海外のイランメディア「イラン・インターナショナル」が1日、関係筋から得た情報として報じたところによると、ペゼシュキアン政権とイラン軍指導部との権力争いでイスラム革命防衛隊(IRGC)が事実上主要な国家機能を掌握したという。IRGCは、大統領による人事や決定を阻止するとともに、権力の中枢周辺に厳重な警備体制を構築し、事実上政府を行政支配から排除している。

米イスラエル軍のイラン攻撃が始まって以降、テヘランで3万3000戸の住居が破壊された、2026年4月2日、Tasnim通信から
ぺゼシュキアン大統領が先月末新たな情報相を任命しようとしたが、IRGC最高司令官アフマド・ヴァヒディ氏の直接的な圧力により頓挫した。ヴァヒディ司令官は「戦時下という状況を鑑み、重要かつ機密性の高い指導的地位はすべて、追って通知があるまでIRGCが直接選任・管理しなければならない」と主張したとされる(イスラエル軍は先月18日、ハティブ情報相を殺害した。同情報相はイラン国内の民衆弾圧などで中心的役割を果たしてきた人物だ)。
ペゼシュキアン大統領はここ数日、最高指導者アリ・ハメネイ師の後継者、モジタバ・ハメネイ師との緊急会談を繰り返し要請しているが、返答はなく、接触も出来ないでいる。関係筋によると、革命防衛隊の上級将校で構成される「軍事評議会」が現在、中核的な意思決定機構を完全に掌握しており、モジタバ・ハメネイ師の周囲に厳重な警備体制を敷き、国内情勢に関する政府報告が師に届かないようにしているという。

イラン モジタバ・ハメネイ師 Wikipediaより
このコラム欄でも報告したが、ペゼシュキアン大統領とIRGCのヴァヒディ司令官の間で、戦争への対応と、それが国民生活や経済に及ぼす影響を巡り、深刻な意見の相違が生じていたが、ヴァヒディ司令官がここにきて全権を掌握したようだ。
ペゼシュキアン大統領は、緊張の高まりと近隣諸国への攻撃継続に関して、革命防衛隊の対応を批判し、事態の経済的影響について警告、「停戦がなければ、イラン経済は3週間から1ヶ月以内に完全に崩壊する可能性がある」と警告してきた経緯がある。
それでは、ぺゼシュキアン大統領が「崩壊の危機にある」というイラン国民経済はどうか。イラン・インターナショナルのべフルーズ・トゥラニ記者によると、戦争とインフレがイランの労働者を苦しめているという。「イラン経済は、深刻な戦時ショックの重圧の下、新たな会計年度を迎えている。インフレ率は数十年来の水準に達し、生活必需品は国民の多くにとってますます手の届かないものとなっている」という。2026年現在の平均月収は約3万円程度と推定されており、戦時下の物価高騰が国民生活を直撃している。
イラン議会調査センターを含む政府機関がまとめたデータによると、2026年3月に発表された公式統計では、年間インフレ率は50.6%となっている。3月単月では5.6%上昇した。しかし、エコノミストらは、この数字は危機の深刻さを過小評価していると指摘する。政府統計によると、2026年3月の物価は前年同月比で71.8%上昇しており、この急激な上昇は家計の購買力を著しく低下させている。テヘランのような大都市では、特に食料品において、その増加率はさらに高いと考えられている。
多くの住民が一時的に市外に避難した首都テヘランでは、商業活動の大部分が急激に停滞している。多くの企業は依然として閉鎖されたままであり、市内に残った人々も、予測不能な空爆に巻き込まれることを警戒し、行動を制限しているという(以上、トゥラニ記者)。
イランでは昨年12月28日、テヘランのバザール商人たちが政府の優遇為替レートの廃止計画に反発し路上でデモをはじめ、抗議デモの波は大学に波及し、瞬くままにイラン全土に拡大。それを受け、イラン治安部隊はデモ参加者に実弾を発射するなど強硬な対応に乗り出した。人権団体によると、1月8、9日、治安部隊はデモ参加者に向けて銃撃し、多数が死亡した。国民経済がさらに悪化すれば、昨年末から今年初めの大規模の抗議デモが再発する可能性も出てきた、と予想されている。
2026年4月現在の報道や情勢に基づくと、イラン経済は米・イスラエルとの軍事衝突の激化により、極めて厳しい戦時経済体制にある。イランは攻撃を受けて以降、ホルムズ海峡を事実上封鎖しており、主要な外貨獲得源である石油・ガスの輸出が困難になっている。イラン革命防衛隊は中東の全軍事・経済インフラを破壊する準備があると表明しているが、同時にイラン国内の重要施設も攻撃対象となっており、軍事・経済インフラの破壊の影響が出ている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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