トランプ米大統領はホルムズ海峡を直ちに完全再開することを要求、イラン側がその要求に応じない場合、発電所や橋などを爆撃し、「石器時代に戻す」と警告を発してきたが、最後通牒の土壇場の7日夜、イランとの戦闘を2週間停止し、イラン側が米国側に提示した10項目の対案を土台として今後交渉を行うことで合意したと発表した。イランのペゼシュキアン大統領は停戦合意を「団結と犠牲の果実」と表現し、勝利宣言をしている。

米とイランの交渉が開かれるパキスタンのイスラマバード会議場、2026年4月8日、Tasnim通信から
トランプ氏が「交渉の実用的な基盤」と述べたイラン側が提示した10項目の内容を少し検証してみたい。ちなみに、同10項目はまだ公表されていないが、イラン最高国家安全保障会議が発表した要約を整理してみる。イラン政府が2026年4月6日、米国が提案した一時的な停戦案15項目に代わり、仲介国パキスタンを通じて「戦争の恒久的な終結」を求めて提示した内容だ。
①戦争の恒久的な終結: 一時的な停戦ではなく、地域全体での戦闘を完全に終わらせる。
②制裁の全面解除: イランに対する全ての経済制裁を解除する。
③ホルムズ海峡の安全航行に関する協定: 自由な航行や石油輸送を含む新たな取り決めに合意し、引き換えに海峡を開放する。
④安全保障の確約: イランが再び攻撃を受けないという保証。
⑤イスラエルの攻撃停止: イスラエルによるレバノンのヒズボラへの攻撃停止。
⑥ウラン濃縮権の容認。
⑦中東からの米軍撤退。
⑧対イラン制裁決議の撤回、国際原子力機関理事会および安全保障理事会の決議などの解除。
⑨戦争被害の賠償。
⑩凍結された海外資産の解除。
イランの10項目の要求は、同国の主権回復と経済的損害の補償を求めており、2026年4月10日からパキスタンの首都イスラマバードで実務協議を開催する予定だ。
トランプ米大統領は6日、同提案を初めて受け取った時、「重要だが十分ではない」と内容に不満を示していたが、最終的に受け入れた。イラン文明を破壊すると脅かしてきたトランプ氏もテヘランとの条件付きの停戦に合意したことになる。明確な点は、イラン側が提示した10項目の中には米国やイスラエルが絶対に受け入れることが出来ない条件があることだ。
たとえば、⑥ウラン濃縮関連活動の容認だ。米イスラエル軍のイラン攻撃は当初(2月28日)、イランが核開発を継続し、核兵器製造に近づいているという危機感からだ。特に、イスラエル側はイランの核開発計画の完全な破壊を最大の目標としてきた。それだけに、イランがウラン濃縮関連活動を継続することを絶対に甘受できない。また、⑦イランは「米軍の地域内のすべての基地および展開地点から撤退」を求めていることだ。
ところで、米国が提示した「15項目の停戦」(2段階の和平案)には、イラン側の「10項目の包括的対案」には含まれていない内容があった。
①核施設の解体: ナタンズ、イスファハン、フォルドゥにある核施設の解体。
②ウラン濃縮の恒久的な停止: 国内でのウラン濃縮活動を完全に終了する。
③濃縮物質の引き渡し: すでに保有している濃縮ウラン等の物質を国際原子力機関(IAEA)へ譲渡する。
④武装組織への支援停止: ヒズボラやフーシ派など、親イラン武装組織に対する軍事・財政的支援の全面停止。
⑤ミサイル開発の制限: 弾道ミサイルの保有数や射程距離に制限を設ける。
ちなみに、イラン側の10項目には、米国側が受け入れ難い要求が含まれている。
①戦争賠償金の支払い、 今回の紛争による損害に対する賠償。
②ウラン濃縮権利の容認: 平和的利用を名目とした濃縮権利の承認。
③中東からの米軍撤退、地域内にある米軍戦闘部隊の完全撤退。
④ホルムズ海峡の主権認容: 海峡の管理権がイランにあることの承認と、通行料徴収の権利。
2026年4月8日現在、米国とイランは乗り越えることが困難な対立点が横たわっている中、パキスタンの仲介による「2週間の即時停戦」に合意し、今後の本格交渉に臨む構えだ。
トランプ政権は、ホルムズ海峡の完全開放、イランの核・軍事能力の無効化が最大の目標だ。一方、イランの立場は、軍事衝突による国内の疲弊を回避しつつ、体制の存続と主権の維持を最優先する立場を堅持している。いずれにしても、両国とも自国の要求を全面的に強調し、国際社会に向かっては外交的勝利を演出するだろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年4月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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