300議席で暴走しかねない高市首相にトランプ氏が支持表明という二重の危うさ

自民党衆院選 2026 HPより

メディアの世論調査はどこも「自民・維新が300議席をうかがう」で一致し、新聞・テレビ、選挙専門家、識者らの当初の予想は完敗しそうです。豪雪による投票困難、「300議席」に対する警戒感で、数字が下回る可能性はあるにしても、ここまで圧勝しそうだとは大方の想像を超えました。得体の知れない地殻変動が起きているのか、どう解釈したらいいのか。

国際情勢の緊迫化、国内経済社会の閉塞感、ネットによる急激な情報拡散、エコーチェンバー効果(感覚・意見・思想の集団化)、有権者の世代交代、刷新されない政界への失望、女性首相に対する歓迎、野党の頼りなさ、複雑な問題の単純化、生活感覚の優先など多くのテーマが横たわっています。選挙後に高市現象の多角的な検証が必要です。

専門家、識者、メディアの多くが懸念する問題は多い。それにもかかわらず、若い世代ほど、高市人気が高い。それがまた日本の危機なのです。

親子喧嘩になる若い世代の政治感覚

知人らが若い世代の政治感覚を心配しています。高市氏は「トランプ氏と米原潜に乗ってぶんぶんと腕を振り回す」、「円安ホクホク」、「台湾有事は日本有事」、「いつも笑顔を振りまいている」などをみて、若い世代は「分かりやすい。格好いい」と思っているようです。ネットで見聞した課題を単純化し、断片的な切り取り情報に触れ、それを感覚的に考える。

「そんなことでいいのか」と親の世代の感覚で語ると口論になり、喧嘩に発展するため、「困るのは君たちだ」といい、親はあきらめるのだそうです。

私が憂慮するのは、まるで直接選挙の大統領選のように「高市早苗が首相でよいのかどうか」と呼びかけ、「高市信認」という結果が得られたと信じ、高市政治が暴走し始めることです。

高市氏はトランプ米大統領の独断的な政治手法を模倣していると思ってきました。既存の国際秩序、同盟関係を破壊し、世界で最も危険な人物とされているトランプ氏です。そのトランプ氏は高市圧勝の予想を受け、「強力な評価に値する人物である。高市総理とその連立政権が体現するものに完全かつ全面的に支持する」と最大限の賛辞を表明しました。

選挙直前に内政干渉まがいの支持表明

3月19日に日米首脳会談が予定されています。大統領という存在が他国の国政選挙直前にこうした支持を表明することは「内政干渉」まがいの行為として忌避されてきたはずです。そんなことは、独裁者・トランプ氏にとってはどうでもいい。だれか抗議の電報でも打ったのだろうか。

米国への過剰依存を是正し、多角的、多極的な外交関係をいかに築いていくかが日本にとっても最重要の課題です。それなのに、トランプ氏の来日の際、首脳会談の直後、共同記者会見もせずに、米軍のヘリコプターに乗り込み、横須賀に停泊中の原子力空母に着艦しました。そこでトランプ氏に「強力な首相」と持ち上げられると、腕をぶんぶん振り回し、歓喜の表情を爆発させた。常識のある人たちには「目を覆いたくなる光景」でした。

「円安は外為特会にとってホクホク」(円安による為替差益を評価)の発言は、円安で輸入物価が上がり、インフレを招き、多くの国民は苦しんでいる時です。今、いうタイミングではない。高市氏もだから物価対策予算を組んだ。そんな経済問題への理解、知識を捨て、感覚的に単純化して思い付きで発言してしまう。そのほうが受けるとでも錯覚しているかもしれない。

「ホクホク発言」には付帯説明が付け加えられ、片山財務相が「経済学の教科書に書いてあることを言ったまでです」と、苦しい弁解をしました。本当は頭を抱えたに違いない。ただでさえ、日米が「レートチェック」して、過度な円安を牽制したばかりです。そのタイミングで円安を助長する「ホクホク」発言するとは、とあきれた人が多い。

「総理としての資質がない」と元外務官僚

外務官僚OBで辛口の時事評論を続けている田中均・元外務次官は「多くの総理に仕えてきました。高市氏の言動をみると、総理としての資質がない。見識がない。自分の発言がどういう影響をもたらすかを考えていない。じっとしていられない。その場その場の勢いで発言している。高市氏の積極財政と安全保障政策はリスクが大きい」と酷評しています。

高市首相はトランプ大統領の政治手法を模倣していると、私は思います。「対立軸を単純化した感情動員型政治」、「キャッチフレーズ、誇張、データよりストーリー(物語)の尊重」、「ワンマンショー的な独演会方式」、「事実の検証より過激な発言」など両者には共通点が多い。

2人というか、両国には決定的な違いがあります。トランプ氏には、ディール(交渉)に勝つツール(武器)として、輸入品を飲み込む巨大な市場、関税引き上げによる脅し、世界最強の軍事力、中国に対峙できる国力などがあります。高市氏には、どれ一つとっても、ないものばかりです。高市氏がトランプ氏の政治手法を模倣することには大きなリスクが伴う。それを踏まえた戦略性がないのです。

そのトランプ氏も「問題意識は正しいが、それに誤った答えを出す」と、指摘されています。フィナンシャル・タイムズのコラムニストの酷評(1月30日、日経)です。それに対して、高市氏は「その問題意識は分かるが、それに誤った答えを出している」のだと思います。よく似ているのです。


編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年2月6日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。