泥沼の欧州政治

日本で報じられる国際ニュースはどうしても国民に広く関心を持ってもらえる身近な話題、戦争や経済動向を通じて直接的影響のある問題、近隣国との関係など何らかの形で日本に目に見える影響がある内容が主体となります。報道はどうしても視聴率稼ぎ、スポンサーとの関係などもあり、視聴者に受け入れられやすい報道になりがちです。そのため、私のようなブロガーとしては目立たないニュースも時として掘り起こす必要があります。

欧州動静は地政学的に遠いこともあり、ニュースになりにくいのが現状ですが、正直、今の欧州主要国の政治に限って見ているとまともな国はほとんどない、と言い切ってよいかもしれません。

英国 スターマー政権 支持率 18-20%
フランス マクロン政権 支持率 18-19%
ドイツ メルツ政権 支持率20%前後
イタリア メローニ政権 35%程度

メローニ政権については発足当初の支持率が50%程度でスタートし、日本並みに首相が変わる国としては珍しく高めの支持率で22年10月発足から既に3年半も続いています。しかし、その支持率は着実に下落する中、今年春の司法改革の国民投票で敗北を喫し、支持率が急落した経緯があります。

高市首相、イタリアのメロー二首相と首脳会談,2026年1月16日、首相官邸公式サイトから

また27年12月までにイタリア総選挙が見込まれますが、現ジェノバ市長で元ハンマー投げのオリンピック選手のシルビア サリス氏が有力対抗馬として今後の動きが注目されています。

もう1つハンガリーで16年続いたオルバン政権が倒れ、オルバン氏の元で官僚として中枢中の中枢にいたマジャル氏が手の内を知り尽くした戦いで政権交代を果たしました。

とにかく欧州政治は何処を見ても頭痛の種なのであります。そのきっかけの一つはロシアによるウクライナへの侵攻で起きた副作用、つまり安いロシア製のガスや原油が入りにくくなったことがあります。また歴史的にロシアと強いビジネスの結びつきがあったドイツにとってはこれ以外に脱原発を掲げた政策の行き詰まり、中国向けの貿易の長期低迷、留まらない物価高など目も当てられない状態にあります。

例えばドイツで自動車を一台作る人件費総額は3307㌦、アメリカでは1341㌦、韓国789㌦、日本769㌦、中国597㌦となっています。数字については為替や車種により必ずしもアップル トゥ アップルにならないかもしれませんが、それでもドイツの自動車製造の人件費は突出しているのです。これではいくらドイツ車が人気の中国でも不況下に於いて売れるわけがありません。希少価値に対する一部のファン層の支持にすがっているともいえ、グローバル経済化の中では太刀打ちできないのです。

フランスも人件費の高さと福利厚生などの手厚さ、解雇規制など労働構造問題を抱えており、ドイツと良い勝負であります。結局、欧米と豪州で起きている高人件費=サステナブルではない高コスト体質=歯止めがかからない物価水準=経済全体の落ち込みとも言えそうです。欧州地区では自動車生産はモロッコや旧東欧諸国など人件費の安い第三国への移管が進み、本国の空洞化が起きてしまうわけです。

個人的にはユーロ圏という仕組みが根本的に機能不全になっているように思っています。理念的にはわかるのですが、欧州、特に大陸側は歴史的経緯、人種の相違、労働意識、移民の扱い、欧州北部と南部の根本的価値観の相違など様々な相違があるものをユーロという共通通貨で蓋をしているような感じであり、同床異夢のカタチだけの共同体という気がしてならないのです。

もちろん、この背景があるからこそ、継続的な対話ができる点がプラスなのですが、一枚岩になることがまずないとも言えるのです。国連が機能不全になっているとされますが、ユーロ圏も同じようなものであります。

つまり国民は常に不満を抱え、拠り所と信じられれるものはお金だけであり、誰が政治のリーダーになってもわずかの間に支持率は急落するのが目に見えているとも言えます。

ではお前はユーロ圏を解散すべきと言うのか、と聞かれればそれは違います、と答えます。なぜなら再び戦争の火種が起きかねないからです。それよりもユーロ圏のガチガチで達成もできない各種規制を大幅緩和し、各国の結びつきを緩めにすべきだと思います。今のユーロの仕組みは厳しい規律派であるドイツが主導して作ったものですが、正直、今の時代、そんな仕組みは流行らないのです。緩やかな連携で脱退も可能としながらも各国が加盟していることにメリット感じるような仕組みづくりに変えなくてはいけないとみています。一言で言えば制度疲労なのでさび落としが必要ということなのでしょう。

これを俯瞰してみるとやっぱり今はアジアの時代のど真ん中にいるわけですが、日本がアジアの中でやや光が当たっていないことが気になります。官民が手を取り合ってもっと前に出て行ってもよいのではないかと感じます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年5月25日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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