■ 採点結果
【基礎点】 41点/50点(テーマ、論理構造、完成度、訴求力)
【技術点】 21点/25点(文章技術、構成技術)
【内容点】 20点/25点(独創性、説得性)
■ 最終スコア 【82点/100点】
■ 評価ランク ★★★☆ 水準以上の良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】
- テーマの普遍性:「ときめき」という感情が心身の健康に与える影響を、年齢を重ねた読者に向けて温かく説いており、幅広い共感を得られるテーマ設定
- 読者への寄り添い:「恋なんて、もう遠い話だと思っていた」という読者の心情を先回りし、ときめきは若さの特権ではないと励ます構成が巧み
- 文体の親しみやすさ:断定と問いかけを織り交ぜ、読者との対話感を生み出す筆致が心地よい
【課題・改善点】
- 構成のやや散漫さ:話題が「ときめき→予定→好き」と展開する中で、章ごとの独立性が高く、全体を貫く論理の軸がもう少し明確だとなお良い
- 実践的提案の限定性:「会いたい人を作れ」という結論は示唆的だが、具体的な行動指針やステップがあれば読後の行動変容につながりやすい
■ 総評
本書は「ときめき」という感情が持つ回復力を、科学的視点と生活実感の両面からやわらかく説いた一冊である。年齢を重ねることへの不安を抱える読者に対し、恋愛感情や「会う予定」がもたらす心身への好影響を具体的なエピソードとともに伝え、「ときめきは若さの特権ではない」という力強いメッセージを届けている。
文体は読者に語りかけるような温かみがあり、押しつけがましさがない点も好感が持てる。一方で、科学的根拠のさらなる補強や、読後に実践できる具体的なアクションの提示があれば、より説得力と実用性が増したであろう。シニア層のみならず、日常に閉塞感を覚えるすべての読者に推奨できる良書である。







