中道改革連合の "大苦戦"、いったい誰がいちばん悪いのか?

各紙の情勢調査が、自民党の優勢と、中道改革連合の苦境を報じている。維新と足して「過半数」だったはずの与党の目標は「絶対安定多数」に上がり、天井知らずの勢いだ。

【衆院選】自民選対委員長「願わくば『絶対安定多数』を目指したい」高市首相の目標よりずっと上 - 政治 : 日刊スポーツ
自民党の古屋圭司選対委員長は1月31日夜、衆院選(2月8日投開票)を前に、与野党11党の責任者が生出演したNHK「サタデーウオッチ9」(土曜午後9時)で、党の… - 日刊スポーツ新聞社のニュースサイト、ニッカンスポーツ・コム(nikkansports.com)

中道の強みは「創価学会+連合」の組織票で、名前が定着する前の新党だから、ふわっと “世論の空気” を捉える電話調査等で支持を拾えるか、疑問視する声もあった。だがブームにほど遠いのは事実で、大敗の可能性もある。

世論調査「自民圧勝」はどこまで信頼できるのか? 報道関係者が明かす"第51回衆院選の票読み"が困難を極める内情
1月29日午後3時前に東京メトロの四ツ谷駅の改札を出ると、小粒の雪が顔にかかった。ダウンコートをしっかりと羽織っても、体が縮こまる寒さだった。それでも、横断歩道を渡った先の広場にはかなりの人が集まり、中…

そうなる理由は、わりと単純だと思う。

「サナ活」なるものの実態はともあれ、初の女性首相を “推し活” 的に支持する有権者は多い。そうした人の目にはたぶん、与党を飛び出した公明党と、野党第一党だった立憲民主党の合体が、

「私の “推し” を邪魔するためにここまでやるのか、ズルいっ! いまこそ全力で推し続けて “アンチ” の妨害突破だうおおおお!!」

みたく見えている。高市氏の首相への適性や、誰の配慮不足で連立が組み変わり、総選挙を急かされたのかは、考えない。思考を止めて対象と一体化する快楽こそ、推し活の本質だからだ。

政治も学問も「推し活ビジネス」になった時代をどう生きるか|與那覇潤の論説Bistro
6月末に行った『江藤淳と加藤典洋』のイベントの、冒頭30分がYouTubeで公開されたほか、ダイジェストがデイリー新潮の記事になった。まずは聞き手と文章化を務めてくれた山内宏泰さん、ありがとうございます。 で、自分で言うのはなんだけど、「なんでふたり採り上げたんですか?」という問いに答えて、結構いいことを話してる...

で、高市政権の批判者にも、それを貶す資格のある人は、ほぼいない。

そもそも「アイドルの推し活のように投票に行こう!」とは、”推す人” が少なそうに見えた岸田・石破政権下の選挙で、リベラル寄りの識者が言い出した話だ。後から歴史否定主義でごまかせないよう、証拠を貼っておこう。

有権者はなぜしらける? アイドルの「推し」選びのように投票を | 毎日新聞
 投開票日(31日)に向けて選挙戦まっただ中の衆院選。気になるのは投票率で、近年は半数近い有権者が1票を投じない。五野井郁夫・高千穂大教授は、好きな食べ物やアイドルなど「推し」を選ぶように、投票先を考えようと呼びかける。なぜ、有権者がしらけがちになるのか、日本の選挙の問題はどこにあるのか。「へえ~」
[くらしと政治]<下>「推し」に1票 現状変える一歩…日本大教授・西田亮介さん
【読売新聞】

とりわけ近年顕著だったのは、既存のエスタブリッシュメントに対して「アンチを推す」タイプの投票だ。米国のトランプ現象の “ぬるいバージョン” みたいなものだが、すぐ思いつくだけでも、

2022年7月 参院選でガーシー当選
24年7月 都知事選で石丸伸二氏次点
24年11月 兵庫県知事選で斎藤元彦氏再選
25年7月 参院選で参政党躍進

がある。いずれも大手の紙誌など、”権威ある” 言論の世界では「ありえない!」とされた事態だ。

そのたびにぼくはずっと、権威を持つ “主流派” の側が率先して反省し、信頼を回復することが最大の対策だと言ってきた。しかし多くの者はそれを無視し、単なる居直りか、逆に勝った側へのニワカな寝返りを続けてきた。

だからいま、「本命の小泉進次郎に “勝てるわけない”」との下馬評を覆した高市首相が、世の大手メディアへの「アンチを推したい」エネルギーを満帆に受けて、支持されている。自業自得とは、まさにこのことだろう。

高市政権を作ったのは保守ではなく "リベラル" である。|與那覇潤の論説Bistro
高市早苗内閣の発足が、好評だ。10/22の読売新聞によれば、歴代5位の支持率だという。 時代により調査方法が違ったりするので、厳密には単純に比較できないが、細川非自民連立や最初の安倍内閣と同じなら、かなりのブームだ。「初の女性首相」にしては低いとか、因縁はつけられるにせよ、無理がある。 歴史を画した諸内閣に(いまの...

