参政党の玉手箱公約を読み、党歌を献上奉る

参政党HPより

参政党の最新公約を読んで、私はしばらく考え込んでしまった。

  • 0〜15歳の子ども一人につき、月10万円。
  • 消費税は廃止。
  • 社会保険料は削減。
  • 国民負担率は35%以下。
  • そして「ノー移民国家」。

なるほど、願い事としては実に分かりやすい。

まず、難しい議論は抜きにして、簡単な算数だけしてみる。

0〜15歳の子どもはおよそ1,475万人。

月10万円は年120万円だから、1,475万人 × 120万円 ≒ 17.7兆円/年。

これがまず必要になる新規の国家支出である。

次に、消費税廃止。国税分だけを見ても、消費税収 ≒ 19.5兆円/年が消える。

つまり、

17.7兆円(新規給付)+19.5兆円(税収減)=約37兆円/年。

これが、最小限に見積もった「玉手箱から毎年出さねばならない額」だ。

地方消費税まで含めれば、話はさらに膨らむが、ここではあえて一番控えめな数字に留めておく。

37兆円。これは「工夫すれば何とかなる」規模ではない。国家予算の柱が毎年もう一本必要になる話である。

しかも同時に、社会保険料は下げ、国民負担率は35%以下に抑えると言う。

数式で書けば簡単だ。

(税+社会保険料)を下げることと、国家支出(給付)を増やす。

この二つを同時に行えば、残る選択肢は三つしかない。

・国債を積み上げる
・給付を途中で引っ込める
・別の税などの形で国民に負担を求める

だが、そのどれを選ぶのかは、公約には書かれていない。

さらに興味深いのが、「ノー移民国家」という言葉である。

世界を見渡して、移民を完全に排して国家を維持している国を、私は知らない。反移民を掲げる政権ですら、実務では例外なく「選別」をしている。

皮肉なことに、日本では「反移民の総本山」のように思われがちなトランプでさえ、現実主義者だ。

米国では、評価額10億ドル以上のスタートアップの過半数が移民創業であり、それらが生む雇用と付加価値は米国経済の立派なエンジン役を果たしており、もはや米国経済の重要な担い手である。

混迷を極めた巨人インテルの再建を託された新CEO、リップブー・タン氏もまた、マレーシア出身の中国系移民である。いまや米国どころか世界を代表する半導体メーカーであるIntel、NVIDIA、AMD、Broadcomの創業者や経営トップの多くは中国系移民が占めている。

参政党が毛嫌いする「中国系」や「移民」こそが、皮肉にも現代文明の心臓部である半導体とAIの鍵を握っているのだ。彼らを排除した米国に、あるいは彼らの技術を拒絶した日本に、果たして明日があるだろうか。

それだけではない。台湾本社のTSMCは世界最大の半導体受託製造(ファウンドリ)企業であり、2025年第2四半期時点で世界のファウンドリ市場において70.2%という圧倒的なシェアを占めている。最先端半導体(7nm以下)に限ると市場のほぼ全量を製造しており、世界の高付加価値チップ生産の要となっている。日本も彼らなしには、たちまち発展途上国に逆戻りしてしまうのが現実だ。

創業者で中国生まれのモリス・チャン氏は1949年に渡米し、ハーバードで学士、MITで修士、スタンフォードで博士号を獲得した典型的エリートであり、当時の半導体大手であるテキサス・インスツルメンツ(TI)などの米企業でキャリアを築いた高名な技術者で、現在でも米国と台湾の二重国籍を保持している。

だからトランプ本人が「米国の大学を卒業した外国人には、卒業証書と一緒に永住権を与えることを検討すべきだ」と口にしてしまうのだ。

ついでに申し上げると、イーロン・マスクは生まれ故郷の南アフリカとカナダ、アメリカの三重国籍を持っており、iPhoneのスティーブ・ジョブズの父親はシリア出身の移民である。

どこの主要国でも、反移民を売りにする政治家ですら「必要な移民は囲い込む」ことを条件に挙げている。それが国家運営の現実というものである。

その現実をすべて棚に上げて、「ノー移民国家」と言い切る。

労働力は減らし、税源は減らし、社会保険の支え手も減らしながら、給付は増やし、負担は下げる。

これは大胆さではない。算数を拒否する勇気者か、玉手箱を信じる浦島太郎である。

参政党の公約を読んで残る感想は、「国家運営をここまで軽く扱えるものなのか」という静かな呆れと、少しの冷笑だけだ。

玉手箱から、毎年37兆円。しかも永遠に。

それが開かれる仕組みが示されない限り、この公約は「政策」ではなく、気分のカタログに過ぎない。

贋物を売るにはショーが必要な時代だ。そこで参政党に――阿波踊り調・数独入り――の党歌を捧げてみた。

踊る阿呆に 見る阿呆
同じ阿呆と 昔から

配る言葉は 派手なれど
数のマス目は 空いたまま

月に十万 声はよし
消えた税金 どこへ行く

数独をひとつ 解くように
縦と横とを 確かめる

一つ埋めれば 一つズレ
財も人手も 合わぬなり

踊る阿呆に 見る阿呆
同じ阿呆でも
数字を入れて 考えたい

本党歌は、誰かを嘲るためのものではない。国家運営は数独に似ている、というだけの話である。空白を残したまま完成を宣言することだけは、どうか慎んでいただきたい。

北村隆司 (ニューヨーク在住