金とドルの関係は相関関係に近いのはご存じ通りです。相関関係も100%なのか、70%なのかその結びつき具合はあると思いますが、個人的には50%から70%ぐらいはあるのだろうと考えています。最近の金高ドル安は一時的なトレンドなのか少し考えてみたいと思います。併せて、円の役割について触れてみたいと思います。
ご承知の通り私は先月、保有金銀関連投資を売却しました。理由は明らかな過熱感があったためで、今はそのほとぼりが冷めるのを待っている状態です。以前から何度か指摘しているように長い将来、金は1万㌦になってもびっくりはしないのです。そもそも金は物品との直接交換の手段がないため、価値は売り手と買い手の欲望で決まるのです。現状、その欲望が強いこと、特に世界の中央銀行がせっせと金を購入していることが買う欲望の高さとも言えます。よって今のように高値から1割ぐらい下げた5000㌦前後で値固めをするか、更なる上か下への動きの前兆なのかはしっかり見極める必要があります。
「有事の金」と言われるとおり、世界不和が起きた場合は金の需要が大きくなるのですが、個人的には大きな世界有事は当面なさそうな気がします。ウクライナ問題があるじゃないか、とおっしゃると思いますが、相場はインパクトが重要であり、何年も戦争を続けている限りそれは相場における欲望には強く作用しないのです。イランをアメリカが「口撃」していますが、私はイランがアメリカに立ち向かう力はないとみているのでこれも戦争にはならないとみています。台湾有事の可能性ですが、見通せる範囲では今の習近平体制では「台湾抱き込み作戦」ならともかく、力による押さえつけは無理だろうとみています。
では金への欲望は下がるのか、と聞かれればそんなことはないとみています。その理由は米ドル基軸通貨への揺らぎです。アメリカがアメリカである理由は何か、と聞かれたら私は一言、ドルが基軸通貨であること、と申し上げます。これが崩れるならドル相場は崩落し、世界のドル離れが一気に進みます。ドル一強である限り、マネーはアメリカに集まり、アメリカの株式市場のみならず、様々な投資にお金が廻ります。アメリカでスタートアップが強いのも米ドルベースであるからです。
中国がコンスタントに米国債を売り続けています。昨年11月末で保有残高は6826億㌦となり、年間で1割減少、ピークからは半分近くになっています。また一部の新興国も売却を進める一方、日本、英国、カナダあたりが買い支える展開になっています。
私が投資家という立場で考えるなら日本がアメリカ国債に異様に傾注しているのはリスクだとみています。少なくとも保有高維持でとどめ、今後は金をもう少し買うべきだと思います。他国の国債はお付き合い程度は買えるかもしれませんが、巨額の買い付けをするには不向きであり、買う選択肢がそうあるわけじゃないというのが実際のところではあります。
だからといってアメリカ国債をただ漫然と買い続けるのは脳がないと思います。採掘限界のある金の保有残高が日本は世界10位で846㌧程度であり、アメリカのほぼ1/10、中国の1/3と低いのでもう少し増やした方が良いでしょう。(ちなみにカナダは政策上、保有量ゼロ。ただし、山に行けば3200㌧の埋蔵があります。)
ではここで日本円を考えたいと思います。お前はまたそれを持ち出すのか、と言われそうですが、私はいまだに円の国際化に興味があるのです。80年代に一時流行った話でドルから円へのバトンタッチがひそかに議論されたのです。それ以降、通貨としての円は安全通貨としてスイスフランと並ぶ象徴でしたし、世界の通貨流通量では常に3番手か4番手あたりにいます。日経に金融界の大御所、中曽宏氏のインタビュー記事があるのですが、その中で氏は「将来の国際通貨システムは基軸通貨の分散化が進む可能性が高い。円はユーロや英ポンドなどとともに役割を担う条件を備えている」とし円建て資本取引を増やし、決済利便性向上、金融センター機能の強度化を図るべきとしています。
米ドルが基軸通貨であるのは大国であらゆるものを持っているから、という専門家も多いですが、それは違うと思います。なぜならその前には英国ポンドが基軸通貨だったのですから。中曾氏は今の時代、1つの国の通貨がそれを代替するのは難しい、よって複数通貨がその役割を分担するべきという主張を正とするなら今目指すのは円の安定化であります。
これの意味するところは国民には不評で高市政権の政策とも真逆かもしれませんが、財政の健全化は維持すべきだと思うのです。円の国際化が進めば日本への直接投資は増えるし、株価も上昇するのです。ただ、そこに行くまでの試練はあるわけで、それよりも目先の利益に走ってしまっていることが私にはせっかくのチャンスをフイにしないかと心配に思うわけです。

高市首相 昨年の日本取引所グループ大納会で 首相官邸HPより
表題の金とドルと円、どれが強くなるべきか、私は必然の方向である金と共に意図的に円の安定化を政策として推進すべきだと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月18日の記事より転載させていただきました。