さて今回の選挙で、そんな流れを少しでも止めたいなら、どうするか。

推し活とは、”いま” 誰かを応援する快楽への没入なので、対義語は明白だ。「歴史」である(笑)。

中道改革連合の結成を受け、めずらしくTVでも「中道の政治史」(?)がふり返られた。しかし、誰もが思い出す新進党をはじめ、どうしても失敗した例ばかりが注目される。実際にこれまでは、いつもコケてきたしね。

だが歴史とは、実現したことばかりでは、ない。

たまたま先月から、そのテーマで歴史を書いてるので調べたのだが、創価学会員の投票先が、公明党の他に「あるはずないでしょ」といった通念は、意外にも限られた時代の思い込みである。

"決裂" が起きるときはつねに、物語がすれ違っている(『潮』連載開始です)|與那覇潤の論説Bistro
谷川が「すべては1955年から始まるんです」と語り出し、虚を突かれた。一般的な戦後史の叙述では、公明党の結党は64年。前身の公明政治連盟も61年の結成で、それ以前に遡って語られることは、まずない。  (中 略)  ふつうの人が「55年体制」と呼ぶとき、内容は自民党結成と社会党統一に限られる。詳しい歴史書でも、共産党が7...

公明党に初めて “解消論” が出たのは、1970年代初頭だ。批判的な出版物をめぐって(いまで言う)キャンセルカルチャーの応酬になり、創価学会は1970年、反省と方針の転換を表明した。

その後しばらく、公明党は民社党への合流が模索され、実現の可能性も高かった。だが乗り気だった民社の西村栄一委員長が、71年に急死し頓挫する。もし合併していたら、それこそ「中道連合」を名乗っても不思議ではない。

資料室: バズる前から死語になった「極中道」の概念について|與那覇潤の論説Bistro
本好きなら覚えがあるように、図書館に予約した本の順番がやっと回ってきたら、もう「賞味期限」が切れていた、という例は多い。 「じゃあ買えよ」という話だし、なのでぼくの本もなるだけ買ってほしいのだが、ピンとこないけど「押さえてはおくか」くらいの書籍にも、毎回お金を出せるのは、一部の人だけだろう。 で、この度そうなった本...

70年代を通じて多党化が進み、自民党への支持が衰え分裂含みになると、79年には “穏健保守” の大平正芳首相が公明に連立入りを打診した。このときも「政治とカネ」がネックで破談になったが、一歩手前までは行っていた。

野党と与党、それぞれの “穏健派” が真ん中に歩み寄り合流する可能性は、昭和にも十分あったのだ。今回は仔細を略すが、1984年の「二階堂擁立劇」も成功すれば、ハト派を自民党総裁に担ぐ “中道連立” になったはずだ。

公明党の連立離脱をどう見るか: プレイバックする1970年代|與那覇潤の論説Bistro
ご存じのとおり10/10、公明党の斉藤鉄夫代表は自民党の高市早苗・新総裁との会談後に「連立離脱」を発表した。 興味深いのは、外野の多くが高市氏と公明党とで溝になると見ていた、靖国神社参拝などのいわゆる "右傾化" ではなく、「政治とカネへの対策」が離脱の決定打になったことだ。 【速報】公明党が自民党との連立離...

