「消費減税か給付金か」なんてナンセンス:誰も財源を語らない国会論議

国民会議と党首討論の給付つき税額控除をめぐる議論が、ますます迷走している。まずほとんどの国民がこの制度を理解していないだろう。税額控除というのがわからないが、それに給付がつくというのがますますわからない。

英語ではEarned Income Tax Credit(EITC)つまり労働所得税の還付である。これはフリードマンが1960年代に提案した負の所得税であり、この名前が一番わかりやすい。

「負の所得税」は今すぐできる

これはすべての所得税対象者に定額(または定率)の現金を還付するもので、その還付額が納税額を超える場合は給付だけになる。日本の場合はマイナカード(公金受取口座)を使えば、今すぐできる。したがって「給付つき税額控除ができるまでの2年間に限って消費減税」という話はナンセンスである。

党首討論で国民民主の玉木代表が提案した「公金口座で5万円給付」という提案は私の提案に近いが、なぜか現金給付だけに絞っている。本来のEITCは定額(あるいは定率)の還付だから、低所得者に限るものではない。

消費減税は、低所得層に狙いを絞る制度ではない。消費額の大きい世帯ほど恩恵が大きく、事業者の事務負担も大きい。しかも一度下げれば、元に戻すことは政治的に難しく、社会保障財源を減らしてしまう。

基礎年金との関係が重要

問題はだれも財源を語らないことだ。長期金利が2.8%を超え、円がまた1ドル160円に近づいているとき、与党はガソリン補助金をばらまき、野党はもっとばらまけと追及している。

給付に減税にも巨額の財源が必要だが、なぜか国民会議では(食料品に限定した)消費税減税が議論されている。これは逆である。消費税はOECDもいうように、少なくとも18%ぐらいまで消費増税をする必要がある。

さらに重要なのは基礎年金だ。日本の公的年金は高齢者向け給付が大きく、現役世代の低所得者支援が薄い構造になっている。特に基礎年金は未納・免除が50%を超えて生活保護と二重給付になり、制度として破綻している。

本来は、基礎年金の最低保障機能と、給付つき税額控除の現役世代支援をどう接続するかを考える必要がある。たとえば基礎年金を税方式にする最低保障年金も考えられる。

本質は「減税か給付か」ではなく制度改革

したがって議論の本質は、消費減税か給付かではない。長期的には、年金制度を含めた抜本的な税制改革が必要だ。そのためには、

・消費税を何%まで増税するか
・基礎年金をどこまで税で支えるか
・現役世代の低所得者をどう支援するか
・高齢者向け給付をどう削減するか

という大きな設計変更が不可欠である。

超党派の「一体改革」を

給付つき税額控除までのつなぎとして消費減税を行うという議論は、短期対策としても筋が悪い。つなぎが必要なら、制度の中核である給付部分を先行実施すればよい。玉木案のような中低所得の勤労者向け給付は、その意味で現実的な選択肢である。

本質的な問題は、この15年にわたって増税を避けて社会保険料を上げてきたことによる税と社会保障のゆがみを是正する税と社会保障の一体改革である。

日本国民は極度に増税をきらうので、これは超党派でないとできない。その意味で、2012年のような与野党の会議で議論する意味はあるが、今やっている消費減税は何の意味もない時間稼ぎであり、本質的な制度改革から目をそらすものだ。

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