黒坂岳央です。
外資系企業にまつわる話では「日系企業は年齢を気にするが、外資系は気にしない」、というものがある。本当だろうか?
東京で複数の外資系企業で働いた経験からいうと、「外資系は年齢を気にしない」はそのまま額面通り受け取らない方が良い。結果として思わぬリスクを引き受けることになるからだ。

mapo/iStock
「年齢を気にしない」真の理由
日本法人の外資系企業では、日系企業が門前払いにするような人材を歓迎することがある。その歓迎された人物こそ、筆者である。
リーマン・ショック直後、27歳で遅く大学を出た自分は、当時応募した日系企業ではすべて書類段階で落とされた。だが、面接の門戸を開いてくれたのはすべて外資系だった。この時は「日系企業はお硬いが、外資系企業は優しい」と思ったものである。
日系企業が年齢を強く意識する背景には、雇用の安定や育成を前提とした制度設計がある。一度採用すれば不況でも雇用を保証し、手厚く育成する。逆を言えば、入り口を狭めることで組織の安定を守っているといえる。
それに対して外資系は、ジョブ型雇用を基本とする。必要なのは今この瞬間の成果であり、それを出すのが20代だろうが50代だろうが、ビジネス上の損得勘定に違いはない。
彼らが表面的な年齢という記号をそれほど問わない理由は、期待したパフォーマンスが出なかった際にバッサリと切り捨てる、あるいは試用期間やOJTの段階で半分を脱落させる前提がある。
実際、自分が入った会社では、2週間の研修後に採用者のうちついて来られなかった人材が切られた。もちろん、すべてではないが外資によっては「採用後にシビアにパフォーマンスで選別する」運用が起きやすい。
つまり、外資における年齢不問とは、機会の平等のためというより、ドライな市場取引という見方もできる。もちろん、本人にとっては「年齢で門前払いされない」という意味で温情に見える。しかし企業側はあくまで、採用を投資ではなく取引として見ている。彼らは結果には非常にシビアだ。
「年齢を気にしない」は半分は間違い
外資系において年齢が全く考慮されないかと言えば、それもまた嘘である。あくまで「日本企業ほどは気にしない」という話でしかなく、筆者の事例もまだ20代だったから通用しただけにすぎない。
まず、採用現場において「年齢」という変数はキャリアの質と量を測るための「分母」として機能している。
外資系での評価は、キャリア(実績・スキル・専門性)÷ 年齢、という数式で近似できる。 年齢が20代であれば、時間的な分母が小さいため、多少のスキル不足もポテンシャルでカバーできると考える。
だが、40代、50代と年齢が上がるにつれ、必然的に分母は肥大化する。年齢に見合うだけの圧倒的な実績や専門性、あるいはマネジメント能力を分子として持っていなければ、シンプルに解としての市場価値は1を下回り、不採用となる。
年齢を理由に落とされたと嘆く者の多くは、この分母の拡大に分子の成長が追いついていないのだ。「年を取っていることがダメ」なのではなく、「年齢相応のスキルがないのがダメ」なのだ。
日系企業の環境に適応してきた人が、そのままの延長線で外資に挑むと、評価基準の違いによって苦戦しやすい。外資では「何ができるか」「どんな成果を出したか」が、想像以上にシビアに問われるからだ。
これを「年齢差別」と感じる人もいるだろう。だが厳密な実態としては、年齢そのものより「その年齢で何を積み上げてきたか」が問われているのだ。
逆恨みの構造と、シニアの現実
現実的に「年を取っても仕事ができる人材」は相対的に見て例外である。
年齢が上がるほど、企業側は「新しい環境への適応力」「学習速度」「やり方を変えられるか」をより慎重に見るようになる。特に外資では、入社後に“慣れるまで待つ”という発想が薄い。
給与というコストが高く、マネジメントに手間がかかり、かつパフォーマンスが低いシニア層は敬遠されてしまう。シニア社員は「何十年も働いた結果、今のポジション」という「結論」が出ているので、それが会社が求めるものでなければ採用されることは難しいのだ。
外資でうまくいかなかった人の中には、「年齢のせいだ」と感じる人もいる。しかし外資のロジックは、年齢よりも成果と再現性に強く依存している。外資の入り口の広さという果実だけを求め、その裏側にある結果責任という義務を無視している人もいる。
本来、外資系へ行くという選択は、日系的なレールの外で自分を磨いてきた者が、その実力のみを換金しに行く行為である。新卒で失敗した者や留学・ワーホリ組が外資で成功する人が出るのは、彼らが若い段階からレールを外れ、自力で市場価値を構築せざるを得ない環境に身を置いてきたからと考える。
◇
外資系は年齢を気にしないのか?答えは「20代までは年齢で落とされにくいが、30代以降は要求水準は上がる」である。
しかし、キャリアが年齢相応、あるいはそれ以下であるならば、外資系は日系企業よりもはるかに残酷な場所となる。年齢は差別される対象ではなく、あなたの実力を厳密に測定するための基準点として常に横たわっている。
■
2025年10月、全国の書店やAmazonで最新刊絶賛発売中!
「なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)







