ネタニヤフ首相、欧州極右議員団と会合

イスラエルのネタニヤフ首相は25日、ミリ・レゲフ交通相と共にエルサレム首相府で欧州議会の政治会派「欧州のための愛国者(PfE)」に所属するハンガリー、フランス、オーストリア、スペインの4か国、5名の欧州極右議員団と約45分間、会談した。

欧州の極右政党議員団と会見したイスラエルのネタニヤフ首相、エルサレムで、2026年1月25日

ネタニヤフ首相は会合では、「西洋のユダヤ・キリスト教文明は攻撃を受けている。極左過激派とイスラム主義者との共謀によるものだ。彼らは理論上はライバルだが、イスラエルとユダヤ人への憎悪という一点で結束している」と説明、そして「ヨーロッパの多くの国々は麻痺状態に陥り、何の監視も受けずに国境を開放した。これは1年や2年ではなく、長期にわたる闘争だ。この点において、私たちは単なる同盟国や戦友ではなく、世界の未来をかけた決戦において兄弟姉妹だ。世界が直面する最も深刻な危険は、過激なイスラムと核兵器が結びつくことだ」と述べた。

欧州議会の新会派「欧州のための愛国者(Patriots for Europe)」は、2024年7月にハンガリーのオルバン首相が主導し、フランスの国民連合(RN)やイタリアの「同盟」、ハンガリーの「フィデス・ハンガリー市民同盟」、オーストリアの「自由党」、スペインの「Vox」、チェコの「ANO」などが参加して結成された極右・EU懐疑派のグループだ。84議席を擁し、結成時点で第3会派だ。主な主張は、反不法移民、EUの権限縮小と加盟国の主権強化、欧州グリーンディールへの批判などだ。

ところで、イスラエル(特にリクード党)が、ナチスとの関連や反ユダヤ主義的言動で批判されてきた欧州の極右政党に接近してきた背景について、レゲフ交通相は「愛国者代表団との会談は、イスラエルが孤独ではないことを証明している。ヨーロッパには、イスラエルの闘争が、主権、国境、そして国民的アイデンティティのための闘争でもあることを理解している勇敢な指導者たちがいる。ヨーロッパ愛国者との連携は、国際舞台におけるイスラエルの立場を強化し、ボイコットや非正統化の試みに対して明確な前線を築くための戦略的な動きだ」と説明している。

ちなみに、レゲフ交通相は、PfEの最初のイスラエル支部として「エルサレムの愛国者(Patriots of Jerusalem)」を設立したことを発表した。ネタニヤフ首相率いる与党「リクード」は、非欧州圏の政党として初めてPfEのオブザーバー会員となる。

欧州の既存主流派(中道左派・リベラル)がパレスチナ問題やガザでの軍事行動でイスラエルを厳しく批判し、国際刑事裁判所(ICC)が2024年11月21日、ネタニヤフ首相を戦争犯罪で逮捕状を出す中、不法移民対策や国境警備(主権の尊重)を重視するPfEの議員たちはイスラエルを支持する姿勢を維持していることもあって、ネタニヤフ政権にとって彼らは「欧州における貴重な同盟者」となる。リクード党は、PfEのオブザーバー会員となることで、欧州議会内での意思決定や、イスラエルに対する制裁・ボイコットの阻止に向けたロビー活動を強化する狙いもあるはずだ。

なお、ネタニヤフ首相の欧州極右政党への接近について、イスラエル国内の左派やユダヤ教系団体から「反ユダヤ主義の歴史を持つ勢力と手を組むのか」との強い批判を浴びているが、ネタニヤフ政権は国際世論の逆風を押し返すための「戦略的パートナーシップ」と強調している。

イスラエルの主要メディア「エルサレム・ポスト」やJewish News Syndicate(JNS)などは、ネタニヤフ首相が欧州の右派・極右会派との「文明的な共闘」を鮮明にしたと強調、「イスラエルの国益や安全保障の観点から、欧州に新たな支持勢力を確保した戦略的な動き」と報じている。一方、ハアレツ(Haaretz)はより批判的な立場で「こうした会談がネオナチ的ルーツを持つ政党を正当化し、主流のユダヤ人団体を困惑させている」と指摘している。

なお、同議員団で参加したオーストリア自由党(FPO)欧州議会代表団長のハラルド・ヴィリムスキー氏はネタニヤフ首相との会談を「歴史的な規模の会談」と評している。

いずれにしても、イスラエルの右派政党が25日、歴史的に反ユダヤ主義の懸念があった欧州の極右勢力(オーストリア自由党など)と、「反イスラム主義」や「主権の守護」を旗印に手を組んだことは、中東の今後の動向に少なからずの影響を与えることが予想される。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年1月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。