いま「どうせまた失敗するんじゃ?」として語られる、平成の合従連衡は、こうした流れで見るとむしろ “逸脱” になる。ぼくがよく使う喩えでは、ボタンのかけ違いってやつだ。

自民側でずっと “中道路線” を担ってきた(旧)田中派の窓口役に、当時はタカ派志向だった小沢一郎氏が就き、かつ党を割ってしまったのが想定外だった。公明党も引きずられ、新進党への加入と、分裂の顛末に至る。

かけ違いはまだ続く。1999年に自公が初の連立を決めた際、首相は沖縄にサミットを誘致した小渕恵三で、官房長官は被差別部落出身の野中広務。公明側といちばんしっくりくる、”弱者に寄り添う保守” との話しあいが実った。

自民党総裁選につき、ぼくも『正論』で組閣してみました。|與那覇潤の論説Bistro
10/4に迫る自民党総裁選ですが、今日発売の『正論』11月号の特集は「私が考える "救国" 内閣」。企画が立った際は、石破茂首相の進退は未定だったはずですが、ピッタリの刊行となりました。 月刊正論11月号  ❝救国❞内閣 識者39人が考える! - 月刊正論オンライン 自民党総裁選の投開票日が近づき、世の中で...

だがその小渕首相が2000年に急逝し、「天皇を中心とする神の国」の人・「痛みを伴う構造改革」の人・「美しい国」の人と、なんかもう強烈なキャラが続いたわけだ(苦笑)。むしろ、25年間もよく保ったなぁと思う。

この物語の上に置くとき、2026年に中道改革連合ができたことも、だいぶ見え方が変わる

解散後の “いまだけ” を見れば、ニワカ作りの選挙互助会だ。が、”たった半世紀” (歴史家の感覚では)をふり返るだけで、同じものが、やっとボタンのかけ違いを直して、あるべきところに落ち着いたゴールにも見える。

戦後政治の "見果てぬ夢" : 令和に「中道結集」は実現するか|與那覇潤の論説Bistro
高市政権が発足した直後の昨年10/21に、政治学者の牧原出氏がインタビューでこう言っていた。 インタビュー:高市新政権、「なんちゃって連立」で変わる政策決定プロセス=東大・牧原教授 東京大学先端科学技術研究センターの牧原出教授はロイターとのインタビューで、日本維新の会をパートナーに選んだ自民党はより右寄 ...

はい、わかりましたね? この選挙、実は「”推し” か・歴史か」の対決なんです。ホンモノのリベラルは、もちろん歴史の側につき、”推し合戦” に敗れたニセモノのリベラルは、早々と逃げ出してだんまりの構えでしょ?

――と、プレジデントオンラインに話した内容のうち、なぜ “推し活政治” はあなたの人生を豊かにしないかをまとめた記事が、先ほど公開された。

中道改革連合を苦戦に追い込んだ「リベラルの大自爆」…挽回のために突くしかない"高市政権・唯一の急所"
衆院選に向けて、鳴り物入りで結成された中道改革連合がまったくふるわない。なぜなのか。『平成史』などの著書を持つ評論家の與那覇潤氏は「ここ10年間の潮流への“アンチ”を打ち出さなければ、同党は浮上できない」という――。(取材、構成=ライター・島袋龍太)

久しぶりに戦後史を歴史学したこのnoteとは、内容のカブリなしの「合わせて一対」にしてあるので、読んでくれたら嬉しい。もし主張に同意してくれるなら、ぜひ周りにも広めてほしい。

歴史あるホンモノのリベラルが善戦すれば、いつでも「政権交代」が可能で、与党もまた緊張感を持つ日本が戻ってくる。それは、保守や右翼と呼ばれる人にも、よいことのはずである。

逆に中道を盛り下げた主犯であるニセモノのリベラルは、結果にかかわらず、日本のどこにも居場所はない。彼らが “推し” にかまけてずーっと無視してきた、歴史のゴミ箱に行くことになる。それがこの選挙の意義である。

2025.9.1
はい。おっしゃる通りです

参考記事:

2026衆院選は、政党は結局「いくつ要るのか選ぼう解散」になる。(豪華動画2本です!)|與那覇潤の論説Bistro
1/27に公示されて衆院選が正式に始まるが、ここまでめちゃくちゃな解散は史上初だ。長く指摘されてきたとおり、憲法7条 "のみ" で解散できるとするのは「解釈改憲」で、十分な根拠がない。 なので従来は、7条で解散する際、「もっともらしい理屈」をつけてきた。しかしいまの首相は、 高市早苗が、内閣総理大臣で良いのかど...
リベラルはいいかげん「リンチでガス抜き」をやめるべき|宇野常寛
先日の山尾志桜里さんとの対談が左派に攻撃されている。 最初に言うが、僕は動画の中で中道改革連合への支持を表明している。しかし僕はなんと、同じ中道改革連合の支持者から攻撃されているのだ。 なんとその理由は ・ネガティブな...

(ヘッダーは公式の! YouTubeより)


編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2026年2月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。