「感じのいい人」は、笑顔より先に"素"を持っている

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正直に言う。「感じのいい人になるには」系の本が、私はあまり好きではない。

笑顔を作れ、清潔感を保て、相手に配慮しろ——わかってる。そんなことは最初からわかってる。問題は「どうすれば自然にできるか」なのに、たいていの本はそこを素通りして「大切です」で終わる。説教だけして答えを出さない。あれは、ちょっとしんどい。

だから本書を手にしたとき、最初は半信半疑だった。冊子という形式もあって、「まあ読んでみるか」くらいの気持ちで開いた。

『接客・営業の心得 印象に残る感じのいい人』
執筆:下澤純子 企画・政策:(株)日本マネージメントリサーチ

ところが、だ。「作られた笑顔は必ずバレる」という一行に、妙に納得した

本書はまず、笑顔の話から入る。ただし切り口がちょっと違う。「笑顔が大事」ではなく、「心に不平不満があるときのつくり笑顔は、気をつけていてもわざとらしさが透けてしまう」という話から始まるのだ。

これは、そうだな、と思った。

思い返せば——少し話がずれるが——昔バイトをしていた飲食店の店長が、やたらと「笑顔で!笑顔で!」と言う人だった。本人は怒鳴り散らしながら言う。客前に出ると急にニコニコする。あれが怖かった。スイッチ式の笑顔というのは、近くで見ると本当に気持ち悪い(言い過ぎか。でも本当のことだ)。

本書が言う「素の笑顔」というのは、要するに、オフのときのあなたの顔が滲み出てくるような笑顔のことだ。好きなものの話をするときの顔、何かに集中しているときの顔——そういうものがぜんぶ含まれた上での「素」である。

完璧な笑顔より、ちょっと崩れた笑顔の方が人を惹きつける。経験則としても、これは正しい気がする。

接客のマニュアルというのは、誰かにとっての正解であって、あなたにとっての正解ではない——本書はそう指摘する。

「自分のキャラに全く合わない言葉を発するとギクシャクしてしまいます」

これも、ああそうだよな、と頷いた。マニュアル通りに話しているのに、なぜか伝わらない、という経験は誰にでもある。言葉が体に馴染んでいないのだ。声に出したとき、自分でも「なんか違う」と感じる言葉は、相手にも必ず「なんか違う」と届く。

解決策として本書が勧めるのは、鏡の前でのロープレだ。ロープレというと苦手な人も多い(私も正直、あまり好きではない)が、一度でもやっておくことで本番の心の余裕が違う、という指摘は実感として頷ける。やった人間とやっていない人間では、初動の落ち着き方が明らかに違う。

本書で個人的に一番「これは言いにくいことをよく書いた」と思ったのが清潔感の章だ。

香水が強い人の話、エレベーターに残る残り香の話、タバコのにおいの話——ここは辛辣である。「自分ではいい香りと思い込んでいるので、周りもなかなか言い出せません」という一文は、刺さる人には相当刺さるだろう。でも、これは本当のことだから仕方がない。

そして「清潔感は顔や体型とは関係ない」という断言。かわいいから、きれいだから、イケメンだからは関係ない——これはわかっているようで、意外と見落とされている事実だ。清潔感とは結局、「気にかけ続ける意志があるかどうか」の話であって、生まれ持った外見とは別の話なのである。

「感じのいい人」になりたいと思ったとき、大半の人は自分の顔や声や雰囲気を変えようとする。でも本書が言っているのは、もっと手前の話だ。素の自分を出せるか。香りに気を使えるか。店の棚を整理できるか。特別な才能より先に、やるべきことがある。

それを丁寧に、しかし押しつけがましくなく書いた一冊だ。

【編集注】
本書は市販本ではなく、冊子として配布されているものである。ただし、その内容は実践的な示唆に富んでおり、多くの読者に届ける価値があると判断し、通常の書籍紹介と同じ形式でコラムを作成した。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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コメント

  1. 岡本マヤ より:

    スマイル¥0の威力

    笑顔は訓練だと思う。

    私が社会人になってものすごく徹底的に仕込まれたのは「笑顔」でした。
    会社から渡されるマニュアルにも書いてあって

    「商品をきれいにおたたみしながら早くお嫁にいくことを考えなさい。」

    これはすごい事だと思った。

    毎朝笑顔のロールプレイングももちろんあった。
    自分の生活の中で満たされた何かがないと心からの最高の笑顔にはなれないと個人的には思った。
    私にはその当時はブランド品だった。
    いろいろあって心の中が大嵐の日も大好きブランドを着て店頭でにっこり笑うとお客様から
    「いつも素敵ですね!」と言われる。
    えーみたいな。

    ボロクソに会社から売り上げ悪くて怒られたり詰められたりした時も。

    個客を横取りされて火が噴きそうに頭にきても。

    ほんの数着ではなくて気にいったら色違いもどっさり買いたいという欲求がいつも
    商業用「笑顔(勤め)」を後押ししてくれた気がします。