(前回:佐倉ふるさと広場拡張整備計画を問う⑫:公正性・安全性・市民還元のための最低限要求)
本連載では、第12章において、ふるさと広場拡張整備計画の進め方そのものに対し、透明性、検証、市民参加の観点から問題提起を行った。
しかし、それは「最低限の手続き」を検討する章であり、「どのような公園を目指すのか」という問いには、十分に踏み込めていなかった。
将来設計とは、手続きの是正ではなく、公共空間にどのような役割を与えるのかを定義する行為である。
そこで本章では、ふるさと広場を「どのような公園として育てるのか」という問いから、改めて計画の組み替えを試みる。
ふるさと広場の将来像を考えるにあたり、私は一つの仮説を置きたい。
それは、ふるさと広場は「完成形を先に固定する公園」ではなく、社会状況や市民の関わり方に応じて更新され続ける公園であるべきではないか、という仮説である。
ここでいう「完成しない公園」とは、計画性の欠如や場当たり的整備を意味しない。
むしろ、初期段階では目的・機能をあえて限定し、実際の利用実態、経済効果、周辺環境への影響を検証しながら、段階的に役割を拡張していく設計思想を指す。
これまで各地で行われてきた観光開発の中には、地域が「観光資源」として外部需要に最適化される一方で、市民は来訪者対応や環境負荷を受け止める側に固定されてきた事例も少なくない。
ここでは、市民が主体ではなく、観光の手段として動員される状態を、便宜的に「市民が“使われる”観光」と呼びたい。
ふるさと広場が目指すべきは、その対極である。
市民自身が試行錯誤し、失敗も含めて関与し続けることで、結果として外部からの来訪価値が生まれる――そうした内発的な都市価値形成の場として、この公園を位置づけ直す必要がある。
Ⅰ.5年間を「建設期間」ではなく「検証期間」と位置づける
ふるさと広場の将来設計において、最初の5年間は完成を目指す期間ではなく、前提を確かめる期間と位置づける必要がある。
従来の公共事業では、
- 事前に完成形を固定し
- 事前に需要を推計し
- 事後的に結果を評価する
という流れが一般的であった。この手法は、「当たれば大きい利益を生む」という利点がある反面、価値観が多様化し、求められる観光サービスの変化の速度が上昇し続けている現在にあっては、大きな投資予算をかけた観光施設が一瞬で陳腐化する可能性もはらんでいる。
そこで、本計画では、従来の事業順序を逆転させる。
仮説 → 実証 → 修正 → 次段階判断
この循環を5年間で複数回回すこと自体を、公園整備の第一段階と位置づける。
なお、本設計では、検証を開始する前段階として、短期間で仮説と検証方法を整理する初期フェーズを想定する。
ここで行うのは、結論を急ぐことではなく、既存データや過去事例、外部知見を集約し、「何を検証し、何を検証対象としないのか」をあらかじめ明確にする作業である。
この初期フェーズは、従来の行政検討に比べて意思決定の時間を意図的に圧縮し、数か月単位で完了することを想定する。
こうした準備段階を経ることで、以降の検証期間を実質的に確保し、五年というサイクルを、単なる計画期間ではなく、判断を更新し続けるための成長の単位として機能させることが可能となる。
なお、検証期間においても、広場の維持管理や一定の運営は不可避であり、費用が発生しないわけではない。
本設計が目指すのは支出の回避ではなく、管理やイベント運営を含めたすべての行為を、次の判断につながる検証対象として位置づけ直すことである。
Ⅱ.第1フェーズ(1〜2年目):目的と影響の可視化
1.この段階で「やらないこと」を明確にする
最初の2年間では、
- 大規模建築物の整備
- 長期固定契約を前提とする施設導入
- 来場者数のみを目的とした集客施策
は行わない。
この段階の目的は、拡張ではなく把握である。
2.徹底した基礎調査と実証
このフェーズで行うのは、以下のような「地味だが不可欠な作業」である。
- 来訪者の属性・来訪目的・滞在時間の把握
- 自家用車・公共交通・徒歩・自転車の比率調査
- 周辺生活道路・住宅地への影響の定点観測
- イベント時・非イベント時の差異分析
これらを、単年度で終わらせず、複数年で蓄積する。
3.市民参加の「意見集約」から「実験参加」への転換
この段階における市民参加は、
- 賛否を問うアンケート
- 要望を集めるパブリックコメント
にとどめない。
代わりに、
- 市民主体の小規模イベント実験
- 市民団体・事業者による試行的利用
- 失敗事例も含めた公開レビュー
を通じて、市民が使い手であり、検証者である立場に移行する。
Ⅲ.第2フェーズ(3〜4年目):マーケティング仮説の検証
1.ターゲットを「一つに絞らない」
基礎調査を踏まえたうえで、この段階では、
- 首都圏日帰り層
- 市内・近隣市民の反復利用
- 教育・学習・体験型利用
など、複数の利用仮説を並行して検証する。
重要なのは、「どれかに賭ける」ことではなく、どれが現実的かをふるいにかけることである。
2.マーケティングは「拡大装置」ではなく「検証装置」
ここで行うマーケティングは、
- 来場者数を最大化するための広告
ではない。 - どの情報が
- どの層に
- どの行動変容をもたらすか
を確かめるための実験的マーケティングである。
これにより、
- 市内回遊が生じるのか
- 市内事業者の売上にどう影響するのか
- 農業者との接続可能性はあるのか
といった点を、数値と事例で検証する。
3.KPIは「評価」ではなく「判断材料」として設定する
この段階で設定されるKPIは、
- 成功・失敗を断定するための指標
ではない。
次の段階に進むか、立ち止まるかを判断するための材料
として位置づける。
未達成は「失敗」ではなく、計画修正の根拠として扱われる。
Ⅳ.第3フェーズ(5年目):選択と覚悟の段階
5年目は、拡張を前提とする年ではない。
むしろ、
- どの機能を拡張するか
- どの構想を捨てるか
- どこまでを公共が担い、どこからを市民に委ねるか
を明確に選択する年である。
ここで初めて、
- 建築規模
- 長期契約
- 一定規模の予算
を伴う判断が検討される。
Ⅴ.なぜこの5年設計は「国・県予算」と相性がよいのか
この設計は、
- 実証事業
- モデル事業
- 社会実験
- 段階整備型補助
と極めて相性がよい。
なぜなら、
- 初期投資が抑制され
- 成果が可視化され
- 他自治体への展開可能性を持つ
からである。
これは「夢のある計画」ではなく、採択されやすい公共設計でもある。
まとめ
12章が問うたのは、「この計画は正しく進められているのか」であった。
本章が描いたのは、「この公園は、どう育てられるべきか」である。
- 完成を急がない
- 検証を恐れない
- 市民が“使われる”観光にしない
その姿勢そのものが、ふるさと広場を佐倉市の未来を映す鏡にしていく。
この設計は、効率的な整備を約束するものではない。
むしろ、立ち止まり、修正し、ときに撤退する判断を伴う、負荷の高い選択である。
それでもなお、この道を選ぶ理由は明確だ。
完成形を急ぐことよりも、公共空間が市民の経験として育っていく過程を尊重したいからである。
ふるさと広場は、完成した瞬間に価値が固定される公園ではない。
問いと検証を繰り返すことで、佐倉市そのもののあり方を映し続ける公共空間であるべきだ。
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